5、山のホテルで食べるネパール料理

文字数 1,365文字

 歩いている時はかなり遠くに感じられた目的地の村だったが、暗くなる前に到着した。健脚な人なら3~4時間、私達は5~6時間かかっていた。山のホテル、と言っても部屋数が10もない民宿かペンションのような感じのホテルがいくつかあり、いつも決まって使っているところがあるのだろう。ガイドの2人が交渉してすぐに今夜泊まるホテルが決まった。小さな部屋にベッドと机、シンプルな作りである。トイレやシャワーは共同であった。部屋で荷物の整理をしてから、下の食堂に行った。大勢のネパール人スタッフと一緒に行くトレッキングはテントに泊まって食事も用意してくれる、ツアーの参加者は何もしなくてよいのだが、今回のトレッキングは食事も自分たちで選ばなければならない。カトマンズで泊まったホテルの朝食やポカラで入ったレストランのメニューは洋風であったが、村のホテルの食堂で食べられるのは、ネパールの人が普段食べている料理に近い。ネパールの人が普段食べているものはカレーと中華料理である。カレー味の豆のスープや野菜の炒め物とご飯をお皿に盛りつけた「ダル・バート」というのが定番である。他に観光客向けにチキンカレー、ヤキソバ、野菜炒めなどもメニューに書いてあった。日本語のメニューはなく、英語だけである。好きなものを注文してシェアして食べるという。

 英語のメニューをじっくり見ているうちに気になる料理があった。スプリング・ロールというものである。
「What is the spring roll?」
「Spring roll is very good. Most of the guests order spring roll」
 ガイドに聞くとスプリング・ロールというのはほとんどの観光客が注文する人気メニューらしい。ヤキソバ、野菜炒めなどと一緒にスプリング・ロールというものも注文した。

 ランプの灯りの食堂のテーブルに注文した料理が次々と運ばれてきた。お皿が大きくて量もたくさんあるので、シェアをしてちょうどよかった。ネパール料理は中華料理に似たものも全てカレー粉で味付けしていた。ヤキソバも野菜炒めも全部カレー味である。ガイドはニコニコしながらおいしいかと聞いてくる。全部カレー味と思いつつもおなかがすいていたのでどんどん食べた。そして最後に謎の大きな茶色の料理がドーンと運ばれてきた。それは何かを小麦粉を練った皮に包んで油であげているようだった。
「This is a spring roll. It's very good」
「Is this a spring roll?」
ここでスプリング・ロールの意味がわかった。でも目の前のそれは日本で食べる春巻きとはかなり違う。
「In Japan, we eat spring roll. But different」
切り分けて食べてみたネパール風春巻きは皮がかなり分厚くて固い。中身はカレー味のほうれん草とゆで卵を細かくしたものだった。塩とスパイスが効いているので、おつまみとして食べればおいしい。ただ、皮が固くて油をたっぷり吸っていて大きなお皿にドーンと乗っているこのネパール風春巻き、この量を1人で全部食べるのは無理だと思った。おなかいっぱいネパール料理を食べたのだが、その日の夜はさらに別のものも食べた。
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