(二)-15
文字数 403文字
「俺、東京に初めて来てしばらく経ったとき、社長に東京観光に連れて行ってもらったんですよ。同じ会社の、集団就職した同僚の奴らを集めて修学旅行みたいにして。そこで初めて東京タワーを見ましたね。すっげえ感動したのを覚えてますよ。本当にあそこだけ高いんですよ。ほら、今はあっちこっちに高いビルが建ってるじゃないですか。でも当時、そういうのほとんどなくて。背の高い建物って本当に東京タワーぐらいだったんですよねえ。あそこの展望台に連れて行ってもらって、すげえ感動しましたよ」
「そうそう。あの辺は戦後に焼け野原だったし、建物が建ってもそう高い建物はなかったし。俺も覚えてる」
「その東京タワーも、もうお役御免ってわけなんですね」
「電波は止めたらしいけど、塔は残ってるってよ。今度行ってみるか」
「ジジイ二人でですかい」
「子どもも孫もいないんだ。あの世の土産話作りにはなるわな」
渋沢がそういうと、二人は笑いあった。
(続く)
「そうそう。あの辺は戦後に焼け野原だったし、建物が建ってもそう高い建物はなかったし。俺も覚えてる」
「その東京タワーも、もうお役御免ってわけなんですね」
「電波は止めたらしいけど、塔は残ってるってよ。今度行ってみるか」
「ジジイ二人でですかい」
「子どもも孫もいないんだ。あの世の土産話作りにはなるわな」
渋沢がそういうと、二人は笑いあった。
(続く)