(二)-6

文字数 240文字

「そうだったのか」
 渋沢は火の通った鶏肉とタラ、それにぐったりした春菊や白菜などを小皿に移して、「ほれ」と言って謙吉の方へ突き出した。
「でも、この前かなり久しぶりに会う機会が会ったんですよ。そこで、一〇万もらいましたよ、退職金を渡せなかったからって」
 小さく感謝を伝えて小皿を受け取った謙吉は、鍋の脇のポン酢を小皿に盛られた食材にかけながら話した。
「へえ。そんなこともあるのかねえ」
「ええ。昔雇っていた者たちを訪ね歩いて配っているらしいです。『申し訳なかった』って言って」

(続く)
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