第15話(最終回) 魔法の本を開くとき

文字数 1,317文字

「え……?花梨ちゃん?どこ行ったの?」
さっきまで目の前にいた花梨ちゃんの姿がどこにも見えない。それにしても、さっきの光は何?私は持っている本をまじまじと見つめる。花梨ちゃんも光ってたけど、この本も負けないぐらい光ってた。この本に秘密が……?
「星ちゃん!!花梨ちゃん見なかった?」
「え?花梨ちゃん?」
「おい!見なかったか聞いてるんだ!」
校舎の方から、焦ったようにるなちゃんと直人が走ってきた。私がどう説明しようか迷ってる間に、るなちゃんが私の手元に視線を落とした。
「あ!これ!」
「これ?花梨ちゃんがくれたの。何の本……。」
「それ貸して!」
私の言葉を遮って、るなちゃんが私の手から本を奪い取った。そのままパラパラとページをめくり、視線だけを動かす。そして本を手元から落とした。顔は真っ青だ。
「大丈夫か?何が書いてあったんだ?」
一人だけ状況が読めない私。でもとにかく、花梨ちゃんに何かあったことだけは分かった。直人はなかなか答えないるなちゃんを見て、本を拾い上げる。そのまま読み進めるが、読むにつれて顔が青くなっていく。もう!何が起こってるの!!
「貸して!!」
直人の手から本を奪い取り、目を通す。
(以下の家系図は魔法を使えるものである。)
白浜の文字が四角で囲われ、ずっと家系図が続き、その下に花梨ちゃんの名前。そこから横に線が伸び、魔法を移したと書いてあった。その先には……。
「私?」
私に魔法が移されたってこと?ん?どういうこと?分かんない!直人とるなちゃんを見ると、るなちゃんが膝から崩れ落ちた。
「るなちゃん!?」
「おい、大丈夫か!?」
るなちゃんはただただ首を横に振った。それから何度も言葉を詰まらせて一文字ずつ話す。その言葉を繋げたら……。
「花梨ちゃんは死んだ?」
私の声に反応するように、本が光り出す。何もなかった白いページに映像が浮かんだ。花梨ちゃんだ!映像が動き出す。花梨ちゃんが最初に魔法を使ったドッジボールの時のこと。その後この本で事実を知った花梨ちゃんとるなちゃん、それから後からこれを聞いた直人のこと。私と直人が話しているのをこっそり二人が聞いている時のこと。るなちゃんが倒れて、その後必死で対処法を探す花梨ちゃんのこと。対処法を知った後、るなちゃんと直人を救うために私を選んだことと花梨ちゃんの思いのこと。そしてさっきの私に魔法を移した時のこと。まるで映画みたいに流れていく。でもそれは映画じゃない。だって花梨ちゃんは本当に生きていたんだもん!るなちゃんが泣き崩れる。でも私は泣かない!花梨ちゃんに託されたこの魔法で皆を幸せにするんだ!!
「るなちゃん、直人……花梨ちゃんの遺志を継ぐ手伝いをしてくれない?」
「え?」
るなちゃんは涙に濡れた顔をあげた。
「継がなくちゃ!この魔法と思いを。」
「やるに決まってんだろ!」
直人は私の手をとる。るなちゃんの手もとって、三人で円になる。そして思いを一つにした。花梨ちゃんの思いを必ず忘れないってね。

最後までご愛読ありがとうございました!これからはおまけを2本投稿した後、あとがきを投稿させていただき、この本を終わりにしようと思います。(おまけも後書きも今まで通り毎週金曜日に投稿します。)
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登場人物紹介

白浜花梨

クラスでは目立たないポジ。図書委員で本が大好き。

谷口るな

花梨の友達で、挨拶委員会。しっかり者の頼れる存在!

東山星

学校中の人気者。可愛くて優しい!

吉田直人

スポーツ万能だか、勉強はあんまり。元気でうるさいポジ。

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