第8話 蕎麦勝

文字数 813文字

○12月31日の大晦日、東京下町の老舗蕎麦屋「蕎麦勝」、閉店間際に子供連れの女性客がやって来た。
Se ガラガラ〜
(若女将)いらっしゃい
すみません、子供連れなんですけど掛け蕎麦を一杯下さいますか。
え、ええ勿論結構ですとも。
若女将、慌てて奥へ。
あ、あんたウチにも来たわよ。ほら、あの一杯の掛け蕎麦が!
若女将、ストーブ近くのテーブルに座る子供連れを指差す。
(大将)なにー、ついに来やがったか。涙腺をやたら刺激しやがるぜ。よし、限りなく二人前に近い超特盛の掛け蕎麦いっぱいだ。もってけ、ドロボー!
若女将、超特盛の掛け蕎麦一杯をストーブ近くのテーブルへ運ぶ。
さあ、お母さんと一緒にお嬢さんも召し上がって。お代はいりませんよ。お話は常々伺ってますから。
毎度毎度、ベタな話しですみません。
お母ちゃん、もうこれで五軒目だよ。もう蕎麦ばっかりで飽きたよ〜。カレーが食べたい。
まあ、この子ったら。ホホホホ。
お母さん、ひきつった笑い。
あら、なんか違う。
こりゃ、一杯の掛け蕎麦じゃなくて、腹一杯のカタリ蕎麦だ。はっはっは。
大将、うまいっ!
カレーがいいなっ。
なんか、徹底的に違う。
すみませーん。
おっ、こっちのお客さんは何ですかい?
私、Fカップなので丼の中に乳首が入ってやけどしました。あっつ〜い❤️
そりゃあ、済まないことしましたね。はい、もういっぱいサービス!
あんた、あんたが謝ることないじゃない。
こいつは妙にアポクリン腺を刺激しやがる。○っパイの掛け蕎麦だ。もってけドロボー。
すいませーん、僕は巨乳のお姉さんを見ていたら、勃っちゃいました。どうしましょう?
今度は、立ち食い蕎麦だ。参ったね今夜の客には。
きゃー、うっかりしてお蕎麦のつゆをお○んこにこぼしちゃった。あっつーい❤️
そりゃ、アワビの煮付けだ。しかも濃口醤油の汁だくだ。正月の縁起もんだね。
ゴーン、ゴーン(除夜の鐘)


こうして、老舗蕎麦屋「蕎麦勝」の年の暮れは混迷のウチに過ぎてゆくのであった。

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