第6話 イシガイの思い出

文字数 442文字

40年くらい前の昭和の頃。

「このイシガイは、邪魔だ。ジョレンに入って、シジミが採れなくなる」
そういって、シジミ漁師は、ジョレンにかかった大きな貝を手に取って、再び、ジョレンに入ることがないように、陸に投げ上げていた。見ると、陸には、大きな貝の貝殻の山ができていた。

このころ、ドブガイやカラスガイは、どこでもいくらでも取れる、直ぐに、大きくなるが、役に立たないという意味で、一部地方ではバカガイと呼ばれていた。こんなに大きくて、かつ、価値のない貝はいないと思われていた。なお、正式名称のバカガイはハマグリの仲間で、別種である。

「今日の夕飯は、おでんにしようか。このヨコハマシジラガイは大きくて、だしも出そうだわ」
主婦は、水産売場で、ヨコハマシジラガイをおでんの具に買い求めていた。淡水真珠貝の中で、ヨコハマシジラガイは、数少ない食用になる貝だった。しかし、もともと、生息数の余り多くないヨコハマシジラガイは、食用に供された結果、平成に入るころには、レッドデータブックに載るようになった。
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