第14話 遠千根宮 Ⅲ
文字数 722文字
柵を乗り越え、鳥居を潜る。
石段が濡れている。参道の木がわさわさと覆い被さって道が暗い。
石段にずらりと小さな石地蔵が並んでいる。
みっしりと。隙間もなく。
二人は黙々と歩く。
「これも神仏習合か?」
史有が地蔵を指差す。
その中の幾つもが崩れて苔むしている。酷く古い。
ざわざわと木が揺れる。
二人は立ち止まって揺れる木々を見る。
「風が出て来たのか?」
どこかで鳥が啼いている。
ぎぃぃ・・ぎいい・・ぎい・・・
「・・何だか嫌な声だな」
史有が呟く。
「史有・・。ここはあまり良い感じがしないな。さっきの神社とは空気が違う。それに寒過ぎる。陽が当たらないせいか?」
由瑞はぶるりと震える。
「帰る?」
「いや、ここまで来たから、もう少しだろう。行ってみよう」
行った先に池が見えた。
「これは‥すごいな」
池の周りを岩山が囲む。
その崖面には細い木々や水を好むシダ類、その他名前も知らぬ草々が生えていた。
水は至る場所から流れ出していた。山の伏流水がここで岩から染み出して流れ落ちているのだ。それがあちらこちらで小さな滝を作る。
それが一面。ぐるりと。
うっすらと池の表面に靄が掛かる。
池の近くに寄ってみる。
底に揺れる水草や小石が見えた。水は全く透明だ。
綺麗な場所だな。
由瑞は呟く。
西のずっと向こう側に崖の切れ目があった。森と小さな草地が見える。
「あれが、向こうから来る道だろう。あの道を来るとあの場所に出るのだ」
由瑞は指を差して言う。
池の中から突き出した岩山に小さな社があった。
小さな鳥居と小さな社。どちらも黒い。
池の真ん中にポツンとある。
社に向かう橋はない。
「これが飛燕の滝か?」
由瑞が言った。
「いんや」
嗄声 がした。
由瑞と史有は驚いて振り返る。
視線の先に腰を屈め、杖を突いた老婆がいた。
石段が濡れている。参道の木がわさわさと覆い被さって道が暗い。
石段にずらりと小さな石地蔵が並んでいる。
みっしりと。隙間もなく。
二人は黙々と歩く。
「これも神仏習合か?」
史有が地蔵を指差す。
その中の幾つもが崩れて苔むしている。酷く古い。
ざわざわと木が揺れる。
二人は立ち止まって揺れる木々を見る。
「風が出て来たのか?」
どこかで鳥が啼いている。
ぎぃぃ・・ぎいい・・ぎい・・・
「・・何だか嫌な声だな」
史有が呟く。
「史有・・。ここはあまり良い感じがしないな。さっきの神社とは空気が違う。それに寒過ぎる。陽が当たらないせいか?」
由瑞はぶるりと震える。
「帰る?」
「いや、ここまで来たから、もう少しだろう。行ってみよう」
行った先に池が見えた。
「これは‥すごいな」
池の周りを岩山が囲む。
その崖面には細い木々や水を好むシダ類、その他名前も知らぬ草々が生えていた。
水は至る場所から流れ出していた。山の伏流水がここで岩から染み出して流れ落ちているのだ。それがあちらこちらで小さな滝を作る。
それが一面。ぐるりと。
うっすらと池の表面に靄が掛かる。
池の近くに寄ってみる。
底に揺れる水草や小石が見えた。水は全く透明だ。
綺麗な場所だな。
由瑞は呟く。
西のずっと向こう側に崖の切れ目があった。森と小さな草地が見える。
「あれが、向こうから来る道だろう。あの道を来るとあの場所に出るのだ」
由瑞は指を差して言う。
池の中から突き出した岩山に小さな社があった。
小さな鳥居と小さな社。どちらも黒い。
池の真ん中にポツンとある。
社に向かう橋はない。
「これが飛燕の滝か?」
由瑞が言った。
「いんや」
由瑞と史有は驚いて振り返る。
視線の先に腰を屈め、杖を突いた老婆がいた。