第2話 審判決め

文字数 1,280文字

「小思企画!ドッジボール、全員参加で~す!」
クラスの小思(あ、これは後で説明するね!)委員が言う。この学校では皆どこかの委員会に所属しなくちゃいけない。るなちゃんみたいに真面目な挨拶委員会もあるけど、クラスで3つだけ決めていいよ!っていうクラス委員もある。うちのクラスは「小学校を思いだそう委員会」「誕生日を全力でお祝いしよう委員会」「恋愛調査委員会」があって、どれも長いから、「小思」「誕祝」「恋調」って略して呼ばれてる。全部その名の通りだけど一応説明すると、小思は小学校を思いだす……らしい、私にはよく分かんない。誕祝はクラスで誕生日の人がいたら、クラス中を飾り付けたり歌を歌ったりする。恋調は意外と成果をあげていて、付き合った人は恋調新聞に名前が載り、インタビュー記事なんかも載っていたりする。私は図書委員会で本が大好き!皆にはあの本はめっちゃおすすめ!あ、あれも!あ、あれも!
「えぇー。」
みんなの声に現実に引き戻される。
「ねえ、花梨ちゃん?おーい!」
「あ、ごめん。」
「さっきから呼んでるじゃん!」
るなちゃんは怒っていた。
「ごめんごめん!……怒ってる?」
「怒ってる!でも、怒ってるのは花梨ちゃんのせいじゃなくて……。」
るなちゃんは視線を星ちゃんに動かした。星ちゃんは周りにたくさん人を集めていた。
「星ちゃんはドッジボール楽しみ?」
「うん!もちろん!」
「えぇー。何で?」
「小思の皆が頑張って考えてくれた企画だもん。皆で楽しもう!」
周りの子をなだめてたみたい。優しいなーなんて思いながら見ていたら、星ちゃんがぱっとこっちを向いた。ぴったり目があって、星ちゃんがこっちに歩いてくる。
「二人は楽しみ?」
「え、私たち?」
振り返って後ろに誰もいないことを確かめる。私たちに話しかけてくれたの?
「うん。とても楽しみよ。」
るなちゃんが席から立ち上がり、星ちゃんと目線を合わせる。それからにこっと笑うと、星ちゃんもにこっと笑った。
「るなちゃんは真面目だもんね。」
「そんなことないよ。」
「あ!それならるなちゃんに審判やってもらうのはどう?」
「「え?」」
私とるなちゃんの声が重なる。るなちゃんが審判?審判は小思の人って決まってるんじゃ……。
「だって、小思の人たちいつも審判してて、遊べてないじゃん。」
「え、俺ら審判やらなくていいの?やったーー!!」
小思の皆があからさまに喜んでしまった。これじゃ断りにくい。るなちゃんが審判になっちゃうよ……。
「えぇ、いいわ!やるわよ!」
しっかりとるなちゃんが言った。
「るなちゃん!?」
「大丈夫だよ。花梨ちゃん。」
無理して言ってる気がして声をかけたけど、るなちゃんは落ち着いて笑った。本当に大丈夫?でも、るなちゃんの顔に不安はない。
「審判やってみる!」
「わぁー!るなちゃんありがとう!」
星ちゃんがるなちゃんに向かって大きく手を広げる。抱きつこうとしたみたい。それを見たるなちゃんはその手をするりと避ける。代わりに握手をした。何となくハグを避けたみたいになったけど大丈夫かな?心配したけど星ちゃんはにっこり笑って、「ありがとねー!」とだけ言った。
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登場人物紹介

白浜花梨

クラスでは目立たないポジ。図書委員で本が大好き。

谷口るな

花梨の友達で、挨拶委員会。しっかり者の頼れる存在!

東山星

学校中の人気者。可愛くて優しい!

吉田直人

スポーツ万能だか、勉強はあんまり。元気でうるさいポジ。

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