第12話 花梨の決意 一

文字数 1,116文字

「私のせいで二人が死ぬ。」
言葉に出して言ってみると、震えて涙が止まらなくなる。どうしよう……。わたし、どうすればいいの……。もう無理だよ……。そっと本を撫でる。自分が死ぬことも出来るんだよね。でも……でも……やっぱり怖いよ。私が死ぬのが正解なの?
ガタン。
気が付けば椅子から落ちていた。痛みにはっと頭が冴える。悩んでても仕方がない!るなちゃんと直人を助けなきゃ!私は立ち上がった。今のるなちゃんの状態を知るためだ。すぐに保健室に行かなきゃ!胸に手を当てる。保健室の前に行っても追い返されるかもしれない。この能力を使うのは今しかない!!そっと目を閉じた。るなちゃんの所へ!!ふわりと宙に浮く感覚を感じた後、目を開ければ、白いベッドに身を預けたるなちゃんがいたんだ。
「るなちゃん!」
大きな声は出せない。独り言のように呟いて、目の前の親友の姿に涙が止まらない。しずかに目を閉じたるなちゃんには、苦しんでいるようすは無い。まるで眠っているようだった。
「るなちゃん……。私どうすればいいの?」
足に力が入らず、膝から崩れ落ちる。ベッドに顔を押し当てて、ひたすら泣くことしか出来ない。そっと目の前にあるるなちゃんの手を掴む。るなちゃんの気持ちを知りたいよ……。
「どうして?」
「え?」
慌てて顔を上げる。声が聞こえた気がしたのに、周りには誰もいない。あれ?
「私何でこんなことになってるの?」
やっぱり聞こえた!しかもこの声!いつも聞いている大好きな声だった。
「るなちゃん?」
どういうこと?目の前のるなちゃんは相変わらず、眠っているままだ。じゃあこの声はどこから聞こえてきてるの?
「体は痛くないし、ただ眠っているみたい。」
もしかして……これはるなちゃんの心の声?私が願ったからだ。るなちゃんの気持ちを知りたい!って。
「どういうことかよく分からないけど、すぐ起きなくちゃ!花梨ちゃんが危ないのよ!星ちゃんにいじめられちゃう!早く助けなきゃ!」
るなちゃんの声は焦っているのに、まったく体は動いていない。
「どうして起きられないの?私が頑張らなくちゃ!るなちゃんを助けなきゃ!!」
「もう止めて!」
叫んでいた。自分でも止められなかった。私の為に頑張ろうとしてくれている。それが辛すぎたの。私はさっきまで自分の命か、親友の命か考えていたっていうのに。るなちゃんは、私の為に必死に起きようとしてくれてる。
「誰かいるの?」
保健室の先生の声がする。ヤバイ!このままだとばれる。私は立ち上がると、るなちゃんに抱き着いた。眠っているるなちゃんは、抱き返してはくれない。だけど、私は力一杯るなちゃんを抱きしめた。
「ありがとう。るなちゃん。」
廊下へ!目を閉じて、胸の中でそう願った。



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登場人物紹介

白浜花梨

クラスでは目立たないポジ。図書委員で本が大好き。

谷口るな

花梨の友達で、挨拶委員会。しっかり者の頼れる存在!

東山星

学校中の人気者。可愛くて優しい!

吉田直人

スポーツ万能だか、勉強はあんまり。元気でうるさいポジ。

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