第11話 「明かりの灯る一軒家」

文字数 2,107文字

(どうしよう…。でも、このまま見捨てるわけにはいかないし…!)
 ヒスイはポケットから鍵を取り出して、氷ナイフに変形させると、それを握りしめる。
(嘘みたいな現実の話、このナイフで氷柱が出せるのが確かな事は証明してる。とりあえず簡単にできる事だけ頭の中を整理しよう。)
【氷ナイフの特徴】


・氷ナイフの刃で物体を傷つけると、その部分から氷柱が出現する。

・氷ナイフの刃が物体を傷つけた面積=出現する“氷柱の大きさ”に比例する。

(この2点を踏まえて出来る戦略を立てないと…。今は日下部を待っている時間はない。とりあえず家の中に入れる所を探さいと。)
 一旦冷静になって呼吸を整えるヒスイ。



 幸いにもヘンテコは自分の存在には気がついていない様子だったので、敵から見えない位置から家の外壁近くまで回り込もうと考えていた。






ザクッザクッザクッ。
 なるべく音を立てないように移動しようと思っていたヒスイだったが、雪の上を踏み締める音を消す事はできなかった。
(雪の上を静かに移動するなんて不可能だ。…だったらあの攻撃音に紛れて、一軒家の敷地内まで移動してしまおう!)





ドンドンドンドン!!ガンガンガンガン!
(今のうちだ!)
 ヒスイは、辺りに敵の衝撃音が鳴り響いてる隙に、その一軒家の敷地内まで侵入する事に成功した。


 見つからないように塀の外から一軒家を見渡すが、敵はどうやら玄関近くの正面から攻撃をしていて、入り口からは中へ侵入出来ないと分かる。

(どうする?玄関以外から中へ入るには、家の一部を破壊する他ない。窓を割るか…)
 ヒスイは急いで足元の雪をかき集めて、地面に中くらいの山を作り始めた。すると、その山を踏み固めると、またその上に雪を積んで踏み固める作業を繰り返した。
(窓の高さが私の目線より高い所にある。入る時の足場も作っておかないと)
「…よし!」
 小さく意気込んだヒスイは割ろうとしている窓ガラスの正面付近にはいてある木に注目すると、持っていたナイフを振りかざした。
(この氷ナイフは“攻撃する対象物”に直接傷を負わせるより、対象物を狙って、刃で別の物体を傷つけて氷柱を出現させる使い方の方が使い勝手が良さそう。)
ザクッ!!
 ヒスイは振りかざした氷ナイフを木の幹に突き刺すと、氷ナイフを抜き取るなり、頭をすぐに抱えてその場に急いでしゃがみ込んだ。
(ただこのナイフ、欠点が一つあって…)
キーーーーーーン!!!!!
 すると、1、2秒間を置いて“傷がついた木の幹から垂直に氷柱が出現した”。


 その氷柱は真っ直ぐ勢いよく伸びると、パリンと音を立てて窓を突き破る。

(“傷つけた箇所から垂直に氷柱が出現する”んだよなぁ…。使い方が結構難しい)
 ヒスイは窓ガラスを割った氷柱の先端をナイフで切り落とすと、ガラスが取れている部分から窓の冊子を外して中へと入った。
 ヒスイが入った部屋は暗く、誰もいない様子だったので廊下の方へ出る。すると、すぐ正面の部屋のドアの下の隙間から明かりが漏れているのを確認した。
ドアを開けて入ってみると、そこには1人の女性の姿があったのだ。
「あれは…!」
「…っ!」
「ヒスイ!!!」
「ユズ!!!」
 その女性はまさかのヒスイの知っている人物だった。その人物も同窓会に参加していたメンバーの1人、黄原柚子果(きはら ゆずか)である。
 柚子果は部屋の隅で頭を守りながら身を屈めていた。


 そこへヒスイが駆け寄ると、手を差し伸べる。

「ユズ、大丈夫?立てる?」
「何なのコレ…地震?」
 ヒスイが家に侵入を試みようとしている間からずっと瓦礫音、衝撃音と共に家の揺れが続いていた。天井や壁からは埃や破片などが落ちてきているのがその証拠だった。
「ごめん、説明は後。今すぐここから出よう」
 ヒスイは慌てて柚子果の手を引くと、窓の冊子を外して侵入してきた部屋まで一緒に戻ってきた。
「あの窓から外に出るよ」
「え?玄関は?」
「玄関は今“敵”に襲われてる!」
「“敵”!?」
 ヒスイが先に窓から飛び降りると、柚子果も続くように窓から飛び降りた。


 雪の上に着地した2人はどこも怪我をしている様子もなく、尚且つ、まだ敵にも居場所を知られていない様子だったのでそのままその場を離れようとする。






ザクッザクッザクッザクッ

ザクッザクッザクッザクッ

「…よし、とりあえずこの辺りまで逃げてくればひとまずは大丈夫だろう」
 ヒスイと柚子果は先ほどの家から数十メートル先の別の家の敷地まで離れると、そこから遠目で敵の様子を確認した。
「“敵”ってあの人の形をした白いイカみたいな奴のこと?」
「そう!」
「“アレ”って何なの?」
「“私たち”も実は良く分かってないんだよね。でも、“アイツが襲ってくる”って事だけは分かってる。そのために私たちは武器を……」
「…っあ!」
 ヒスイは何か大事な事を思い出したかのように驚いた顔をした。
「どうしたの?」
「そういえばユズ、こんな感じのメモ用紙と鍵見てなかった?」
 ヒスイは自分のポケットから、メモ用紙と元の形に戻っている鍵を手のひらに乗せると、柚子果に見せる。
「…!…あったけど、大事な物なの?自分の物じゃないと思ってさっきの家に置いてきちゃった」
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登場人物紹介

【道角ひすい(みちかど ひすい)】22歳。東京でデザイン関係の仕事をしている。卒業した小学校の同窓会の予定がイブの日に入っていたため、地元に一時帰省していた。

同窓会のメンバーの中でメグと銀太以外は、会話するのが久しぶり。

【日下部瑞樹(くさかべ みずき)】大学生。同窓会のメンバー全員と久しぶりの会話。あまり自分から進んで話すタイプではないが、コミュニケーション能力はそれなりにある。

【紫竹山恵(しちくやま めぐみ)】地元で美容関係の仕事をしている。ヒスイが今でも連絡を取り合っている間柄で、ヒスイが地元に帰って来た時には毎度会ったりしている程である。大人びた綺麗な見た目で背も高い。銀太と付き合っている。

【宇鉄銀太(うてつ ぎんた)】地元で工業関係の仕事をしている。恵と付き合っているため、よく一緒にいる。人付き合いが特別好きってわけではないが、人との付き合い方が上手。ワイルドな見た目に関わらず、穏やかな性格。

【黒木玄(くろき げん)】消防士の仕事をしていて、体格が良い。女性が好きだが女心が分からないため、彼女が出来ない。デリカシーのない発言が多く、周りを戸惑わせるが本人は気にしていない。良くも悪くもマイペースな性格である。

【柿田夕一(かきた ゆういち)】大学生。小柄な体格であるが、体を動かす事が好きで大学のサークルではサッカー部に入っている。昔から天真爛漫な性格は変わっておらず、誰に対しても明るく信頼が厚い。

【春間美香(はるま みか)】大学生。小学校6年生の時に数ヶ月間だけ、ヒスイと同じ学校に転校してきた同級生。同窓会には元担任の先生から連絡をもらい、サプライズで参加していた。穏やかで明るい性格から、久しぶりに会った同級生ともすぐに打ち解けている。

【芝崎透(しばさき とおる)】大学生。今回の同窓会の幹事である。めんどくさがりなような一面も垣間見えるが、実際は面倒見の良い兄貴肌。体を動かす事はそんなに得意ではないが、自然が好き。

【黄原柚子果(きはら ゆずか)】看護学生。はっきりとした性格で、思った事はズバッと口にする。お酒が強く、同窓会の時も最後まで毅然(きぜん)と飲んでいた。

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