第29話 向こうの世界 「ジョン狙われる!」
文字数 956文字
《向こうの世界》
「おやじ、お願いがあるんだが......」
「お前か。ここには掛けてくるなといっただろ!お前とは縁を切ったんだ。今まで通り、真っ当に生きてくれ」
「ああ。生きてるよ。ただ今回は社長から殺しを頼まれて......」
「何!ふざけるんじゃねぇ!そんなことしたらお前は終わりだぞ!俺たちマフィアと同じだ。やめとけ」
「い、いや。ライアンにも借りがあるし......」
「はぁ。何を言ってやがる。手なんか汚すな!もうわかったから、あとは俺に任せておけ。誰を消すんだ」
「社員のSHIHOとジョン。会社の裏切り者らしくて......」
「ああ、調べとくよ」
「すまない。おやじ」
「真面目に生きろ!」
◇◇◇
「どうも気に食わねえな。さっきから後ろをつけてきやがって」
ジョンはひとりごとを言いながら、路地を足早にすり抜けた。コツコツと路面を叩く足音が近づいてくる。
「今宵の月は格別に美しいというのに......」
角を曲がったところで立ち止まりホルスターから銃、ジグサウアーP226を抜き、少し顔を出したが相手が見えない。
そんな時は背後から狙われているのが鉄則。
ジョンは振り返りざまに銃を構えたが誰もいない。
「ん、何?上か?」
<パンパンパンパン>
屋上からかすかな煙が見えた。
「くそっ!」
撃たれはしなかったが、相手はひとりじゃなく罠にはめられ、おびき寄せられたことを悔しがった。
「俺とした事が」
死角になるレンガの壁にもたれかかって、敵を探した。
「どこだ?」
ジョンはゆっくりとまわりを確認したが誰もいない。
あの屋上にいたなら逃走ルートは、あそこの非常口だと見当をつけてそこを目指して走り出した。
ビルを回り込んでたどり着いた時には誰もいなかった。
「遅かったか。くそっ」
しかし、怪しい奴をジョンは見落とさなかった。
周りをよく観察すると、道の反対側の店の前のオープンテラスで飲み物を飲んでいる一人の男を見つけていた。明らかに不自然だ。
それは『加藤』だった。
大東亜ファミリー製薬株式会社の社員であり、しかもライアンと親しい。若いのに飛び級昇進した人物だ。
こんなところにいるのはどうもおかしい。ジョンは加藤を硝煙検査したい気分に駆られたが、どうせ加藤は自分の手は汚さず殺し屋を雇ったにすぎないだろう推測した。
「おやじ、お願いがあるんだが......」
「お前か。ここには掛けてくるなといっただろ!お前とは縁を切ったんだ。今まで通り、真っ当に生きてくれ」
「ああ。生きてるよ。ただ今回は社長から殺しを頼まれて......」
「何!ふざけるんじゃねぇ!そんなことしたらお前は終わりだぞ!俺たちマフィアと同じだ。やめとけ」
「い、いや。ライアンにも借りがあるし......」
「はぁ。何を言ってやがる。手なんか汚すな!もうわかったから、あとは俺に任せておけ。誰を消すんだ」
「社員のSHIHOとジョン。会社の裏切り者らしくて......」
「ああ、調べとくよ」
「すまない。おやじ」
「真面目に生きろ!」
◇◇◇
「どうも気に食わねえな。さっきから後ろをつけてきやがって」
ジョンはひとりごとを言いながら、路地を足早にすり抜けた。コツコツと路面を叩く足音が近づいてくる。
「今宵の月は格別に美しいというのに......」
角を曲がったところで立ち止まりホルスターから銃、ジグサウアーP226を抜き、少し顔を出したが相手が見えない。
そんな時は背後から狙われているのが鉄則。
ジョンは振り返りざまに銃を構えたが誰もいない。
「ん、何?上か?」
<パンパンパンパン>
屋上からかすかな煙が見えた。
「くそっ!」
撃たれはしなかったが、相手はひとりじゃなく罠にはめられ、おびき寄せられたことを悔しがった。
「俺とした事が」
死角になるレンガの壁にもたれかかって、敵を探した。
「どこだ?」
ジョンはゆっくりとまわりを確認したが誰もいない。
あの屋上にいたなら逃走ルートは、あそこの非常口だと見当をつけてそこを目指して走り出した。
ビルを回り込んでたどり着いた時には誰もいなかった。
「遅かったか。くそっ」
しかし、怪しい奴をジョンは見落とさなかった。
周りをよく観察すると、道の反対側の店の前のオープンテラスで飲み物を飲んでいる一人の男を見つけていた。明らかに不自然だ。
それは『加藤』だった。
大東亜ファミリー製薬株式会社の社員であり、しかもライアンと親しい。若いのに飛び級昇進した人物だ。
こんなところにいるのはどうもおかしい。ジョンは加藤を硝煙検査したい気分に駆られたが、どうせ加藤は自分の手は汚さず殺し屋を雇ったにすぎないだろう推測した。