(二)-2
文字数 208文字
すると今度は画面に別の女性が登場し、『津軽海峡冬景色』を歌い始めた。
テレビの画面をちらちら見ながら、渋沢は鍋の中でぐったりしている春菊を脇によけつつ、鶏肉と鱈の切り身の火の入り具合を、菜箸でつつきながら確認した。
「俺は昔、上野着の夜行列車で東京にきましたよ」
画面を見ながらビールを一口すすり、謙吉が笑った。
「ああ、前にそんなこと言ってたねえ。集団就職列車だな。どこから乗ってきたんだい」
渋沢が尋ねた。
(続く)
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