第3話 釣り人

文字数 657文字

「今日はだめだ。1日粘ったのに1匹も釣れない」
益男は思った。
「いや」
思い直して、益男はいった。
「今日もだめだ」
もう、これで、魚が取れないのは、3日目だった。

益男は、魚釣りが趣味だった。

いつも、休みの日には、近くの川に釣りにいっていた。

5年前には、魚が沢山、取れた。それから、魚は次第に取れなくなり、最近では、半日、粘っても、1匹か、2匹、かかればよい状態になった。

そして、今年になって、とうとう1匹も取れない日が続く。ヤマメが取れなくなった、アユが取れなくなったというレベルの話ではない。全ての魚が取れなくなった。

どうして、魚は取れなくなったのだろうか。

30年前、益男がまだ、子供だったころ、河川はコンリートでおおわれていて、時々、嫌などぶ臭い匂いがした。

それから、コンクリートは、環境に悪いということになって、河川改修には、近自然工法が、使われるようになった。この工法では、河川改修の材料は、自然の川でみつかる、石、土、木、草などを使った。

河川の見た目は、コンクリートの骸骨のような白色から、植生護岸の緑色に変った。まず、植物が増え、それから、木には昆虫が付き、その虫を狙って、鳥が来るようになった。

それから、下水道の整備が進んで、薄緑色をしていた河川の水も、次第に透明になってきた。BOD,CODといった国が調べている水質指標も次第に良くなってきた。皆は、環境が良くなっていることを、肌で、感じ始めていた。

どう考えても、魚の環境は、次第に良くなってきた。ちょっと前までは、取れる魚の量は増えてきていたのである。
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