第4話 古代呪術島

文字数 980文字

 なだらかに続く青い海は凪いでいた。
 遠くの沿岸が遥か彼方に見える。
 近年幅を利かせているなんとかという領主が占有して長い。
 肥沃な土地は持ち主がよく入れ替わり、ファイラキオ島のこのあたり一帯もそうだ。
 彼らは唯一神の神を信仰して、生活様式は豪華絢爛を好み、所有欲を満たすために世界の海を航海し、人間の奴隷の商売もしているようだ。
 伝え聞くところによると、多くの民族が入り乱れた国だという。
 文明度は高く、油断してよい相手ではない。
 今回は、彼らの所有する一つの島に侵入するだけだから、あえて接触はしない。
 悪神たちと徒党を組んでいる奴らかもしれず、関わりはかえって危険だ。
「あっちの国は良いですけど、こっちはね、大変ですよ。本当に、行くのですか?」
 船を漕ぐ老人が不安げにアルラゴルに聞いた。
「あの島は、長年、放置されてきた島ですよ。今でも、悪い噂が絶えません。本当に行きたいのですか?」
「ああ、行ってくれ」
「旦那、あの島は言い噂を聞きませんで。太古の昔、住み着いた原住民は独自の太陽信仰を行っていた種族だと言います。人とのかかわりを絶ち、何かにつけ人身御供を捧げていたようです。景色も良いときゃあ、いっとき観光地になっていたこともあったようですが、今は誰も近寄りません。死体がいっぱいだの、邪鬼がいるだの、不吉な話ばかりで、とりわけ危険なのが、今でも残っている原住民で、今も昔からの流れで独自の信仰やら、人身御供やらが続いているそうで」
「あの島のことは、よく知っている。しかし、行く」
 老人は諦めて何も言わず船を漕ぎ、島までの距離が縮まったところで、船を止めた。
「なんなら、島までいってもいいですけど?あんた、ここで降ろして、一人帰るのも気が引けるでな」
 アルラゴルはくすりと笑った。
 気の良い老人だ。
「ここまで来たら、辿り着けるだろう」
 黒衣のローブに身をつつむアルラゴルは、船のヘリに足をかけ、老人を振り返り、懐から黒い手で赤い宝石を差し出した。
「これを、ザードに渡しておいてくれ、このたび、あなたを遣わしてくれた礼だ」
「旦那、その手は」
「あいつは、金でしか動かん。こたびはちゃんと礼をしたぞと伝えてくれ」
 泡を吹いて飛びずさった老人を残して、アルラゴルは海へ飛び込んだ。
 飛びしなに、黒いローブから見えた足や体を見たとたん、さらに老人は悲鳴をあげた。
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