第25話 向こうの世界 「治験者 SHIHOたち」

文字数 856文字

 《向こうの世界》

「ライアン、今回、治験をしたのは何人だ?予定どおりだったのか?」
「いえ、キング、今回は創一郎とSHIHOと加藤の三人です」
「それで、気づかれずに投与できたのか?本人も知らないのか?」
「眠らせて、上手くやりました。本人もわかっていないと思いますよ」
「もう一人いたはずだがどうした?三人だけではなぁ。以前はもっと治験しただろう?」
「はい。しかし、薬が思っていたより、まだ、安定しないのでかなり危険です。それに.....」
「局長がお怒りなんだよ。彼は何を考えているのか不安なんだ。もはや、先に誰かあっちへ送り出して、あっちでSHIHIOを始末するしかないな。もうすでに、かなりの情報を握ってるみたいだしな......記憶を消そうと思ったが手遅れか」
「ええ。すでに加藤を行かせています。加藤にはすべて話し仲間に加えました」
「そうか。ただ、創一郎は生かしておけ」

 ◇◇◇

 SHIHOはケインの店のカウンターでひとりワインを飲んでいた。
 今日もジャズが流れていて、落ち着ける雰囲気だが客はまばらだ。
「スティー......いやジョンと上手くやっているのか?」
 ケインが尋ねた。
「ええ、上手くやっているわ」
「任務を忠実にこなせよ。シャロン、いや、SHIHO」
「わかっているわ。任せて」
 そう言って、ワインを飲み干しカウンターの中へ入り、誰にも気づかれないように扉を開け部屋に入った。
 パソコンのモニターを見ながら考え事をしていた。
 机の引き出しから銃、グロック19を取り出し、デニムの後ろに挟み込み隠した。
 ケインも部屋に入ってきた。
「今は潜入捜査中だぞ。創一郎にも、いつかすべて話すことになるぞ」
「そうね」
「わかってない。今のSHIHOはシャロンではないぞ。本当の自分ではないんだぞ」
 ケインはSHIHOのことを心底心配していた。
「潜入中の恋愛は後々自分を苦しめる。心配なんだよ」
「わかっているわ」
 
 ケインは自分と同じこの道にシャロンを導いたことが正解なのかわからなくなってきた。
 父親代わりとして・・・。




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

SHIHO。(シャロン)「向こうの世界」で大東亜ファミリー製薬株式会社の社員として潜入捜査中。二つの世界を救おうと奮闘。

圭太。「現実の世界」を生きる高校二年生。あかりの事が昔から好きだが、告白できないでいる。

キング。「向こうの世界」大東亜ファミリー製薬株式会社社長。一代で会社を築き上げた。

ライアン。「向こうの世界」キングの右腕。大東亜ファミリー製薬株式会社をキングと共に作り上げた。

創一郎。「向こうの世界」で生きる。SHIHOの同僚であり、恋人。

あかり。「現実の世界」圭太の幼馴染。

ジョン。特別捜査官。「向こうの世界」シャロンの同僚。シャロンを助けるために奔走する。

堂下先生。「現実の世界」圭太とあかりの塾の先生。

徹。「向こうの世界」創一郎の弟で大東亜ファミリー製薬株式会社の研究者。

蓮。「現実の世界」圭太の弟で若き天才研究者。

ケイン。「向こうの世界」で特別捜査官のボス。シャロンの親代わり。

京野。「現実の世界」あかりの友人。

デモン。「向こうの世界」の国家安全保障局の局長。

洋平。「現実の世界」圭太の親友。

レイチェル。シャロンの妹で小学校の教師。シャロンと血はつながっていない。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み