第26話
文字数 884文字
車を走り出させたらすぐにカーナビを通じて電話が鳴る。瑞稀は画面をタッチすると会話が通じる。少し年配の感じの声がする。
「おはようございます。出発より……少し遅いですかな? 何かありましたか?」
車の位置をGPSで追っているのであろうか、管理がすごい。
「夜光 さん、おはようございます。少しイレギュラーが起きたが問題ありません、社長は予定通りのスケジュールで。私は予定変更で社長を送り届けたら、少し出ます」
「昨日のことはお聞きいたしました。さてその穴埋め はいかがされますか?」
「代わりの穴 を見つけました。後先程伝えた件もよろしくお願いします」
「かしこまりました。それでは到着時を……」
夜光と瑞稀はタイムハック(* 互いの時刻を合わせること)を行い、切電した。静かになった車内に一颯のせせら笑いが伝播する。
「瑞稀も言うんだな、そんな下品なジョーク……」
「『穴』を埋めるのは『男』の役目ですから……」
チラッとルームミラー越しに音色を見る。会話の意味が解っていないようで外を眺めて目を輝かせている。外はいつもと変わらない景色だ。それを変わってみせるのは高級車……『見ているもの』ではなく『見え方』が変わるのである。
しかし音色は彼らの話を聞いていた。
(何よこの女性を侮辱するセクハラ発言、セクハラどころか暴力発言よ、やっぱりこの人たち、悪党決定よ!)
会社に到着したようだ。地下駐車場に車をつけると、待っていた男がドアを開ける。
「おはようございます社長……おはようございます、お嬢さま」
男は音色の存在に一呼吸の間を開けたが、落ち着いた挨拶は忘れない。その声から音色は先程の電話の男だと判断する。予想通り一颯や瑞稀よりも少しだけ年上のようだ
「おはようございます、夜光さん」
音色が頭を下げて名前を呼ぶと、夜光は少しだけ口角を上げてそれに応えた。社長の一颯は座席から立ち上がろうとしたのを止めて、振り向いて音色の顔に食い入る。驚きと感嘆が入り混じった表情であった。
一颯は瑞稀とバックモニター越しにアイコンタクトを取ると、車を降りて夜光とガラスの自動ドアの奥へと消えて行った。
「おはようございます。出発より……少し遅いですかな? 何かありましたか?」
車の位置をGPSで追っているのであろうか、管理がすごい。
「
「昨日のことはお聞きいたしました。さてその
「代わりの
「かしこまりました。それでは到着時を……」
夜光と瑞稀はタイムハック(* 互いの時刻を合わせること)を行い、切電した。静かになった車内に一颯のせせら笑いが伝播する。
「瑞稀も言うんだな、そんな下品なジョーク……」
「『穴』を埋めるのは『男』の役目ですから……」
チラッとルームミラー越しに音色を見る。会話の意味が解っていないようで外を眺めて目を輝かせている。外はいつもと変わらない景色だ。それを変わってみせるのは高級車……『見ているもの』ではなく『見え方』が変わるのである。
しかし音色は彼らの話を聞いていた。
(何よこの女性を侮辱するセクハラ発言、セクハラどころか暴力発言よ、やっぱりこの人たち、悪党決定よ!)
会社に到着したようだ。地下駐車場に車をつけると、待っていた男がドアを開ける。
「おはようございます社長……おはようございます、お嬢さま」
男は音色の存在に一呼吸の間を開けたが、落ち着いた挨拶は忘れない。その声から音色は先程の電話の男だと判断する。予想通り一颯や瑞稀よりも少しだけ年上のようだ
「おはようございます、夜光さん」
音色が頭を下げて名前を呼ぶと、夜光は少しだけ口角を上げてそれに応えた。社長の一颯は座席から立ち上がろうとしたのを止めて、振り向いて音色の顔に食い入る。驚きと感嘆が入り混じった表情であった。
一颯は瑞稀とバックモニター越しにアイコンタクトを取ると、車を降りて夜光とガラスの自動ドアの奥へと消えて行った。