短編集 目線交代

文字数 1,733文字

本編では、1~14話が花梨ちゃん目線、15話が星ちゃん目線ですので、おまけとして、本編を直人君とるなちゃん目線で書かせていただきました!文字数を少なくするために、大分説明を省いていますので(勝手にすいません。)3話と7話を先にお読みいただくと、分かりやすいと思います。

第3話 ドッジボール 直人目線
「当てろー!当てろー!」「きゃーー!」
うるせぇ。でも今はそんなこと気にしてられねぇ。俺は今から……。
「あ!やべ!」
わざと焦った声を出したけど、ほんとは狙ってる。
「わっ!」「るなちゃん!大丈夫!?」
「谷口ー!」
谷口の方に駆け寄る。
「びっ、びっくりした。」
「お、大袈裟だなー。じゃあ始めるぞー。」
白浜の視線が背中に刺さる。ごめん。心の中で謝るしかない。
「直人!謝りの一つもないの!?」「大丈夫よ、花梨ちゃん。もういいの。」
俺だってこんなことしたくない!そんな言葉が届くはずも無かった。
「るなちゃん!でも……。」
白浜の手を振り払った。顔を向けたら、きっと何か感づかれる。俺はそのままコートに戻った。
「わっ!」「きゃ!」「っっ!」
谷口の声が響く。なかなか当てられない。そんな時、東山と目が合った。早くしろ、と目が語っていた。俺は本気の一撃を放った。あー。もうこれで谷口は倒れる。強く投げすぎた。でも、もう後戻りできない。目を瞑った。ごめん、ごめん、ごめん。谷口!
パーーン。
「るなちゃん!!」
大きな音と、白浜の声が聞こえた。目を開けると、バラバラになったボールと、棒立ちする谷口が見えた。
「るなちゃん!大丈夫?ねえ、るなちゃん!返事して!」「るなちゃん!るなちゃん!きゃ!るなちゃん!!」
白浜の悲痛な叫びと、ドサッと人が倒れる音。それから……。
「二人とも!大丈夫?」「皆!先生を呼んできて!」「花梨ちゃん、大丈夫だよ。こっちに来て。」「大丈夫、大丈夫。怖くないからね。」
最低なやつの悪魔の囁きしか、俺には聞こえなかった。

第7話 直人を信じる? るな目線
「ず、ずっとここにいたわよ。」
無理だ。嘘にしか聞こえないわよ。ぎゅっと花梨ちゃんが手を握ってくる。どうしよう、どうしよう……!
「う、嘘つくな。俺はさっきまでここにいたんだ。ほんの数秒廊下にいただけだ。なのに、何でここにいるんだ……。」
決めた!もうこれしかない!
「花梨ちゃん。」「直人になら言ってもいいんじゃない?」
直人ならきっと、私たちの話を信じてくれるはずよ!
「直人を……し、信じる?」「信じる!!」
さっきのこともあるけど、やっぱり大切な友達に嘘つきたくないわ!
「な、直人!」「話すことがあるの。落ち着いて聞いてほしい。」
大丈夫かな?声が震えてるし。
「私から話そうか?」「大丈夫。私のことだもん。自分でしっかり話さなきゃ。」
花梨ちゃんの、あの目なら大丈夫だ。きっと大丈夫。
「私には、私たちには秘密があるの。」「ひ、秘密……。」「私は……魔法使い……なの。」「ま、魔法使い?」「お前が……魔法使いなんて……。」
笑ってる、あいつ、笑ってる!!
「魔法使……まほ……魔法使いなんて……そんなの……そん……存在しないだろ!!」
笑いすぎ!もう耐えられない!
「花梨ちゃん!!見せてやって!!」「え……見せてやるって何を……?」「魔法に決まってるでしょ!そうね……直人を地面から30㎝浮かせて、そこから一気に手を離すって言うのはどう?」「え……。」
もう!うじうじしてないで!早く!
「何だよ、出来るならやってみろよ!」
プツン。心の中で何かが切れた。
「は?出来るもんね!!花梨ちゃん早く!!」
すぐに直人が浮いた。
「わっ!」「さすが花梨ちゃん!」「お、下ろしてくれーー!」「こ、こ、怖かった……。」
ふん!バカにするからよ!でも、佳凛ちゃんが伸ばした手を、直人がよけた時、思わず声が出ていた。
「直人!もう何もしないわよ。だから避けないであげて。」「直人。さっきはごめんね。でも本当だって分かって欲しくて。」
花梨ちゃんもすぐに謝る。直人は笑った。
「このこと、誰かに言っちゃいけない感じ?」「出来れば……その……言わないでほしいなって。」「大丈夫!俺を信じろ!!」
その笑顔を見た時、落ちた、と思った。あ、私じゃないわよ?花梨ちゃんが、恋に落ちたってね。
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登場人物紹介

白浜花梨

クラスでは目立たないポジ。図書委員で本が大好き。

谷口るな

花梨の友達で、挨拶委員会。しっかり者の頼れる存在!

東山星

学校中の人気者。可愛くて優しい!

吉田直人

スポーツ万能だか、勉強はあんまり。元気でうるさいポジ。

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