第16話

文字数 414文字

 一颯の家に着くと、またしても二人掛かりで音色を運び込む。

「私は異世界から転生してきた王女ですの。このお礼は城に戻ったのならお返ししますわ」

 どんな夢を見ているのだろうか? 音色は眠ったままそう呟いた。



「だ、そうだ……二割どころか、異世界のお宝が手に入るぞ、きっと。良かったな」

 瑞稀が皮肉る。一颯は苦笑いを浮かべると、『お疲れさん』とその部屋を後にする。
 瑞稀はベッドに横になった女に毛布を掛けると、眼鏡をはずしてあげる。眼鏡を側のサイドテーブルに置くと、女の寝顔を見る。

 ドキリ……瑞稀の胸は何かに大きく打ち付けられた。女の寝顔はオレンジ色のルームライトでほのかに照らされ、美しく輪郭を投影する。
 その光と影が編み込む幻想的なその濃淡が、女性の美を司っているように思えた。

 思わず瑞稀は見惚れた……。


 そして静かに部屋を後にした。玄関からどこにいるか分からない一颯に向かって声を掛ける。

「一颯ぃ、また明日の朝むかえにくるよ」
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