電動発電機
文字数 929文字
友人に鉄道ファンではない人がいて、私がある時、
「電動発電機」
という言葉を出したら、ひどく面白がった。
確かにそうだろう。軽油で電気を作るのならディーゼル発電機、蒸気で電気を作るのなら蒸気発電機。
だけど何が悲しくて、電気から電気を作るようなことをするのか。
要するに、架線電圧が600ボルトであろうが1500ボルトであろうが、その電圧のままで電車の室内灯やヘッドライトを点灯させたり、ATSを駆動したりはできないということ。
交流であれ直流であれ、とにかく100ボルトに落とさなくてはならない。
ではうかがいますが、どうやって降圧します?
「インバーターを使う」
なんて答えはナシですよ。昔はそんなものありません。
ある600ボルト電車は客室の室内灯として、蛍光灯ではなくて白熱電球を用いていて、1両に24個の電球があるのだけれど、それが6個ずつ組になって、直列につないである(全部で4組)。
そこへ直接600ボルトをかけるのだが、直列つなぎでは1個の電球にかかるのは100ボルトだから問題なく、室内灯として機能する。
昔はそういう方法もあったようだ。
国鉄電車はこれをどう解決しているかというと、ここに出てくるのが電動発電機で、1500ボルト用のモーターと、100ボルト用の発電機がダイレクトにつないである。
つまり1500ボルトの電気がモーターを回し、回された発電機が100ボルトの電気を生み出すわけ。
(旧型国電は直流100ボルト、新性能電車は交流100ボルト)
ただ新性能電車の場合には、もっとすごいことを考えた人がいる。
営業中の電車はつねに電動発電機を回転させているので、
(ホームで聞こえるウィーンという音の正体は、この電動発電機であります)
「じゃあ電動発電機のモーターと、電動送風機のモーターを兼用にしちまえばいいじゃん」
旧型国電では、走行風による自然な空冷で冷やすのだから、床下の抵抗器はみな露出していたけれど、新性能電車の抵抗器はカバーを付けられ、送風機からの風を受けて冷えるようになっている。
この送風機モーターが、電動発電機のモーターと兼用になっているわけ。
新性能電車の床下を眺めても、抵抗器の姿を見ることができないのはこのため。