第26話 海と絶望と

文字数 746文字

 聞いたシャルエスは、家を飛び出した。
「嘘だ・・・・嘘だ・・・・」


 イカイア大臣と手を組んで、国を混乱に招き、事態に乗じて、国王シャルスを暗殺したのはあなたの伯父ハゲファ。
 ハゲファ殿の背景には悪神がおり、悪神は悪業の行いから、力を得ております。
 両国は食人悪鬼が闊歩し、恐怖統制され、反乱は強制的に終了させられております。
 謀反人の大罪人が王位で権力を誇り、国が悪神の棲家となるなど、国が滅びます。
 どうか、シャルエス殿、国にお戻りになり・・・

 私は死刑になりましたが、生き永らえて、あなたの父親の温情に報いようと、あなたを救出しに参りました。


 白い砂浜が朝日を浴びて真っ白に輝く時間に、シャルエスは海を見た。
 真っ青な海が平らかに広がって、穏やかな波を打っている。
「なんで・・・なんで、気づかなかったんだよう」
 シャルエスは白浜に突っ伏して、大声で泣いた。
 泣き叫んで、青空に何度も咆哮した。
「まさか、伯父様が・・・・」
 父の信頼厚い人だった。
 気づかなかった自分。
 見抜けなかった自分。
 おめおめと敵の罠に引っかかってしまった情けなさ。
 騙されて、大切なものを奪われたふがいなさ。
 敵の思うとおりに凋落した自分。
 ただ、泣き叫んで、悔しがることしかできず、悔しくて悲しくて、砂を何度も何度も、拳で打った。
 このことを天国の父が知ったら、どれほど悔やむだろう。
「シャルエス王子・・・・」
 シャルエスと自分では状況は違う。
 アルラゴルは心配していた。
 絶望のあまり、海に飛び込んでしまわないかと思っていた。
「しばらく、放っておいてくれ、将軍」
 泣きじゃくりながら言うシャルエスに、アルラゴルはその気持ちを汲み取って、離れた。
「分かりました」
 苦悶の表情を浮かべて、アルラゴルは歩いていった。
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