16、2度目のネパール旅行の計画(1)

文字数 1,008文字

 日本に帰って日常生活に戻ったが、元の生活には戻れなくなっていた。何度も写真を見てはその時のことを思い出していた。時差ボケはもうとっくに治ったはずなのに、いつも眠くてぼんやりとしていた。最初にネパールへ行ったのが年末から年始にかけて、そして同じ年の5月にはトレッキング専門の旅行会社の説明会に参加した。

 説明会には20人くらいの人が参加していた。ネパールだけでなくキリマンジャロやニュージーランドのトレッキングコースなど、いろいろな国のトレッキングについて、スライドの写真を見ながらの説明を聞いた。全体の説明の後は個別で行きたい国のツアーについて詳しい説明もしてもらえる。

「あの、ネパール、ヒマラヤトレッキングはどのようなコースがありますか?」
「ネパールへ行くのは初めてですか?」
「いえ、8日間のコースでアンナプルな方面に行ったことがあります」

 ゴラパニ峠に行く予定のツアーに参加したとは言わなかった。トレッキング専門の旅行会社の人ならば、それがどれほど無謀な計画かすぐにわかって呆れられるに違いない。

「次はどちらに行きたいとお考えですか?」
「エベレストを見たいです」

 思いがけない言葉が口から飛び出した。別にこの時どうしてもエベレストを見たいと思っていたわけではない。ただネパール・ヒマラヤトレッキングで他にどのようなコースがあるか知りたいだけだった。いや、ネパールについてのガイドブックは行く前に何度も読んでいたから、主なコースや日程についてもよくわかっていた。そもそも行く気もないのになぜ私は旅行会社の説明会に来てしまったのだろうか?

「エベレストを見るのがご希望でしたらお勧めはカラ・パタールまで行くコースです」
「でもカラ・パタールは標高が5000メートルを越えていて日数もかなりかかるのでは?」
「弊社では20日間のコースを用意しています。高度順応のため、1日に歩く時間を少なくし、予備日も設けてあります。エベレストを間近に見ながら歩くことができる最高のコースです」
「でも、高山病の心配とか・・・」
「経験豊富なスタッフがサポートいたします」

 最初のネパール旅行の時、私はパンフレットをたくさん持って友人の家に行き、旅行会社の人になったような気分で一生懸命友人を説得して一緒に行くように誘っていた。でも2回目の時は状況がかなり違った。なぜ私はここにいるのだろうかと疑問を持ちながら、パンフレットを手に持っていた。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み