第33話 現実の世界 「SHIHOが現れる」

文字数 727文字

 《現実の世界》

 学校の正門まで五十メートル以上ある真っ直ぐな遊歩道は、両サイドに広葉樹が植わっている美しい景観だ。今はまだ朝日もまぶしく、張り詰めた空気は新鮮で、生徒もまばらだ。
「やはり来たね。来ると思っていたよ」
 圭太は正面の赤茶色のレンガ造りの立派な校舎を見据えて、気づかない素振りでSHIHOに囁いた。
 大きなサングラスをしたSHIHOが足早に圭太の横まで歩いて追いついて並んで来たのだ。
「あとで堂下先生のところまで来て。事情はすべて話してあるから」
 それだけを告げると、そっと圭太から離れて行き姿が消えた。
「なんなんだよ。それだけ?」
 SHIHOのその言葉のために一日中、もやもや感が取れず、何一つ集中できずに過ごすこととなる。
 
 圭太は今日は部活へは行かず、授業が終わり次第、堂下先生の家へ行くことにした。
 すると、後ろから大きな声がした。
「お~い、圭太!元気か?」
 京野が走りながら手を振り駆け寄ってきた。
「ああ、まあまあだよ」
 京野と分かったので、愛想のない返事になってしまった。
「そうか。それは良かった。それはそうと......この前、どこだったかなぁ......きれいな女の人と話していたよね。誰なんだい?」
 興味があるのか、ないのか、からかいながら聞いてきた。
「そうだっかかなぁ。覚えてないな」
 なぜ、そんなことを急に聞くのか圭太のには理解できなかった。
 そして、さっきSHIHOに会っていたことを見られていたのかと心配になった。SHIHOの事は誰にも話せない。
「あかりのことは俺に任せてくれ!」
 そう言い放つと京野は元気いっぱい走って校門をくぐった。
 なんだかなぁと思いつつ、いつ見ても高校生には見えない京野に違和感だけが残った。






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登場人物紹介

SHIHO。(シャロン)「向こうの世界」で大東亜ファミリー製薬株式会社の社員として潜入捜査中。二つの世界を救おうと奮闘。

圭太。「現実の世界」を生きる高校二年生。あかりの事が昔から好きだが、告白できないでいる。

キング。「向こうの世界」大東亜ファミリー製薬株式会社社長。一代で会社を築き上げた。

ライアン。「向こうの世界」キングの右腕。大東亜ファミリー製薬株式会社をキングと共に作り上げた。

創一郎。「向こうの世界」で生きる。SHIHOの同僚であり、恋人。

あかり。「現実の世界」圭太の幼馴染。

ジョン。特別捜査官。「向こうの世界」シャロンの同僚。シャロンを助けるために奔走する。

堂下先生。「現実の世界」圭太とあかりの塾の先生。

徹。「向こうの世界」創一郎の弟で大東亜ファミリー製薬株式会社の研究者。

蓮。「現実の世界」圭太の弟で若き天才研究者。

ケイン。「向こうの世界」で特別捜査官のボス。シャロンの親代わり。

京野。「現実の世界」あかりの友人。

デモン。「向こうの世界」の国家安全保障局の局長。

洋平。「現実の世界」圭太の親友。

レイチェル。シャロンの妹で小学校の教師。シャロンと血はつながっていない。

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