第11話 白鳥の死

文字数 708文字

「白鳥が、10羽死んでいるわ。先日見たときには、20羽いたから、一度に半分も亡くなったことになる」
「この間、太陽光発電が増えて、鳥が死んだでしょ。あれに、似てるわ」
「あの時は、木を切ったので、鳥のエサと巣をつくる場所が減ったからなんだ。今回は、エサの減少の影響らしい」
「エサって何」
「雑食だから、穀物や魚を食べる。秋に、日本に来るときには、稲の収穫期の頃になる。最初は、収穫後の落穂を食べたりする。しかし、冬になると、穀物や木の実のエサはなくなる。そうなると、魚と貝が主な食料になる。平成の初めの頃までは、冬にも、白鳥に穀物を与える餌付けが行われていたところもある。しかし、白鳥などの渡り鳥が、鳥インフルエンザを運んでくることがわかってからは、餌付けは禁止されている。だから、冬季には魚や貝が獲れなくなると餓死してしまう」
「そんなに沢山、魚がいるの」
「昭和の中頃までは、湿田といって、排水不良の田んぼが沢山あった。そこでは、ドジョウやタニシが沢山とれた。しかし、湿田の米の収量は低い。そこで、乾田化が進められ、田んぼでは、魚や貝が獲れなくなった。そこで、渡り鳥は、冬でも餌のあるため池に集中するようになった。ため池にいけば、白鳥がまとまった数みられるというのは、実は、昔はなかった風景なんだ」
「その少ないため池で魚がいなかったということ」
「そうだね。ため池だけでなく、河川にも餌はあるが、冬は、暖地では、水量が減る。寒冷地では、雪にうまって、水に近づけなくなる。どちらにしても、河川の餌は少ないので、渡り鳥はため池に集中する」
「どちらでも、魚や貝が減ると冬を越すことは難しくなるわけね。カラスが、死骸を食べているわ」
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