第140話

文字数 741文字

 とうとう十月に入った。今年もあと三ヶ月だ。今年の前半の記憶は殆どない。日常が平凡すぎて記憶に残ることが殆どない。

「はい」

「なにこれ?」

 朝から親に呼び出されて何かと思えば、封筒を渡された。

「今年の誕生日は会えそうにないから、先に渡しておくわ」

 一緒に暮らしていないが、会えない距離ではない場所に住んでいるため、月に一度か二か月に一度くらいはこうして会うようにしている。ただ親も高齢のため、必要なお金が増えているはずだ。毎年誕生日はメッセージだけでいいと言っているのだが、こうして毎年祝ってくれる。

「ありがとう」

 何が欲しいか分からないからと毎年現金を渡される。本音を言えば貯金に回したいが、せっかく貰ったものなので、欲しいものに使わせて貰おうと思う。
 昼は母親が用意してくれたのでそれを食べて家に帰った。

「スコーン作る予定だったんだけどな……」

 少し面倒になってしまった。
 まだバターの賞味期限は残っているし、来週末の三連休に作ってもいいかもしれない。もしかしたら、平日でも作る余裕があれば、夜に作ってもいいかもしれない。ただ、この三連休が終わるまでには作りたい。
 そろそろ秋冬用の服も欲しい。せっかく誕生日プレゼントで自由に使えるお金を貰ったので、それで服を買うのもいいかもしれない。
 基本はキャミソールワンピースを年中着ていて、中の服を変えて気温調整をしている。それに合わせてショートブーツも欲しいかもしれない。
 年齢に合った服装やメイクも勉強したい。自分に合う色も知りたいから、やはりパーソナルカラー診断は受けに行きたい。
 やりたいことはいろいろあるが、どれもこれもお金がかかる。今の給料では思うようにやりたいことができない状況だ。

(お金が欲しい……)

 一生願うことだろう。
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