第12話 豹変
文字数 1,469文字
バカな……。
いったい何が起きている?
これもリッパーの仕業だというのか?
本日、都内で、現在確認されているだけでも60万人以上が死亡した。
災害が起きたわけでもない。
戦争が始まったわけでもない。
原因不明の突然死が大量発生したのだ。
こんなことができるのはリッパーしか思い付かない。だが、今までのリッパーのやり方とは明らかに違う。
都内に送り込んだ捜査員から連絡がない。殺されたと見るのが妥当だろう。
しかも、現場周辺の監視カメラがすべて破壊されてしまったため、テレビやネットで報道されている以上のことが分からない。
どうやら、被害者は男性の方が圧倒的に多いようだ。それから、自動車や列車の運転中に突然死した者もいたため、深刻な二次災害も起きている。
犯人がリッパーかどうかはさておき、これは断じて自然災害などではない。ましてや神の裁きなどあり得ない。
人為的な殺戮だ。
現在は殺戮は止まっているようだが、いつ再開されるか分からない以上、新たな捜査員を送るわけにもいかない。
だが、分かったこともある。
監視カメラが壊された場所から、殺戮者の能力が及ぶ範囲が半径300メートル程度だと割り出すことができた。
殺戮者は半径300メートル内の男性(?)と監視カメラを殺傷・破壊しながら都内の人口集中地区を約30キロメートルほど進んだ。
監視カメラが破壊されていく時間差から、移動速度は時速10〜15キロメートル程度だということも割り出せた。
交通手段は自転車か。
とにかく情報が足りない。
テレビやネットでは不確定情報が多過ぎる。
警察の動きも鈍い。所轄の警察からも多数被害者が出ている。加えて、いつ殺戮が再開されるか分からないとなれば、迂闊に動かすこともできない。
こうなれば、私自らがヘリに乗って上空から捜査するか……。
そんなことを考えていたところで、女性捜査員から通信が入った。
『N.G、こちらM2です。今、殺害があった現場付近に来ています』
予想外の報告に私は眉をひそめた。
「M2、無茶はしないようにと指示しておいたはずだ」
『はい、ですから、被害者のほとんどが男性ですから、わたしならリスクが低いと判断しました』
「女性の被害者も少なくはない。それに二次災害もある」
『危険は承知の上です。わたしの他にも、M3とM5が現地調査を志願しています』
Mチームは女性のみで構成された捜査部隊だ。隊員数は5名。そのうち3名が、交通機関が麻痺した現状でも現地に移動できる位置にいる。
正直、彼女たちの申し出はありがたいが、これ以上優秀な捜査員を失いたくはないという気持ちもある。
今回の殺戮行為で男性捜査員3名を失った。いずれも屈強で聡明な捜査員たちが、連絡をよこす間もなく殺害されたのだ。瞬殺だ。
殺戮者の目的が不明である以上、彼女たちが次の犠牲者にならないという保障はない。今度は徹底して女性を殺戮し始めるかもしれない。
しかし……
『N.G、次の殺戮がいつ始まるか分かりません。情報を集めるなら今しかないかもしれません』
M2の言う通りだ。
リスクはあるが、今は彼女たちに頼るのが最善策だ。
「分かった。ただし、私が撤退の指示を出した場合、何を置いてもすぐに撤退するように。M3とM5には私から指示を出しておく。速やかに調査を開始してくれ」
『了解しました!』
通信が終わり、薄暗い室内に静寂が戻る。
なんということだ…。
リッパーが狂ったのか?
それとも別の能力者が現れたのか?
どちらにしても、部下を殺されて平静でいられるほど私は人間離れしてはいない。
世界探偵の名にかけて、お前には必ず相応の報いを受けさせる。
いったい何が起きている?
これもリッパーの仕業だというのか?
本日、都内で、現在確認されているだけでも60万人以上が死亡した。
災害が起きたわけでもない。
戦争が始まったわけでもない。
原因不明の突然死が大量発生したのだ。
こんなことができるのはリッパーしか思い付かない。だが、今までのリッパーのやり方とは明らかに違う。
都内に送り込んだ捜査員から連絡がない。殺されたと見るのが妥当だろう。
しかも、現場周辺の監視カメラがすべて破壊されてしまったため、テレビやネットで報道されている以上のことが分からない。
どうやら、被害者は男性の方が圧倒的に多いようだ。それから、自動車や列車の運転中に突然死した者もいたため、深刻な二次災害も起きている。
犯人がリッパーかどうかはさておき、これは断じて自然災害などではない。ましてや神の裁きなどあり得ない。
人為的な殺戮だ。
現在は殺戮は止まっているようだが、いつ再開されるか分からない以上、新たな捜査員を送るわけにもいかない。
だが、分かったこともある。
監視カメラが壊された場所から、殺戮者の能力が及ぶ範囲が半径300メートル程度だと割り出すことができた。
殺戮者は半径300メートル内の男性(?)と監視カメラを殺傷・破壊しながら都内の人口集中地区を約30キロメートルほど進んだ。
監視カメラが破壊されていく時間差から、移動速度は時速10〜15キロメートル程度だということも割り出せた。
交通手段は自転車か。
とにかく情報が足りない。
テレビやネットでは不確定情報が多過ぎる。
警察の動きも鈍い。所轄の警察からも多数被害者が出ている。加えて、いつ殺戮が再開されるか分からないとなれば、迂闊に動かすこともできない。
こうなれば、私自らがヘリに乗って上空から捜査するか……。
そんなことを考えていたところで、女性捜査員から通信が入った。
『N.G、こちらM2です。今、殺害があった現場付近に来ています』
予想外の報告に私は眉をひそめた。
「M2、無茶はしないようにと指示しておいたはずだ」
『はい、ですから、被害者のほとんどが男性ですから、わたしならリスクが低いと判断しました』
「女性の被害者も少なくはない。それに二次災害もある」
『危険は承知の上です。わたしの他にも、M3とM5が現地調査を志願しています』
Mチームは女性のみで構成された捜査部隊だ。隊員数は5名。そのうち3名が、交通機関が麻痺した現状でも現地に移動できる位置にいる。
正直、彼女たちの申し出はありがたいが、これ以上優秀な捜査員を失いたくはないという気持ちもある。
今回の殺戮行為で男性捜査員3名を失った。いずれも屈強で聡明な捜査員たちが、連絡をよこす間もなく殺害されたのだ。瞬殺だ。
殺戮者の目的が不明である以上、彼女たちが次の犠牲者にならないという保障はない。今度は徹底して女性を殺戮し始めるかもしれない。
しかし……
『N.G、次の殺戮がいつ始まるか分かりません。情報を集めるなら今しかないかもしれません』
M2の言う通りだ。
リスクはあるが、今は彼女たちに頼るのが最善策だ。
「分かった。ただし、私が撤退の指示を出した場合、何を置いてもすぐに撤退するように。M3とM5には私から指示を出しておく。速やかに調査を開始してくれ」
『了解しました!』
通信が終わり、薄暗い室内に静寂が戻る。
なんということだ…。
リッパーが狂ったのか?
それとも別の能力者が現れたのか?
どちらにしても、部下を殺されて平静でいられるほど私は人間離れしてはいない。
世界探偵の名にかけて、お前には必ず相応の報いを受けさせる。