(一)

文字数 219文字

「こんちは、先輩。来ましたよ」
 「渋沢」と表札の出ている脇の古い鉄の扉を開けて、足柄謙吉は部屋の中へと声を投げ入れた。
「おう、来たか。上がってくれ」
 奥から渋沢栄一郎の声が聞こえた。
 それを聞くと謙吉は「お邪魔します」と言ってから靴を脱ぎ、自由のあまりきかない右足から玄関に上がった。
 近所のコンビニで買ってきた五〇〇ミリリットルの銀色のパッケージの缶ビールが入ったビニール袋を掲げて「差し入れです」と言いながら部屋の中に入った。

(続く)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み