第2話 ざまぁ、二股男 ーシャワーの音を聴きながらー
文字数 1,476文字
ひとつ間違えてたらあの馬鹿男のせいで、幼稚園から15年間もずっと親友だった雪乃を失うところだった。
分かったのは昨日だ。
あぁ、思い出すだけでむかつく。
雪乃には自分のことを淳(あつし)ではなく、淳(じゅん)と名乗っていた。
嘘のような本当のような、まったくグレイゾーンなやり口。
一ヶ月に最低でも2・3回は会っていた雪乃と大方一年にもなるのに、まったく二股を掛けられているのに気付かなかったのは、お互い男のことを話すとき苗字でなく、あつしとじゅんって言ってたせいかも知れない。
それに今時馬鹿男がガラケー使ってるのは、私達を騙す為だったんだろう。
パソコンとタブレットは持ってるけど仕事上守秘義務や制約があって、スマホを持ってても余り意味がないとか何とか、もっともらしい言い訳言ってた馬鹿男。
インスタもツイッターもフェイスブックも、ありとあらゆるSNSをやらない馬鹿男。
プリクラも、デジカメも、絶対に撮らない。
否、バレない為に撮らせなかったんだ。
だからついこの間まで、遠くからデジカメで撮った横顔のものし
かなかった。
それに雪乃の持ってた写真は眼鏡を掛けたものしかなかったし。
だからこそ互いにあの馬鹿男の写真を見せ合っていても、気付かなかったのかも。
何つっても、あっちゃんとじゅんちゃんなんだから。
寝顔を撮ったのは、ついおとといのことだった。
馬鹿男が安心し切っていたと言うのもある。
写真を見せたとき雪乃の顔が引き攣り出して、そんとき始めてふたりの男が同じなのかも知れないって思った私も、引き攣った。
雪乃には実家の住所だけ教えていて、出張がちだから実家に住んでるって言ってたらしい。
実家は荻窪で別に借りてるこの部屋は千駄ヶ谷。
まったく別方向だ。
雪乃とは実家で、私とはこの部屋でしか会わなかったんだ。
確かに実家が荻窪なのは知ってたけど、荻窪の何処かまでは聴いてなかったから、『そうだ私のカレの実家も荻窪だよ』ってふたりしてはしゃいでた。
馬鹿みたいな私と雪乃。
ー3ー
雪乃にはITだけどビジネスソリューションの仕事をしてるって、私にはITだけどセキュリティ関係って言っていたらしい。
よくよく考えるとどっちもあの馬鹿男の仕事だ。
寝顔の写真見せた後ふたり同時に、あの馬鹿男の名刺を出し合ったときふたりとも凍り付いた。
会社名もデザインも違うけど、オフィスの住所が一緒で原淳って名前が漢字で書かれてた。
怒っていいのか、謝ったらいいのか、そうじゃなくて泣いたらいいのか、でもやっぱ憎たらっしく微笑んだらいいのか。
凍り付いたまま何も出来ない私。
暫くして雪乃が切り出した。
「さよならしよう」
私は顎を振っていやいやをした。
「そんな、嫌だょ、雪乃とはずっと親友だよ」
すると大きな溜息をひとつ吐き出した雪乃が、私の頭をポンポンしながらこう言った。
「馬鹿何言ってんの、あの二股サイテー男とだよ。ふたりしてあいつと別れるの。
勿論復讐してからね」
その後私と雪乃と泣き笑いしながら抱き合った。
今私はシャワーの音をバスルームの外で聴きながら、雪乃が入って来るのをじっと待っている最中なのだ。
と、言っても一人で待ってる訳じゃない。
雪乃とふたりで待ってる。
だから今雪乃も同じシャワーの音を聴いてる筈。
何でってショーパンの後ろのポケットの中にあるスマホは、雪乃と通話中のままだからだ。
ー4ー
分かったのは昨日だ。
あぁ、思い出すだけでむかつく。
雪乃には自分のことを淳(あつし)ではなく、淳(じゅん)と名乗っていた。
嘘のような本当のような、まったくグレイゾーンなやり口。
一ヶ月に最低でも2・3回は会っていた雪乃と大方一年にもなるのに、まったく二股を掛けられているのに気付かなかったのは、お互い男のことを話すとき苗字でなく、あつしとじゅんって言ってたせいかも知れない。
それに今時馬鹿男がガラケー使ってるのは、私達を騙す為だったんだろう。
パソコンとタブレットは持ってるけど仕事上守秘義務や制約があって、スマホを持ってても余り意味がないとか何とか、もっともらしい言い訳言ってた馬鹿男。
インスタもツイッターもフェイスブックも、ありとあらゆるSNSをやらない馬鹿男。
プリクラも、デジカメも、絶対に撮らない。
否、バレない為に撮らせなかったんだ。
だからついこの間まで、遠くからデジカメで撮った横顔のものし
かなかった。
それに雪乃の持ってた写真は眼鏡を掛けたものしかなかったし。
だからこそ互いにあの馬鹿男の写真を見せ合っていても、気付かなかったのかも。
何つっても、あっちゃんとじゅんちゃんなんだから。
寝顔を撮ったのは、ついおとといのことだった。
馬鹿男が安心し切っていたと言うのもある。
写真を見せたとき雪乃の顔が引き攣り出して、そんとき始めてふたりの男が同じなのかも知れないって思った私も、引き攣った。
雪乃には実家の住所だけ教えていて、出張がちだから実家に住んでるって言ってたらしい。
実家は荻窪で別に借りてるこの部屋は千駄ヶ谷。
まったく別方向だ。
雪乃とは実家で、私とはこの部屋でしか会わなかったんだ。
確かに実家が荻窪なのは知ってたけど、荻窪の何処かまでは聴いてなかったから、『そうだ私のカレの実家も荻窪だよ』ってふたりしてはしゃいでた。
馬鹿みたいな私と雪乃。
ー3ー
雪乃にはITだけどビジネスソリューションの仕事をしてるって、私にはITだけどセキュリティ関係って言っていたらしい。
よくよく考えるとどっちもあの馬鹿男の仕事だ。
寝顔の写真見せた後ふたり同時に、あの馬鹿男の名刺を出し合ったときふたりとも凍り付いた。
会社名もデザインも違うけど、オフィスの住所が一緒で原淳って名前が漢字で書かれてた。
怒っていいのか、謝ったらいいのか、そうじゃなくて泣いたらいいのか、でもやっぱ憎たらっしく微笑んだらいいのか。
凍り付いたまま何も出来ない私。
暫くして雪乃が切り出した。
「さよならしよう」
私は顎を振っていやいやをした。
「そんな、嫌だょ、雪乃とはずっと親友だよ」
すると大きな溜息をひとつ吐き出した雪乃が、私の頭をポンポンしながらこう言った。
「馬鹿何言ってんの、あの二股サイテー男とだよ。ふたりしてあいつと別れるの。
勿論復讐してからね」
その後私と雪乃と泣き笑いしながら抱き合った。
今私はシャワーの音をバスルームの外で聴きながら、雪乃が入って来るのをじっと待っている最中なのだ。
と、言っても一人で待ってる訳じゃない。
雪乃とふたりで待ってる。
だから今雪乃も同じシャワーの音を聴いてる筈。
何でってショーパンの後ろのポケットの中にあるスマホは、雪乃と通話中のままだからだ。
ー4ー