第13話  調査報告

文字数 1,267文字


都内、特に殺戮被害のあった地区の周辺は大空襲さながらの混乱を極めていた。

公共交通機関は停止。
首都高速は封鎖。
一般道は大渋滞を起こし、事故も多発していた。

救助と避難がまるで追いつかない。
警察や自衛隊が危険を侵して活動する中、国会議員たちはいち早くヘリで脱出していった。
財界人などの富豪もそれに続く。

遺体のほとんどは放置せざるを得ない状態であり、早くも死臭を嗅ぎつけたカラスが群がってきている。

街中には、赤ん坊から高齢者に至るまで、男という男が無残に倒れていた。
そんな中、我先に逃げ出す女性、愛する者にすがりつく女性、放心して立ち尽くす女性、腹を抱えてうずくまる女性。

ドローンを飛ばして撮影した現地の様子は、まさに地獄絵図だった。

だが、救助には構っていられない。
私の役目は、なんとしてでも殺戮者の正体を突き止め、第二の悲劇を防ぐことだ。

殺戮が停止した地区の周辺には20機のカメラ付きドローンを放ってある。

上空から怪しい人物がいないか探すが、そう簡単に見つかるはずもない。
いっそのことドローンを破壊してくれれば位置を割り出せるのだが、相手もバカではないらしい。

現場周辺の監視カメラを壊して回ったことといい、冷静な判断をするだけの知性はあるようだ。ただの狂人ではない。

『N.G、新たに分かったことがあるので報告します』

捜査員の一人、コードネームM2から通信が入った。

「なんだ?」

『まず女性の被害者についてですが、被害者の多くが妊娠中の女性であることが分かりました』

「妊娠中の…?」

『はい、しかも女性自身は殺されておらず、お腹の中の子供だけが殺害されるというケースが多発していました』

「子供を……まさか!」

『まだ確定的ではありませんが、おそらくは生まれる前の男児を狙ったものと思われます。わたしが調査した限りではありますが、女児を妊娠した女性は被害を免れてました』

「なるほど、要するに犯人の狙いは兎にも角にも男性だったわけだ」

それにしても胎児まで狙うとは、殺戮者は男を根絶やしにでもしたいのか?
いや、このやり方で根絶やしは無理だ。単に男に恨みがあるだけか?

動機は分からないが、殺戮者が女性である可能性が出てきたな。
殺戮現場で一人だけ男性が生き残っていたら不自然だが、女性なら自然と周囲に溶け込める。

もちろん女装という可能性もあるが、だとしても見た感じは女性のような姿をしているはずだ。

その後、同じく女性捜査員のM3とM5からも報告があった。

M3によると、女装した男性も他の男性と同じように殺害されていたとのことだ。
どう見ても女性にしか見えない見事な完成度であっても、だ。

どうやら殺戮者の能力は見た目に関係なく男性を判別できるらしい。

逆に性転換した元男性は被害を免れていたようだ。

M5には死因を探ってもらった。

警察の許可を得て緊急で数人の司法解剖をおこなった結果、全員が心臓を真っ二つに切断されていた。
当然、即死だ。

そして、切断……。

やはり犯人はリッパーなのか?
それともリッパーと同じ能力を持つ者がいるのか?

それとも……
リッパーの能力が奪われた?



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