第14話 閉店前の珍客

文字数 550文字

○東京台東区、場末の居酒屋【丹波】7:00pm

近江商事の営業部長小谷とその営業マン長谷川が、仕事帰りに差し向かいで一杯やっている。

(長谷川)在宅ワークが長くて、出社してこうして部長とお話しするのも久しぶりですね。世界経済も出口がなかなか見えないなあ。
(小谷)麒麟は来る!世を平らかにする麒麟がきっと!
(何言ってるんだこの人、頭がおかしくなったんじゃ)

麒麟は、来ないと思いますよ。あれは、中国の伝説上で架空の生物ですから。

わしが呼んでみせる。

麒麟こそ、世を平らかにする大元!

これこそ、平安京1000年の夢。

だからー、部長。キリンは、上野動物園にしかいませんよ。もっともコロナ禍で客が来なくて、めっちゃコスパが悪いですけどね。あんなのが来たら、餌代だけでわが社は潰れますよ。
(店員)はーい!キリンの生中二つに焼き鳥盛り合わせ、冷奴でーす。もうすぐ、閉店時間だからグビグビいっちゃってくださいね。
ほら来た。
...これだったのね。
○カウンターで
ほーたーるのひーかーり♫

もうすぐ閉店だよ。悪いけど。

店長〜、また来てますよ。例の奥座敷のお客さん。

いつも決まって同じ銘柄のビールを頼んでは、「世を平らかにする!」とか、絶叫するんです。

ほっときな。ステイホームが長くて、時代劇を見過ぎたんだ。飲んでる時は、平和だね。
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