12話・花粉僧正

文字数 759文字

 僧正(そうじょう)

 あだ名の由来を知らない人には、意味不明なものだ。

 私のあだ名は僧正である。
そうじょう、変なあだ名であるが、それはある出来事による。
 私は花粉症だ、この季節はたまらない。
だが社会人として、いつまでも涙や鼻水に惑わされてなどいられない。
そこで考えた。そうだマスクをしようと。

 これなら少々息苦しいが、鼻水がパソコンを汚す事などない。だが長く仕事をしていると、目が痛くなる。これは目薬で・・・。
だが仕事が途切れる。
 そうかと私は、ゴーグルをはめた。
まあ見た目は悪いが、背に腹は代えられない。
何とかクリアと思えば。
マスクで鼻息が漏れて、ゴーグルが曇る。
だからマスク、ゴーグルマスク、ゴーグルと、代わりばんこにやったら。

 バカバカしい、仕事にならんと。私はマスクを外し、鼻にティシュを丸めて詰めた。
 うん!完璧だが・・・。
苦しいが、まあ良い一生ではない。
と仕事を続けていると、課長がやって来て。

「この間のプレゼンの件だが・・・」

で頭を上げた、俺の顔を見て。

「ぷっ!お前まるで棺桶に入った○ルトラマンだな」

と笑われた。周りの同僚も私を見て大爆発。
 それ以来、私のあだ名は仏様だった。
だが会社の飲み会で、同僚が仏様と言う言葉が思い出せずに。
鯵山大僧正(あじやまだいそうじょう)
と呼んだ。鯵山は私の名だ。
 それ以来俺は、大僧正から段々と格下げになり、僧正となった。

 これが俺のあだ名の由来だ。
と詳しく分かっている者には分かるのだが。
今、目の前にいるこの可愛い新人の女の子に、

「何で、僧正なんてあだ名なんですか?」

とキラキラ眼で聞かれても。答える事が出来なかった。今は私は点鼻薬で鼻水を止めている。
だから棺桶の○ルトラマンには見えないのだ。
まあ見えても、そこから僧正までの道のりは、結構遠いけどな・・・。

 終わり。
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