第15話

文字数 5,076文字

 9月24日火曜日
25回戦~ZOZOマリンスタジアム~埼玉西武16勝8敗1分
埼玉西武 0 5 2 0 0 1 4 0 0 12
ロッテ  0 0 1 1 0 1 0 1 0 4
勝 ニール12勝1敗  敗 二木7勝10敗
本 山川43号2ラン

運命の日となるのか、ただ勝利を欲し、その先の栄冠にたどり着かんことに。

2回表ライオンズは、マリーンズ先発二木投手から、一死後外崎選手がレフトへヒットを放ち出塁すると、すぐさま二塁への盗塁を成功させた。
山川選手が四球を選び、一死一・二塁とチャンスを拡大し、栗山選手がセンターへタイムリーヒットを弾き返し、1-0と先制した。
木村選手が死球を受けて一死満塁となり、金子侑選手はレフトへタイムリーを運び2-0と追加点を奪うと、なお満塁で、秋山選手がセンターオーバーの満塁走者一掃の3点タイムリー3ベースヒットを放ち、5-0と一気に畳みかけ、二木投手を早くもノックアウトした。
ライオンズベンチは大いに盛り上がり、スタンドに詰めかけたライオンズファンのフラッグも揺れ続ける先制劇だった。

3回表、マリーンズ2番手涌井投手から、この回先頭の外崎選手がセンターへ2打席連続ヒットを打ち出塁すると、山川選手が涌井投手のストレートを完璧に捉えた。
レフトスタンドへ飛び込む第43号2ランホームランを運び、7-0と大きくリードを広げたライオンズ。

ライオンズ先発ニール投手は、2回までパーフェクトピッチング。
3回裏、藤岡選手にライトへタイムリー2ベースを打たれると、4回裏には一死一・二塁からレアード選手にセンターへタイムリーを打たれ、7-2と追い上げを受ける。
なおも一死満塁とピンチが続いたニール投手だったが、田村選手をサードゴロダブルプレーに打ち取り、マリーンズに傾きかけた流れを断ち切った。

試合は後半に入り6回表、木村選手がレフトへのヒットで出塁し、金子侑選手が送りバントを成功させて一死二塁と涌井投手を攻め、秋山選手がライトへタイムリーを弾き返し、8-2と大きな追加点をあげたライオンズ。

6回裏、一死三塁から中村奨選手のサードゴロの間に1点を失ったニール投手だったが、6回を投げ切り3失点と、大一番でもいつもと変わらずに、しっかりと試合を作った。

7回表、マリーンズは3番手に東條投手が登板した。
ライオンズは二死から栗山選手、木村選手が連続ヒットで出塁し、金子侑選手は四球でつなぎ、二死満塁とチャンスを作ったところで、マリーンズはチェン投手に投手交代。
ここで秋山選手は押し出しの四球を選び、さらにチェン投手の投球を田村選手がパスボールしてしまい、田村選手の本塁送球を捕球したチェン投手が、今度は二塁へ悪送球してしまい、満塁の走者3人がすべて生還するという、非常に珍しい状況となり11-3、
なおも秋山選手を三塁において、源田選手はセカンドへのゴロを打つと、気迫のヘッドスライディングで一塁を駆け抜け、タイムリー内野安打となり12-3と大量リードを奪い、勝負はほぼ決した。

7回裏を、ライオンズは平良投手と小川投手の投手リレーで無失点に抑えた。
そして8回裏一死、場内アナウンスで小川投手から平井投手への投手交代が告げられたその瞬間、ソフトバンクが楽天に敗れたという情報が入り、レフトスタンドのライオンズファンを中心に大きく湧いて、この時点でライオンズの優勝マジックは1になった。
平井投手は藤岡選手のタイムリーで1点を失うも、8回終了時点で12-4と8点リード。

9回裏、歓喜の瞬間が目前に迫る中、投手交代を待つマウンドに、今シーズン初めて辻監督自ら赴き、増田投手に思いを込めて白球が手渡された。
増田投手・森選手のバッテリーは、荻野選手をレフトフライに打ち取り一死、鈴木選手もレフトフライに打ち取り二死。
あと一死、マーティン選手のサードファウルグラウンドへ打ち上げられた飛球を、中村選手が目測を誤り捕球できなかったが、逆にライオンズの選手たちの肩の力が抜け、守るライオンズナインもベンチも笑顔に。
そんな中、増田投手は2ストライクから150キロの高めのストレートでマーティン選手から空振り三振を奪い、ガッツポーズをした瞬間、最後のボールを捕球した森選手が増田投手に抱きつき、試合終了。
12-4で勝利した埼玉西武ライオンズの、2年連続23度目のパ・リーグ優勝が決定した!!
それぞれの守備位置からナインが、ベンチから選手や首脳陣がマウンドに一斉に集まってきて、歓喜の輪ができた。
少し遅れてその輪の中心にやって来た辻監督。
さあ、お待ちかねの胴上げだ。
千葉の夜空に、辻監督が10度選手たちの手によって宙に舞い、ここに2019年のペナントレースは、最高の形で決着したのだった。


7月9日時点で、首位ソフトバンクに最大8.5ゲーム差を付けられての逆転優勝を飾ったライオンズ。
8.5ゲーム差以上付けられての逆転優勝は、2016年日本ハムの最大11.5ゲーム差を逆転して以来で、ライオンズでは、1998年に最大10ゲーム差を逆転して以来、21年振りの逆転優勝となった。


今シーズンのライオンズは、チーム得点数が750得点を超えており、2年連続で750得点以上を上げての優勝。
これは今シーズンのライオンズが、史上初めてだそうだ。


この試合に先発して勝利投手となったニール投手は、何と11連勝で今シーズン12勝目。
郭泰源さんの10連勝を抜いて球団記録を樹立したニール投手は、1964年スタンカさん、2015年マイコラス投手、2018年ボルシンガー投手と並んで、外国人最多タイのシーズン11連勝を達成した。


またライオンズは、9月11日にシーズン130試合目で初めて首位に立ち、優勝までの首位日数はわずか11日。
これは、2008年の巨人に並ぶ最少日数での優勝となった。


なおライオンズのチーム防御率は、昨シーズンに続き今シーズンも4点台。
防御率4点台で優勝したチームは、1978年ヤクルト、1980年近鉄、1985年阪神、2000年ダイエー、2001年近鉄、2004年西武、2018年広島、2018年西武で、このうち防御率がリーグ最下位での優勝は、2001年の近鉄と昨シーズンのライオンズに続いて3度目で、ライオンズは史上初めて、2年連続防御率最下位での優勝という、若干複雑ではあるが、よく勝ったと思う。


チームを見事に大逆転優勝に導いた辻監督は、監督就任3年間で2位、1位、1位で2連覇を達成した。
ライオンズで連覇を果たした監督は、1954年、1956年~1958年4度優勝の三原脩さん、1982年、1983年、1985年3度優勝の廣岡達朗さん、1986年~1988年、1990年~1994年8度優勝の森祇晶さん、1997年、1998年2度優勝の東尾修さんに次いで、球団では5人目の栄誉となった。
また辻監督は今年12月で61歳で、60代で連覇したのは、1995年60歳、1996年61歳の仰木彬さんと並ぶ最年長記録なのだそうだ。



正直、実感がすぐに湧いてこないというか、未だに信じられない感覚が強い。
8月の中盤までは、今シーズンは優勝は無理だろうなという、どこか勝敗を度外視した、ある意味気楽な気分で試合を見ていたことは否めない。
それが中村選手が4番に座った8月後半辺りから、チームの一体感・団結力がみるみる強まっていくのは、テレビで見ていてもヒシヒシと感じたし、実際にピッチャーも安定してきて、投打の歯車が噛み合い、1勝1勝する度に選手たちの目の色や優勝への飢餓感も日増しに増えて、試合を重ねるごとに本当に強いチームになっていき、僕たちファンも含めて優勝できるという気分になることができた。
だから9月に入ってからの最後の1ヶ月間、たかだかテレビで試合を見ながらライオンズの勝利を願うだけの僕だったが、緊張感と、1球1球に対する喜怒哀楽の度合いがどんどん強くなっていった。
文字通り選手たちと一緒に戦っているような錯覚を覚えるほど、心はいつも外野スタンドのライオンズファンたちの中にあった。
今はただ心から噛み締めよう、きっとだんだんと実感が湧いてくるはずだから。
この文章を読んでくださっている同志と呼べるライオンズファンの皆さん、全世界のライオンズファンの皆さん、僭越ながらどうか一緒に喜ばせてください。
やっぱり優勝するって、最高で素晴らしい。
いいぞいいぞライオンズ!! いいぞいいぞライオンズ!!

感動と希望と勝利をありがとうございます、埼玉西武ライオンズ。








 9月26日木曜日
25回戦~楽天生命パーク宮城~埼玉西武11勝14敗
埼玉西武 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
楽天   3 0 0 1 1 0 1 1 × 7
勝 則本昂5勝5敗  敗 松本航7勝4敗
本 浅村33号2ラン 足立2号 佐藤2号

パ・リーグ2連覇を達成したライオンズの、レギュラーシーズン最終戦。
ライオンズは中村選手、栗山選手の登録を抹消し、全試合出場中の秋山選手、山川選手、外崎選手はスタメン出場した。

ライオンズ先発松本航投手は1回裏、辰己選手にタイムリー2ベースを打たれて先制を許すと、浅村選手にも2ランホームランを打たれてしまい、いきなり3点を失う立ち上がりとなった。
中盤に入り4回裏には、一死から足立選手にホームラン、
5回裏には渡邊佳選手に犠牲フライを打たれた松本航投手は、結局5回を投げて5失点で降板となり、ポストシーズンに向けてのアピールとしては、若干物足りないピッチングとなってしまった。

マーティン投手、野田投手が1イニングずつを投げ、8回裏には今井投手が今シーズン初めてリリーフで登板した。
今井投手は代わり端、村林選手、オコエ選手に連続で2ベースを打たれ、あっという間に1点を失ったが、後続は断った。

ライオンズ打線は8回表に、途中出場の佐藤選手が弓削投手からレフトスタンドに第2号ホームランを叩き込み1点を返したが、1-7で敗れた最終戦となった。

なおこの試合、3番センターでフル出場した秋山選手は、2014年9月から続いているフルイニング出場を、5年連続で739試合にまで伸ばした。

また1番ライトでスタメン出場した木村選手は4打席に立ったが、規定打席にあと2打席足りず到達はならなかった。
今シーズンライオンズでは、秋山選手、源田選手、森選手、中村選手、栗山選手、外崎選手、山川選手、金子侑選手の8人が規定打席に到達しており、木村選手が到達していれば、異例の同一チームから9人(スタメン野手全員)が規定打席に到達するというところだったが、残念。


9月の試合、また今シーズンのレギュラーシーズンのすべての試合を消化したライオンズ。
9月は14勝7敗と、8月に続いて大きく勝ち越すラストスパートで、2年連続のパ・リーグ優勝を達成した。
シーズンは、143試合80勝62敗1分 勝率,563。
対戦カード別では、対ソフトバンク12勝13敗、対楽天11勝14敗、対ロッテ16勝8敗1分、対日本ハム14勝11敗、対オリックス17勝8敗、交流戦10勝8敗となった。
チーム打率,265 チーム本塁打174本 チーム得点756点 チーム失点695点 防御率4.35という成績。
他のチーム成績で言うと、チーム安打数1299本 チーム二塁打数229本 チーム塁打数2096塁打 チーム打点数718点 チーム盗塁数134盗塁 チーム四球数556四球 チーム敬遠数23などが、パ・リーグの打撃部門ではNo.1だった。

そしてパ・リーグの個人タイトルでは、首位打者に,329で森選手、本塁打王43本で山川選手が2年連続2度目、打点王123打点で中村選手が4年振り4度目、最多安打179安打で秋山選手が3年連続4度目、盗塁王41盗塁で金子侑選手が3年振り2度目と、打撃部門でライオンズの選手が最高出塁率を除いて、独占する形となった。
特に森選手の首位打者は、キャッチャーでは史上4人目の受賞となり、パ・リーグでは1965年の野村克也さん以来実に54年振りとなる快挙となった。
また、24歳でキャッチャーでの首位打者は、史上最年少での獲得となり、これまた快挙。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み