第8話

文字数 302文字

 ぼくには未来がみえる。

 女は、男女入り混じる見知らぬ集団によって手足をひっぱられ引きちぎられ、いったんばらばらの姿をみせたが、すぐに水銀のようなギラッとした液体と化し、側溝などに流れて消えてしまう。
 その夫は、操車場・地下鉄車輛内に隠れていた深夜、彼のもっともおそれる警察犬に発見される憂き目をみたあと、目からあふれ出た涙が顔もからだも衣服も彼の全存在を涙と化して、流れおちて地面に吸収されてしまう。
 彼らの愛の結晶たる男児は、誘拐されてマセラティのトランクにおしこめられ静岡のどこか海岸で目隠しのまま車外に出され、誘拐者が発した恫喝的、
「走れ」
の怒声にしたがって全力で駆け、絶壁から墜落して消える……
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