第11話 本に隠された真実

文字数 1,481文字

壊れた扉の隙間から、書庫の中に入り込む。中には作業服っぽいものを着た男の人がいた。男の人はいきなり入ってきた私に驚いたように目を瞬く。
「ど……どうなさいました?」
とにかく時間がない。るなちゃんが倒れ、直人に私の魔法が関係してる可能性があると言われて、すぐに図書室まで駆けてきたのだ。るなちゃんを一刻も早く助けたい。私は書庫の鍵を突きだした。
「ここの関係者です。いったん休憩なさってください。」
「関係者?制服着てますよね?関係者には見えないですけど?」
あぁー!めんどくさい!時間がないのよ!私は怒りに震える拳を必死に抑える。落ち着け!あっちは何にも知らない!私がここで怒ったら理不尽極まりない!
「すいません。どうしても欲しい本があって……。一冊だけなんですが、頂けませんか?」
「古い本なら処分する予定なので、構いませんよ。」
「ありがとうございます!」
私は思いっきり作り笑顔を向ける。何とか早く本を貰うためだ。るなちゃんを助けるためだ。自分に言い聞かせ、暗い気持ちとは真逆の明るい笑みを浮かべる。
「どの本ですか?関係者以外立ち入り禁止なんです。」
「あー、そうですよね。あっちの奥の……。」
しばらく同じような会話が続く。そしてやっとあの魔法の本が私の手元にやって来た。
「ずいぶん古いほ……。」
「ありがとうございましたー!」
最後まで言葉を聞かずに、私は駆け出した。

「開け!」
カチャ。
取っ手に手をかける。開いた!扉を開けて、理科準備室に入る。鍵がかかっていたけど、魔法のお陰で扉を開けることに成功した。パイプ椅子を出し、一人で座る。そして、本を開いた。
「うっ……。」
すごい光に思わず目を押さえる。光が収まって本を覗くと、そこには文字が綴られていく。
(ただし、条件がある。)
前ここに来た時も見たこの文。そこに新しい文章が追加されていった。
(魔法の二ヶ条に従うこと。)
魔法の二ヶ条?
(一、魔法で人の心を操ってはならない。)
(一、魔法を他の人に見られる、または他の人に魔法使いであることを話す。この二つの行為をしてはならない。)
血の気が引くのが分かった。るなちゃんは、私が魔法を使っているところを見たし、直人も私の話を聞いている。私はこの条件を破ってる……。不安と恐怖で体が震えてきた。その気持ちに追い討ちをかけるように、本に文字が綴られる。
(破ったものにはそれ相応の罰を与える。)
罰?それって、私たち一族が100年魔法を使えなかったみたいに?その罰って何?その気持ちに答えるように文字が綴られた。
(一、100年の魔法の使用を禁じる。)
(一、魔法を見た人、魔法を知った人に何らかの罰を与える。最悪の場合は死罪となる。)
シザイ?死罪……。死んで罪を償うこと、だよね?るなちゃんと直人は……死ぬの?死ぬ……。力が抜けて、イスにぐたりともたれかかる。二人は死ぬんだ。私のせいで死ぬんだ。もうどうしようもないの?助けて。「助けて!!」
暗い空間に叫び声が吸い込まれていく。涙で潤んだ世界で、パラリと本のページがめくられた。
(一つだけ逃れられる方法がある。)
逃れられる方法。その言葉に、自分でも驚く程素早く体が反応した。目の前にある本に、入りそうな勢いで前のめりになる。
(それは自分の命を絶つことである。)
「え……。」
思わず声が出ていた。頭が真っ白になった。私の命を絶つこと。自分が死ぬ。つまりそれって、るなちゃんと直人を殺すか、自分が死ぬか、っていうこと!?クイズにでもあるような「究極の選択」みたいな感じだけど、それがリアルになるなんて……。どうすることも出来ず、ただイスに座っていた。
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登場人物紹介

白浜花梨

クラスでは目立たないポジ。図書委員で本が大好き。

谷口るな

花梨の友達で、挨拶委員会。しっかり者の頼れる存在!

東山星

学校中の人気者。可愛くて優しい!

吉田直人

スポーツ万能だか、勉強はあんまり。元気でうるさいポジ。

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