第18話 彼女の居場所

文字数 379文字

「入ります」「入るぞー」
 男二人の声がしてドアが開かれる。カーテンの隙間から覗き見る音色。ドキドキする。今まで生きてきてこんなスリリングな体験は初めてだ……。自分の吐く息で揺れるカーテンが溜まらなく緊張感を煽る。

「あれ? いないな? 便所か?」

 もう一人に話すような類の言葉とは違い、確認するような口ぶりだ。しかしその言葉の持つ意味は『ここに私が居ることは肯定されている』ということだ。そうなれば隠れている方が怪しい。
 しかしこのタイミングで出て行くわけにもいかない。

「社長、どうなさいますか?」

 先程とは別の声だ。『社長』と呼んだ……ここは社長宅? 『どこかの社長に身体でも売ったのだろうか?』何も思い出せない……。

(私はどうせ一文無しだ……泥棒でもするか、身体でも売るかくらいしか、残りの借金を返せる気がしない)


 音色には再び邪な想いが沸き上がっていた。
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