第17話 「オトリ作戦」

文字数 1,368文字

「作戦って…?」
「簡単に話すとオトリに気を取らせて、その隙に攻撃するんだ。」
「その“オトリ”は誰がやるの?」
「黒木に頼もうと思ってた。まず、黒木は俺たちとも同じルートで逃げて⇨その近くの空き家でいい、建物に入ったら電気を付ける⇨その後俺たちと別れたルートの場所までタイムリープで戻ってくる⇨その後、家の明かりでお引き寄せたヘンテコを俺と道角で攻撃する。」
「作戦は分かったけど、俺のタイムリープの能力は一度使ったその後、戻した時間分しばらく能力が使えなくなるんだよなぁ〜」
「でも黒木、私にさっき会った時使ってたよね?」
「“ヘンテコには時間っていう概念が無い”から、ヘンテコにタイムリープを使うとそのまま消滅するだけ。だから何回使っても時間のタイムラグも発生しない」
「つまり黒木は未来から過去に戻ってくるのにタイムリープを使ったから、その戻した期間は使えないって事で意味合ってる?」
「合ってる〜」
「一体どれくらい“先”から戻ってきたんだよ」
「正確には分からないけど、おおよそ1年半先?くらいからかな」
「“1年半”っ!?」
「…まあ、その話は後にするとして今はこの状況どうにかしようぜ。オトリはどうする?」
「じゃあ私が。」
 ヒスイは自ら率先して手を上げる。
「…ヒスイ!?」
「もう考えてる時間もないし、このメンバーの中でそれなりに自分の身を守れる能力なのって私だけでしょ?万が一、攻撃されても足止めくらいなら出来る」
「…分かった。道角で行こう」
「え、おいっ。ヒスイ1人で行かせるのかよ!?俺も行く!」
「来なくていい。隙を作った後の攻撃パターンは多い方がいいと思う。黒木は日下部たちと一緒にいて欲しい」
 ヒスイはそう言うと、日下部、柚子果、黒木の3人とは別の道に別れて走り出す。





(よし、この家にしよう)
 ヒスイはすぐ目先の住宅に目星をつけ、そのまま土足で上がり込む。
カチッ。
 家に上がるなり階段を駆け上がったヒスイ。2階の全ての部屋の照明のスイッチを押した。


 そして、足跡を立てないよう静かに階段を降りて行く。

(部屋の電気を明るくするのは二階のみで、後は私は一階で静かに身を潜める)
 ヒスイは一階に降りると、そのまま廊下で氷ナイフを片手にじっと身を潜めて待機していた。
(黒木にさっき聞いた話では、音と光が同時だとヘンテコは音の方へ向かってしまうから音を立てちゃダメって言ってた。それは“光速”より“音速”の方が後に“届く”から。)
 暗闇で階段下付近以外はほとんど何も見えない状況でヒスイにとって恐怖に近い緊迫感を感じていた。


 手や額に嫌な汗が滲み出る。

スッ。
 すると、ヒスイにマーキングしている探知蛍が目の前に現れると、ヒスイに“敵の居場所”をひっそりと耳打ちする。
(探知蛍の合図。もうすぐそばまでいる…!)


 2階の照明を付けてから15分ほど経過したその時、

ドドドドド!!!!!!!!
(来た!)
 二階付近から聞こえた破壊音と地響きに気がついたヒスイだったが、まだその場から動こうとしない。


 じっと探知蛍の次の合図を待っていた。

(…まだだ。日下部と黒木が攻撃をしたら動き出す)
「たった今、日下部と黒木がヘンテコと接触したよ。今のうちに“リーダー(柚子果の探知蛍)”の所まで案内するから着いて来て」
 ヒスイは探知蛍が案内する通りに家から出ようと試みる。
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登場人物紹介

【道角ひすい(みちかど ひすい)】22歳。東京でデザイン関係の仕事をしている。卒業した小学校の同窓会の予定がイブの日に入っていたため、地元に一時帰省していた。

同窓会のメンバーの中でメグと銀太以外は、会話するのが久しぶり。

【日下部瑞樹(くさかべ みずき)】大学生。同窓会のメンバー全員と久しぶりの会話。あまり自分から進んで話すタイプではないが、コミュニケーション能力はそれなりにある。

【紫竹山恵(しちくやま めぐみ)】地元で美容関係の仕事をしている。ヒスイが今でも連絡を取り合っている間柄で、ヒスイが地元に帰って来た時には毎度会ったりしている程である。大人びた綺麗な見た目で背も高い。銀太と付き合っている。

【宇鉄銀太(うてつ ぎんた)】地元で工業関係の仕事をしている。恵と付き合っているため、よく一緒にいる。人付き合いが特別好きってわけではないが、人との付き合い方が上手。ワイルドな見た目に関わらず、穏やかな性格。

【黒木玄(くろき げん)】消防士の仕事をしていて、体格が良い。女性が好きだが女心が分からないため、彼女が出来ない。デリカシーのない発言が多く、周りを戸惑わせるが本人は気にしていない。良くも悪くもマイペースな性格である。

【柿田夕一(かきた ゆういち)】大学生。小柄な体格であるが、体を動かす事が好きで大学のサークルではサッカー部に入っている。昔から天真爛漫な性格は変わっておらず、誰に対しても明るく信頼が厚い。

【春間美香(はるま みか)】大学生。小学校6年生の時に数ヶ月間だけ、ヒスイと同じ学校に転校してきた同級生。同窓会には元担任の先生から連絡をもらい、サプライズで参加していた。穏やかで明るい性格から、久しぶりに会った同級生ともすぐに打ち解けている。

【芝崎透(しばさき とおる)】大学生。今回の同窓会の幹事である。めんどくさがりなような一面も垣間見えるが、実際は面倒見の良い兄貴肌。体を動かす事はそんなに得意ではないが、自然が好き。

【黄原柚子果(きはら ゆずか)】看護学生。はっきりとした性格で、思った事はズバッと口にする。お酒が強く、同窓会の時も最後まで毅然(きぜん)と飲んでいた。

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