第6話 100年前の歴史

文字数 1,510文字

きらきらした文字が本に綴られていく。今度はるなちゃんが読み上げた。
「前頁の家系図に記された者の中で、今2023年からぴったり100年前の1923年から魔法の使用を禁じている。」
本が勝手にページを戻し、さっきの家系図のところを出す。そして、家系図の上に赤い大きな罰印が書かれた。100年分、私のひいおばあちゃんの代から魔法の使用が禁止されていた。それまでは代々魔法を使っていたんだ。衝撃過ぎる事実に驚きが隠せない。二人とも言葉を発せずにいると、またページがめくられた。さっきの文章が書かれていたところに新しい文章が追加される。二人とも読み上げる気にもならず、ただただ言葉を目で追った。
(100年前、当時の魔法使いが魔法で人を傷つけた。その代償として、100年間魔法の使用を禁じた。100年後罪は許される。)
100年前の具体的な出来事は書いてなかった。けど、とにかく100年間魔法を使わなかったから、罪は許させれた。安易にそう考えた私だけど、すぐにまた本に文字が綴られる。
(ただし、条件がある。)
条件?嫌な予感がした。もし条件をクリア出来なかったら、私たちの罪は許されない?いや、そもそも私たちの罪って何?
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音が鳴り響く。はっとして二人で顔を見合わせる。すぐに放送が入った。
「最終下校の時間になりました。生徒の皆さんは直ちに下校してください。今から施錠に参ります。」
先生の声が流れる。放課後のドッジボール大会が終わってから、気がつけば最終下校の時間になってたんだ。
「やばい!帰ならきゃ!こんなとこにいるの先生に見つかったら……。」
「怒られるだけじゃすまなさそうだね……。」
使ったパイプ椅子を元に戻し、ドアに手を掛けた。
ガチャ。
「え?」
ガチャガチャガチャ。
「開かない。」
ドアが開かないんだ。鍵がかかってるような音がする。
「考えれば当たり前だわ。」
るなちゃんの冷静な声が響く。
「ここは立ち入り禁止ゾーンだもの。鍵が開いてるはずがない。私たちは瞬間移動的なもの、そうね、花梨ちゃんの魔法でここに来たの。鍵がかかっててもおかしくないわ。」
「そ、そんな……。」
どうしよう!!外に出られない!!
「もし先生が気づかなかったら私たち、ここで野宿……。」
「野宿!?そんなことはさせない!」
私の不安でいっぱいの声をるなちゃんがかき消す。
「魔法でここに来たんだから、魔法で出ればいいんでしょ?」
るなちゃんはそう言って私の手を握る。
「花梨ちゃん、あなたの魔法で脱出するのよ!」
「私の魔法で!?」
そんなこと言われても、まだまだどうやって魔法を使ったらいいか分からないのに。
「どうやって理科準備室に来たの?その時のこと覚えてないの?」
どうやって……。私は考え込む。あの時はただ必死に逃げなくちゃって思って、思い付いたのが理科準備室。心の中で強く願ったんだ!
「心の中で強く願った。そしたら、ここにいた。」
「なら、願うのよ!目指すは教室よ!」
「教室?」
「荷物置いてきてるでしょ?」
あ、そうだった。教室に戻らなくちゃ!私はるなちゃんの手をとった。
「教室に戻って!!」
私は叫んだ。ぴかっと辺りが光り出す。眩しさに目をつぶる。お願い!教室にいて!願いながら目を開けた先は教室だった。
「出来た……。」
「良かった……。」
二人で手を握りあい、床に座り込む。
ガタリ。
ドアの方で物音がした。誰か見てた?振り向くとそこには……。
「な、直人……。」
目を見開いたまま硬直した……直人がいた。見てないよね?見てない……はず。
「お、お前ら……。どこから来たんだ……。今ここには誰もいなかったのに……。」
直人に全て見られていた?嫌な予感が頭をよぎった。
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登場人物紹介

白浜花梨

クラスでは目立たないポジ。図書委員で本が大好き。

谷口るな

花梨の友達で、挨拶委員会。しっかり者の頼れる存在!

東山星

学校中の人気者。可愛くて優しい!

吉田直人

スポーツ万能だか、勉強はあんまり。元気でうるさいポジ。

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