第4話 ポジティブ・シンキング

文字数 1,406文字

 6人目の孫ができたみたい。
 まだまだ、老け込んではいられないようだ。
 
 子どもが3人、孫がそれぞれふたりずつ。男女、女女、男?
 順調ね、と言われるんだけど。
 まあ、いろいろ心配事はあります。
 発達障害グレーゾーンとか、白斑とか、歯の数が少ないとか……血腫は手術で取った……

 自分の子は重い心臓病で、上ふたりいて大変だった。頼れる親はいなかったし、入院の付き添いの間は、幼稚園の友人が毎日送り迎えしてくれた。(感謝)
 
 今の時代、私だったら?
 産むだろうか?
 できちゃったら産むけど、作るだろうか?
 40年前は素直に喜んだけど。  
 給料は右肩上がり。
 真夏もまだエアコンなしで過ごせた。部屋の温度が最高で31度。おむつかぶれができて、日に何度も沐浴させたけど。
 
 地震はあった。奥尻島や秋田とか、まだ、人ごとだったけど。
 凶悪犯罪もたくさんあった。子どもを外で遊ばせるのが怖いくらい。忘れられない犯罪がたくさんあった。
 
 お嫁はふたり目ができなくて、やっとできたら死産、子宮外妊娠。
 もう、ひとりでいいじゃない、と密かに思った。それでも欲しくて頑張ってくれた。お産も大量出血で大変だった。コロナ禍で、立ち合いできず、あとから知らされたが。

 そんな話を施設のスタッフに話すと、よく生みましたね、と冷え冷え〜。
 彼女は、
「私、結婚しませんから。今の日本で子育てなんて考えられないです。親より生きればいいんです」
 
 異動していったけど、考えが変わるような相手には出会っていないだろうか?

 お嫁はもうひとり欲しいという。
 彼女は3姉妹。
 息子の給料は安い。
 国民年金だし。
 でもしっかりしている。質素だし。牛乳パックも洗って開いてる。(当たり前?)
 きっと老後のことも地球のことも考えている。
 
 
 人生100年時代。認知症のない長寿にはポジティブ・シンキングが良いそうだ。

 自分はポジティブにはなれない性格だった。
 ひとりが好き、孤独が好き、人間嫌い。
 夫にも子どもにも嫌気がさした。
 ひとりになりた〜い。

 しかしそれでは、いずれは認知症。
 施設にもいる。人と接しない。部屋から出てこない。食事も自室でひとり。
 あんな人たちと食べたくないの……
 こんなおかず、厨房はバカなんじゃないの?

 今は、なにもかもやってもらっている。
 介護保険たくさん使わせてもらって、文句ばかり。
 死にたい、と言っても死ねないのだ。

 先日、夫の叔父さんに40年ぶりに会いに行った。年賀状のやり取りだけの息子さんからハガキがきた。
 施設に入っているが、親戚に会いたがっている、と。
 車で2時間で行ったのは小規模なサービス付き高齢者施設。

 89歳の叔父さんは、忘れっぽいが、話すと夫のことを思い出した。ひょうきんな子どもだった、と。

 杖なしで歩き、食事も常食。ごはんに副菜も刻まず食べる。持っていった羊羹を喜んでいた。外出も外食もできる。貼り出してあった習字は力強く上手だった。

 88歳の奥さんは歩いて行ける距離の家にひとり暮らし。週一でデイサービス。庭で園芸をして、まだまだしっかりしていた。
 子どもは息子2人で、女の子が欲しかった、と。
 しかし、親孝行な従弟だ。遠くから新幹線で来て母を病院に連れて行き、父の施設に面会に。

 また会いに行きたい、と思いながら道の駅に寄り、フキを買って帰ってきた。
 初めて煮たきゃらぶきはとてもおいしくできた。
 
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