第3話 ざまぁ、二股男 ーいよいよ鉢合わせー

文字数 1,723文字

 暫くしてチャイムの音がした。

 ピンポーン・ポンピーン
 ピンポン・ポンピン・ピンポン
 ピンピンピンピンピンポン
 ポンポンポンポンポンピン

 シャワーの音を掻き消すくらい激しいチャイムの音が。
 ちょっとやり過ぎかと思うくらい。
 なのにドアを開けた感じがしない。
 さては馬鹿男、鍵穴覗いてチョク雪乃のどアップでビビったなぁ。
 シャワー浴びてないことバラす訳にいかないし、声には出せないけどぉ、マジで、はぁーっ!、だよ。
 その程度のことでビビってる奴がぁ、親友ふたりに二股掛けてんじゃねえぞ馬鹿男がぁ。
 あぁーっ、ここから飛び出して言ってやりたい。
『ネタは上がってんだよぉ!』、って。

 でもそう言う訳にはいかないから、とりあチョっとだけドアを、ソローっ、て、開けてみる。
 馬鹿男め、肩ヒクヒクさせてそこら中ぐるぐる回ってやんの。
 バァーっか。
 雪乃の顔見てパニックになってる。
 あぁっ、やばっ、ここで、『ざまぁーっ』、て、叫びたいーっ。
 でも、静かに深呼吸。
 私の出番はもう少し後だから。
 あっ、やばっ、馬鹿男がこっち来る。
 そっか、まだ私がシャワー浴びてるかの確認か。
 内から鍵掛けてっ、と。
 で、シャワーを最大限捻る。
 よしっ、どうだ。
 ふーっ、良かった。
 またドアの方に戻った。
 でもこのバスルームのドア閉まってるし、シャワーの音がデカ過ぎるしで、馬鹿男の声聞こえなーいっ。
 って、しゃあないなぁ、ここからは音声だけの実況中継ってか。
 はい、未だに雪乃とわぁ、通話中っでぇーっす、っと。
 こうやってぇ、スマホを耳に当てるとぉ。

 ほら聴こえた。
         ー5ー

 あっ、ガチャっとか音した。
 馬鹿男やっと鍵開けたかぁ。
 おっ、いよいよ雪乃の登場だぁ。

「え、え、何で、何で、雪ちゃんがここに?」
 焦ってやんの、馬鹿男め。
 てか、雪乃のこと雪ちゃんとか言ってやんの。
 殺すぞ馬鹿がぁ!
「何でって、じゅんの実家電話掛けてどうしても会わないといけない急用があるからっつったら、じゅんのお母さんが教えてくれた。
 てか、私が来たらまずい訳。
 ひょっとして誰か居る?
 何かここに女の子用のブーツ脱いであんだけど、ね、誰?」
 おぉーっ、いいぞ雪乃、頑張れ。
 総ては雪乃の演技に掛かっているぞ。
 いけ、いけーっ。
「だ、だ、誰って、あの妹、うん、妹」
 チッ、何で私が妹ぉ?
 あぁー、駄目だ。
 やっぱ殺す。
 てか、もう今、殺す。
 あぁームカつくぅ・・・・・、けどぉ、我慢ーっ。。
「妹? へーっ、妹なんか居たんだぁ。
 こないだじゅんの実家で会ったの、彼弟じゃなかったっけ?」
 おぉーっ、雪乃演技派女優。
 冷静ーっ。
 雪乃、馬鹿男追い詰めてるぅ。
「あっ、あのね。
 そっ、あの腹違いの妹なの。
 異母兄妹なの、うん。
 雪ちゃんには言ってなかったけど、ね。
 家庭の事情なの、これは、ね。
 で、今あの、妹、シャ、シャワー浴びてるから、ちょっ、外、外行こ、外、とにかく外に」
 でたよ、これ。
 馬鹿男外に逃げる気なんだぁ。
 どうする雪乃、外になんか出すなぁ
「別に中で良くなーいっ。
 とにかくお邪魔しまーっす」
         ー6ー

 さすがぁ、よっ、雪乃、いいぞぉーっ。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ。
 あの、駄目だって、妹びっくりするからぁ」
 そろそろかぁ、私の出番わぁ。
 さっ、そろそろシャワー浴びないと。。
 電話切ってスマホ置いてぇ。
 服脱いで、そんで形だけシャワー浴びてぇ。
 っと、シャワーの栓を戻してぇ。
 身体拭いてぇ。
 お次はショーツだけ穿いてぇ。
 で、誤解を招くように胸下にバスタオル巻いてぇ、っと。
 はい、準備OKっと。
 したら私は敢えて何も知らない感じで、すっ惚けた声を出す。
「ねぇ、あっちゃん。
 誰か外に居るの?」
 っしゃぁーっ、上手く言えた。
 いよいよだぁ。
 ふーっ、と、大きく息を吐いてバスルームのドアを開けると、打ち合わせ通りそこには雪乃が居た。

         ー7ー
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