第14話 花と星、浜と山

文字数 1,221文字

もう無理……。膝に手をつく。息があがる。足が痛い。学校中を走り回り、あの人を探す。だけど、どこにもいない。
「どこにいるの……。」
私は肩から下げたバッグから、魔法の本を出す。表紙に触れて目を閉じ、心の中で願う。どうかあの人のいる場所を私に教えて。
ペラペラペラ。
はっと目を開けば、本のページがめくられていく。本が一番後ろのページを開いた。そこに文字が綴られる。
(魔法の利用の手引き)
手引き?ちょっと戸惑う気持ちを抑えつつ、読み続ける。
(瞬間移動魔法は人のことを思い浮かべるだけで良い。ただし、綺麗に着地することは難しい。)
難しい……。でもどこにいるか分からないし、時間がない!!何としてでも行かなくちゃ!そっと心の準備をして、目を閉じた。
星ちゃんのところへ!
「きゃ!あんた何なの!?」
痛……。何かにぶつかった。ぶつかった後、床に尻もちをついた感覚はある。恐る恐る目を開けると、私の一番探していた人がそこにいた。
「星ちゃん!!」
星ちゃんは私を見ると、慌てたように顔を変えた。いつもの笑顔に。
「あれれ?花梨ちゃん?ごめんね、ぶつかっちゃったね。」
声のトーンが明らかに違う。さっき聞いた方が多分本当なんだろう。いつもと比べると低くて、直人と話していた時もこんな感じだった。
「どこか痛くない?」
星ちゃんは気遣うような目線を、私に向けた。星ちゃんが私をいじめていたことを知ってから、そんなに時間は立ってない。だから、まだまだ星ちゃんと話すのは怖い。でも、今は時間がない。
「星ちゃん。突然ごめん。この本あげる。」
「え?何この本……。」
「持ってて。」
私は本を無理矢理星ちゃんに押し付けた。ふう。これでもう安心。後ちょっと私が魔法をかければ、るなちゃんも直人も救われる。この魔法もずっと生き続けるんだ。私は星ちゃんから距離を取った。戸惑いを隠せないような星ちゃんを、一直線に見つめる。
「私の願いを3つ聞き入れ、魔法を本に宿せ。」
「わ!」
星ちゃんが持っていた本が今までで一番強い光を放ちだす。同時に私も光始めた。私は大声を張り上げた。
「るなちゃんと直人を助けること。」
自分から出ている光が、小さな丸い光を作り出し、宙に浮かせる。
「魔法の本にある、魔法の二か条を廃止すること。」
同じように丸が飛び出し、さっきの丸の隣に並んだ。
「そして、本に戻った魔法が星ちゃんを次の相手として選ぶこと。」
ありえない程の光が私を包み込む。眩しさに閉じた目を、私がもう一度開くことはなかった。

魔法を人に移す方法
一、魔法を捨てる時と同じように、本に魔力を戻す。(私の願いを3つ聞き入れ、魔法を本に宿せと言う。)
二、願いの3つのうち、2つは自分の好きな願い事をすること。
三、最後の願いで、次の魔法を引き継ぐ相手を決めること。
尚、魔法を移す前に、移そうと思っている人に魔法の事を話すと、魔法の二か条に反するため、気を付けること。

※次回最終回です。
※最終回後は、何本かおまけを投稿する予定です。
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登場人物紹介

白浜花梨

クラスでは目立たないポジ。図書委員で本が大好き。

谷口るな

花梨の友達で、挨拶委員会。しっかり者の頼れる存在!

東山星

学校中の人気者。可愛くて優しい!

吉田直人

スポーツ万能だか、勉強はあんまり。元気でうるさいポジ。

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