第4話 現実の世界 「圭太と洋平」
文字数 1,159文字
《現実の世界》
「圭太!今日も部活へ行くだろ?」
上山洋平は授業が終わり、いつものように元気よく教室まで圭太を迎えに来た。クラスが別なのに、いつも共に行動している。
圭太の親友といえるのは中学校からの同級生で気の合う洋平くらいだ。
人は大きく分けると二つのタイプ分かれるとよく聞く。ピッチャータイプかキャッチャータイプ。オフェンスタイプかディフェンスタイプ。
圭太が前者で洋平が後者というわけだ。タイプが違う方がお互い心地よい。
小学校から少年野球に所属していた圭太は中学になれば野球部に入部するものと必然的に思い込んでいた。
しかし、中学校に入学したものの、野球部がなかったのだ。活動している部活といえばラグビー部、卓球部に水泳部、そしてサッカー部だった。
野球部がないことを知らなかった圭太は、ショックで落ち込んでいた。その時、悩んでいる圭太をサッカー部に誘ってくれたのが洋平だ。二人ともサッカー初心者だった。仕方なく毎日、一緒にボールを追いかけるようになったのだ。元々、運動神経がよく、センスもあった二人はすぐにレギュラーになり、いつの間にやらサッカーの虜になった。充実した中学校生活をともに送ることが出来たのだ。
サッカーに夢中になっていなければ、どうなっていたんだろうと何度か想像はしてみたものの、具体的な楽しいイメージが出来ないので考えないことにした。
「行くつもり……」
「あれ?あかりちゃんは?」
洋平が尋ねた。
「どうしたのかな。学校を休んでいるんだ。僕もなんだか体の調子が悪くて」
いつも元気な圭太が体調不良なんて珍しい。
「そうなんだ。圭太も大丈夫かい?無理することはないよ。それなら、今日は部活休んだ方がよさそうだな」
洋平は顔色が悪い圭太を心配していた。
「そうだな。そうしようかな。それじゃ、あとは洋平に任せて帰ることにするよ」
圭太はふらつく体を感じつつも、あかりの事が気になった。
「それはそうと、服に血がついているぞ」
圭太の右肩に血の跡がにじんでいた。
「えっ、なんだよこれは。気が付かなかったな」
身に覚えがない圭太はハンカチで血を拭いた。だが、理由がわからず理解に苦しんだ。
「それじゃ、また明日な。ゆっくり休めよ」
洋平は手を振って教室を出てグランドへ向かった。
いつも元気だなぁと感心し、後姿を見ながら、あかりの事を思い出していた。
校門を出て、いつものように、赤い大きな看板を掲げている自転車販売店の角を曲がり、駅の改札まで来た時にこちらを見つめる遠くからの視線に気が付いた。
見覚えのある女性だ。最近、意識が遠のく時があるので確信が持てなかったが確かに知っている女性だ。この距離でもわかる。
彼女を人込み越しに見ていたが、急にふっと姿が消えた。でも、今確かにあそこにいた。
確かに。
「圭太!今日も部活へ行くだろ?」
上山洋平は授業が終わり、いつものように元気よく教室まで圭太を迎えに来た。クラスが別なのに、いつも共に行動している。
圭太の親友といえるのは中学校からの同級生で気の合う洋平くらいだ。
人は大きく分けると二つのタイプ分かれるとよく聞く。ピッチャータイプかキャッチャータイプ。オフェンスタイプかディフェンスタイプ。
圭太が前者で洋平が後者というわけだ。タイプが違う方がお互い心地よい。
小学校から少年野球に所属していた圭太は中学になれば野球部に入部するものと必然的に思い込んでいた。
しかし、中学校に入学したものの、野球部がなかったのだ。活動している部活といえばラグビー部、卓球部に水泳部、そしてサッカー部だった。
野球部がないことを知らなかった圭太は、ショックで落ち込んでいた。その時、悩んでいる圭太をサッカー部に誘ってくれたのが洋平だ。二人ともサッカー初心者だった。仕方なく毎日、一緒にボールを追いかけるようになったのだ。元々、運動神経がよく、センスもあった二人はすぐにレギュラーになり、いつの間にやらサッカーの虜になった。充実した中学校生活をともに送ることが出来たのだ。
サッカーに夢中になっていなければ、どうなっていたんだろうと何度か想像はしてみたものの、具体的な楽しいイメージが出来ないので考えないことにした。
「行くつもり……」
「あれ?あかりちゃんは?」
洋平が尋ねた。
「どうしたのかな。学校を休んでいるんだ。僕もなんだか体の調子が悪くて」
いつも元気な圭太が体調不良なんて珍しい。
「そうなんだ。圭太も大丈夫かい?無理することはないよ。それなら、今日は部活休んだ方がよさそうだな」
洋平は顔色が悪い圭太を心配していた。
「そうだな。そうしようかな。それじゃ、あとは洋平に任せて帰ることにするよ」
圭太はふらつく体を感じつつも、あかりの事が気になった。
「それはそうと、服に血がついているぞ」
圭太の右肩に血の跡がにじんでいた。
「えっ、なんだよこれは。気が付かなかったな」
身に覚えがない圭太はハンカチで血を拭いた。だが、理由がわからず理解に苦しんだ。
「それじゃ、また明日な。ゆっくり休めよ」
洋平は手を振って教室を出てグランドへ向かった。
いつも元気だなぁと感心し、後姿を見ながら、あかりの事を思い出していた。
校門を出て、いつものように、赤い大きな看板を掲げている自転車販売店の角を曲がり、駅の改札まで来た時にこちらを見つめる遠くからの視線に気が付いた。
見覚えのある女性だ。最近、意識が遠のく時があるので確信が持てなかったが確かに知っている女性だ。この距離でもわかる。
彼女を人込み越しに見ていたが、急にふっと姿が消えた。でも、今確かにあそこにいた。
確かに。