第1話
文字数 6,983文字
埼玉西武ライオンズを愛してやまない。
さすがに僕の皮膚を切っても、ブルーの血は流れはしないが、野球というスポーツをまだ漠然と認識したに過ぎない幼少期より、この思い、気持ちが変わったことなど一度たりともない。
今年35歳になるおっさんの、ほぼすべての時間を、ライオンズと共に過ごし、ライオンズを見てここまで来た。
そんな僕の、今シーズンにおける埼玉西武ライオンズの戦いを振り返るつぶやきに、わずかな時間でもお付き合いいただければ、幸いに思う。
なお、文中では一部で敬称を略させていただくが、ご容赦いただきたい。
昨年、2018年シーズンは、強力獅子おどし打線が引っ張り、開幕戦に勝利して以来、一度も首位の座を譲ることなく、10年振りのリーグ優勝を見事に成し遂げた。
前回優勝してから丸10年、惜しいシーズンも何度かあったが、本当に長かったというのが正直な感想であり、喜びもひとしおだった。
シーズン序盤に見せた日本ハム戦での0-8から、8回裏・9回裏の2イニングで9得点を奪い、奇跡的な逆転勝利をあげるなど、打線の脅威の粘りから、幾度も劇的な試合・勝利を届けてくれたのは、一ファンとして何度も何度も感動し、勇気付けられた。
そして9月30日、悲願のリーグ優勝を果たすと、クライマックスシリーズでは惜しくもソフトバンクに敗れ、日本シリーズ出場こそならなかったものの、改めて野球は面白いと心から感じられる、達成感のあるシーズンで、充実の秋を迎えることができた。
明けて今年2019年シーズン。
前年の優勝に貢献した、主力野手の浅村選手、炭谷選手がFAでそれぞれ楽天と巨人に、エースの菊池投手がポスティングで大リーグへと移籍し、チームを去ってしまった。
戦力ダウンが懸念される中、ここで開幕一軍の出場選手登録されたライオンズの選手を記しておく。
(投手)
今井
髙橋光
増田
多和田
齋藤大
野田
平井
田村
マーティン
小川
武隈
ニール
ヒース
(捕手)
森
岡田
駒月
(内野手)
水口
外崎
源田
佐藤
山川
中村
(外野手)
栗山
金子侑
木村
鈴木
愛斗
秋山
熊代
以上29名でのスタートとなったわけだが、投手陣に目を向けてみると、開幕先発ローテーションを予定していた、榎田投手、ルーキーの松本航投手、巨人から炭谷選手の人的補償で入団した内海投手が故障や体調不良のため間に合わず、いきなり投手陣の再整備を迫られる中での船出となった。
開幕は敵地福岡に乗り込んでの、ビジターでの3連戦となった。
ライオンズの開幕戦のスターティングオーダーは、
1番レフト金子侑
2番ショート源田
3番センター秋山
4番ファースト山川
5番キャッチャー森
6番セカンド外崎
7番指名打者栗山
8番サード中村
9番ライト木村
開幕投手は多和田
以上の布陣で、強敵ソフトバンクとの戦いに挑んだ。
日本球界屈指のヒットメーカー不動の1番バッター秋山選手を3番に、1番には2016年の盗塁王金子侑選手を据えた新打線。昨シーズン3番打者として打点王を獲得した浅村選手の穴を埋められるのか、セカンドのポジションにコンバートされた外崎選手も含めて注目が集まった。
また扇の要のキャッチャーには森選手がどっかりと座り、打線の中心クリーンアップと正捕手という2つの重責を担えるかにも、注目。
3月29日金曜日
開幕戦~福岡ヤフオクドーム~埼玉西武1敗
埼玉西武 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 4
ソフトバンク 0 1 0 1 2 0 0 0 0 0 1× 5
勝 甲斐野 1勝 敗 ヒース 1敗
本 松田宣1号 山川1号満塁
プロ入り初の開幕投手を務めた多和田投手は、2回裏に松田宣選手に先制ホームランを打たれると、 5回を投げて10安打4失点とリードを許し、ソフトバンク千賀-モイネロの投手リレーの前に、中盤まで完全にソフトバンクペース。
しかし8回表加治屋投手から無死満塁のチャンスを作ると、4番山川選手が一振りで仕留め、起死回生の今シーズン第1号の同点満塁ホームランを放った。
打った瞬間完璧な山川選手の一撃に、鳥肌が立った。
ただ延長11回裏、6番手で登板したヒース投手が一死も取れずに、デスパイネ選手にサヨナラ打を打たれてしまい、4-5のサヨナラ負けで、惜しくも黒星スタートとなってしまった。
ちなみに、ライオンズの選手で開幕戦で満塁ホームランを放ったのは、1994年の伊東勤さん以来で、山川選手の満塁ホームランは実に25年振りだった。
開幕戦での満塁ホームランはプロ野球全体でも、20人目21度目だったが、そのうちチームが敗れたのは、今シーズンの山川選手が史上初という、珍記録となってしまった。
3月30日土曜日
2回戦~福岡ヤフオクドーム~埼玉西武2敗
埼玉西武 0 2 0 2 0 0 0 1 0 5
ソフトバンク 1 0 0 5 0 0 0 0 × 6
勝 ミランダ1勝 セーブ 森1セーブ 敗 今井1敗
本 栗山1号2ラン 柳田1号満塁 山川2号
立ち上がりに1点先制されるも、すぐさま2回表に栗山選手の第1号2ランホームランで逆転。
4回表にも2点を追加して試合を優位に進めるかと思ったのもつかの間、4回裏に柳田選手に満塁ホームランを今井投手が浴びてしまうなど、この回5失点で試合をひっくり返されてしまった。
8回表に山川選手の2試合連続第2号ホームランで1点差まで詰め寄ったものの、そこまでで連敗を喫してしまった。
なお4番で開幕戦から2試合連続でホームランを放った山川選手、これはライオンズでは2004年の和田選手以来の記録となった。
3月31日日曜日
3回戦~福岡ヤフオクドーム~埼玉西武3敗
埼玉西武 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1
ソフトバンク 0 0 0 0 0 2 1 0 × 3
勝 高橋礼1勝 セーブ 森2セーブ 敗 髙橋光1敗
本 中村1号 柳田2号2ラン 上林1号
0-0で迎えた5回表、中村選手がライトテラス席に今シーズン第1号ホームランを放ち先制するも、6回裏に柳田選手に、7回裏には上林選手に一発を浴びてしまった先発髙橋光投手は、7回を投げて3失点と試合は作ったものの、打線が追加得点を奪えずにまさかの3連敗。
昨シーズンも3勝8敗と苦手にしていたヤフオクドームで、開幕カード3連敗スタートと、今シーズンも手こずりそうな印象を非常に受けた3日間だった。
往年のライオンズの大エース西口投手の背番号13を今シーズンから受け継いだ髙橋光成投手、希望と課題の両方が垣間見えた、そんな今シーズン初登板だったように映った。
4月2日火曜日
1回戦~メットライフドーム~埼玉西武1勝
ロッテ 0 0 0 0 0 2 1 1 0 4
埼玉西武 0 0 1 2 2 2 0 0 × 7
勝 ニール1勝 セーブ マーティン1セーブ 敗 涌井1敗
本 山川3号 レアード4号
敵地福岡で3連敗して、本拠地メットライフドームに帰ってきたライオンズ。
チャンピオンシリーズと銘打たれた、本拠地開幕3連戦、仕切り直して再スタート。
3回裏、源田選手のタイムリー2ベースで先制に成功したライオンズは、4回裏には山川選手の第3号ホームランなどで2点追加。
5回裏、6回裏には、2打席連続で満塁のチャンスで森選手が2点タイムリーを打ち、2安打4打点の活躍を見せてくれた。
来日初先発登板となったニール投手は、5回1/3イニングを2失点と試合を作り、初登板初勝利を飾った。
それにしても、やはり本拠地での試合はいいものだ。
平日にもかかわらず、2万7000人の大観衆の応援が選手たちを見事に後押しし、2019年の初勝利をあげた、素敵な夜となった。
4月3日水曜日
2回戦~メットライフドーム~埼玉西武2勝
ロッテ 0 0 3 0 0 0 0 0 0 3
埼玉西武 2 3 0 0 3 0 1 0 × 9
勝 武隈1勝 敗 ブランドン1敗
本 中村奨2号3ラン
1回裏併殺打の間に先制したライオンズは、足も絡めた攻撃でロッテ先発ブランドン投手を攻略し、2イニングで5点を奪い、主導権を握った。
2012年7月以来実に7年振りの先発登板となった武隈投手は、3回表に中村奨選手に3ランホームランを打たれて3点こそ返されたが、5回3失点とゲームメイクし、7年振りの先発白星を手にした。
この武隈投手は、中継ぎのスペシャリストとして長年ライオンズのブルペンを支えた投手で、先発投手としての調整を始めたのは開幕間近の3月と、文字通りの急ピッチでこの試合の登板につなげた。
タイプも方法も全く異なる先発とリリーフの調整、先発からリリーフへの調整の変更はまだ比較的苦にはならないと聞くが、逆のリリーフから先発への転向、しかも実質1ヶ月もない期間での調整は本当に大変だったと思う。
5回裏には中村選手の満塁走者一掃の3点タイムリー2ベースで、追いすがるロッテを引き離したのも非常に大きかった。
また9回表に4番手で登板したのは、巨人から今シーズン加入したリャオ・レンレイ投手。
プロ初登板となったこの試合で、ランナーを2人背負ったものの、無失点で試合を締めた。
201センチの巨体から繰り出すピッチングは、今後ライオンズで大化けするのか、注目したいと思った。
そして今シーズン最多12安打9得点をあげた打線もさることながら、僕の印象に残ったのは、この試合4盗塁を決めた走塁面だ。
ソフトバンクとの開幕3連戦では鳴りを潜めていたが、この試合では1番を打つ金子侑選手が今シーズン初盗塁を含む2盗塁、源田選手、木村選手も1つずつ盗塁を決めた。
優勝した昨シーズン同様、ライオンズの攻撃面では、ホームランなどの豪快な打撃に目が行きがちだが、相手のスキを見逃さず、常に先の塁を狙った盗塁を含めた積極果敢な走塁、その走塁こそが、常勝ライオンズ時代から脈々と受け継がれてきた伝統であり、辻監督が掲げる野球を体現している一つの醍醐味なのだ。
そんな走塁が今シーズン5試合目で、改めて武器だなと感じられた試合だった。
4月4日木曜日
3回戦~メットライフドーム~埼玉西武3勝
ロッテ 0 0 0 0 2 0 2 0 2 6
埼玉西武 4 4 0 0 0 0 0 0 × 8
勝 本田1勝 敗 小島1敗
本 バルガス1号2ラン レアード5号2ラン 角中1号2ラン
ロッテ先発ルーキーの小島投手から、ライオンズ打線は森選手のタイムリー3ベースや外崎選手、栗山選手のタイムリーなどで、1回裏・2回裏にそれぞれ4点ずつ奪って優位な展開に。
ライオンズの先発は2年振りの先発登板となった本田投手。
その本田投手は丁寧なピッチングで、自己最長イニングとなる鬼門の3イニング目を突破すると、4回までロッテ打線をノーヒットに抑える好投を見せた。
5回表に初ヒットを打たれた後、バルガス選手に2ランホームランを打たれて2失点、7回表にもレアード選手に2ランホームランを打たれ、2ランホームラン2本で、7回途中5安打4失点で交代となったが、見事プロ初勝利をあげたのだった。
入団当初から、その潜在能力の高さには定評があった本田投手も、なかなか殻を破れずにいた。
性格が真面目過ぎるのが災いしたのか、開幕ローテーションに滑り込んだ今シーズン、ひげを蓄えイメージチェンジしたのも奏功し、感動的なプロ初勝利の記念すべき1日となった。
長年ライオンズの試合を見続けていても、やはりこうした新星が登場する瞬間を目撃できた時、この上ない喜びを感じられる、ファンの性を痛感した。
ともあれ、この3連戦に3連勝することができたライオンズは、早くも借金を完済した。
戦いはこれからである。
4月5日金曜日
1回戦~東京ドーム~埼玉西武1敗
埼玉西武 0 0 0 0 0 0 1 0 1 2
日本ハム 1 0 1 0 1 0 1 1 × 5
勝 上沢1勝 敗 多和田1敗
本 山川4号 渡邉1号
ビジターでの3連戦となった日本ハム戦、札幌ドームではなく、東京ドームでの3連戦となった。
開幕投手を務めた多和田投手が2試合目の登板、1回裏に中田選手にタイムリー2ベースを打たれていきなり先制点を奪われると、3回5回にも失点し、6回を投げて6安打3失点で降板となり、今シーズン初勝利はお預けに。
ライオンズ打線は、7回表に山川選手のバックスクリーンへの4号ソロホームランで反撃。
だが、チャンスは作るものの後1本が出ずに、初戦を落とした。
4月6日土曜日
2回戦~東京ドーム~埼玉西武1勝1敗
埼玉西武 0 0 5 0 7 1 0 3 0 16
日本ハム 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3
勝 今井1勝1敗 敗 金子1敗
本 森1号3ラン 西川1号 外崎1号 メヒア1号3ラン
3回表秋山選手の2点タイムリー2ベースで2点先制後、森選手が今シーズン第1号3ランホームランをレフトスタンドへ叩き込み、一挙5得点。
5回表にも森選手のタイムリーなど、打者一巡の猛攻で7得点で試合を決めた。
6回表に外崎選手の第1号ホームラン、8回表には途中出場のメヒア選手にも今シーズン第1号3ランホームランが飛び出し、今シーズン初の2ケタ16得点の猛攻で圧勝した。
先発今井投手が7回3失点で試合を作り、今シーズン初勝利を記録した。
全体的に打線がつながった一戦だったが、中でも森選手が大爆発。
2回表の2ベースに3回表の3ランホームラン、5回表のライト前タイムリーに、三振を挟んでサイクルヒットの期待がかかった8回表は惜しくも左中間への2ベースとなったが、4安打4打点の活躍で得点圏打率は,750と、強力打線のクリーンアップとして申し分のない滑り出しとなった。
またこの試合で、途中出場したルーキーの佐藤選手が、7回表の打席でサードへの内野安打を打ち、記念すべきプロ初ヒットを記録した。
山川選手・多和田投手・外崎選手と同じ富士大出身の期待のルーキーである佐藤選手が、将来のライオンズの中心選手になってくれることを、切に願う。
4月7日日曜日
3回戦~東京ドーム~埼玉西武2勝1敗
埼玉西武 0 0 0 0 0 0 0 0 4 4
日本ハム 0 0 2 0 0 0 0 0 0 2
勝 髙橋光1勝1敗 セーブ 増田1セーブ 敗 ハンコック1敗1セーブ
本 外崎2号3ラン
ライオンズ髙橋光投手はまずまずの立ち上がりを見せたが、3回裏に中島選手のタイムリー3ベースと西川選手のタイムリーで2点の先行を許す。
その後は立ち直り、スコアボードに0を並べていく粘りの投球を見せていった。
その髙橋光投手を上回るピッチングを相手の有原投手が披露していった。
8回を投げて、ライオンズ打線を散発の3安打に抑え、11奪三振の好投で得点を許さなかった。
髙橋光投手を何とか勝たせてあげたい、けれどなかなか反撃の糸口が見えない敗色濃厚な空気が漂い始めた最終回の攻撃に、ドラマが起こった。
9回表、この回から登板したハンコック投手から、森選手のタイムリーで1点を返した。
なお一死一・三塁のチャンスで外崎選手が一振りした打球は、ぐんぐん伸びてレフトスタンド3階席まで飛んでいく完璧な一撃となる、起死回生の第2号3ランホームランで4-2と劇的に試合をひっくり返したのだった。
9回裏を増田投手がきっちりと締めて今シーズン初セーブ、逆転勝利でカード勝ち越しを決めた。
この試合でクローザーを務めた増田投手。
開幕当初の構想では、クローザーはヒース投手が務める予定だったが、開幕戦でサヨナラ打を打たれた1試合で、首脳陣は本来の状態ではないと判断したのか、翌日に登録抹消。
続けてマーティン投手が代役に立つもこちらもピリッとせず、この試合から増田投手にその座が巡ってきた。
昨シーズンはチームが優勝した中で、自身は長年の勤続疲労なのか、本来のボールが走らず不本意な一年を味わってしまった増田投手。
今シーズンにかける思いは相当なものと推察される中、キャンプ・オープン戦と順調に調整を重ね、いい状態でシーズンに入れたようだ。
定位置のクローザーに返り咲いた増田投手の今シーズンにも、目が離せないだろう。
開幕3カードを終え、5勝4敗と1つの勝ち越し。
ソフトバンクとの開幕カードで3タテを食らってどうなることかと思ったが、その後の2カードで連続して勝ち越しに成功し、2連覇へ向けて走り出した埼玉西武ライオンズ。
毎年のことながら、球春の到来あってこそ、春が来たのだと感じるワクワク感とドキドキ感が同居したこの感覚、今年もまた熱く感動を求めて応援していく僕であった。
さすがに僕の皮膚を切っても、ブルーの血は流れはしないが、野球というスポーツをまだ漠然と認識したに過ぎない幼少期より、この思い、気持ちが変わったことなど一度たりともない。
今年35歳になるおっさんの、ほぼすべての時間を、ライオンズと共に過ごし、ライオンズを見てここまで来た。
そんな僕の、今シーズンにおける埼玉西武ライオンズの戦いを振り返るつぶやきに、わずかな時間でもお付き合いいただければ、幸いに思う。
なお、文中では一部で敬称を略させていただくが、ご容赦いただきたい。
昨年、2018年シーズンは、強力獅子おどし打線が引っ張り、開幕戦に勝利して以来、一度も首位の座を譲ることなく、10年振りのリーグ優勝を見事に成し遂げた。
前回優勝してから丸10年、惜しいシーズンも何度かあったが、本当に長かったというのが正直な感想であり、喜びもひとしおだった。
シーズン序盤に見せた日本ハム戦での0-8から、8回裏・9回裏の2イニングで9得点を奪い、奇跡的な逆転勝利をあげるなど、打線の脅威の粘りから、幾度も劇的な試合・勝利を届けてくれたのは、一ファンとして何度も何度も感動し、勇気付けられた。
そして9月30日、悲願のリーグ優勝を果たすと、クライマックスシリーズでは惜しくもソフトバンクに敗れ、日本シリーズ出場こそならなかったものの、改めて野球は面白いと心から感じられる、達成感のあるシーズンで、充実の秋を迎えることができた。
明けて今年2019年シーズン。
前年の優勝に貢献した、主力野手の浅村選手、炭谷選手がFAでそれぞれ楽天と巨人に、エースの菊池投手がポスティングで大リーグへと移籍し、チームを去ってしまった。
戦力ダウンが懸念される中、ここで開幕一軍の出場選手登録されたライオンズの選手を記しておく。
(投手)
今井
髙橋光
増田
多和田
齋藤大
野田
平井
田村
マーティン
小川
武隈
ニール
ヒース
(捕手)
森
岡田
駒月
(内野手)
水口
外崎
源田
佐藤
山川
中村
(外野手)
栗山
金子侑
木村
鈴木
愛斗
秋山
熊代
以上29名でのスタートとなったわけだが、投手陣に目を向けてみると、開幕先発ローテーションを予定していた、榎田投手、ルーキーの松本航投手、巨人から炭谷選手の人的補償で入団した内海投手が故障や体調不良のため間に合わず、いきなり投手陣の再整備を迫られる中での船出となった。
開幕は敵地福岡に乗り込んでの、ビジターでの3連戦となった。
ライオンズの開幕戦のスターティングオーダーは、
1番レフト金子侑
2番ショート源田
3番センター秋山
4番ファースト山川
5番キャッチャー森
6番セカンド外崎
7番指名打者栗山
8番サード中村
9番ライト木村
開幕投手は多和田
以上の布陣で、強敵ソフトバンクとの戦いに挑んだ。
日本球界屈指のヒットメーカー不動の1番バッター秋山選手を3番に、1番には2016年の盗塁王金子侑選手を据えた新打線。昨シーズン3番打者として打点王を獲得した浅村選手の穴を埋められるのか、セカンドのポジションにコンバートされた外崎選手も含めて注目が集まった。
また扇の要のキャッチャーには森選手がどっかりと座り、打線の中心クリーンアップと正捕手という2つの重責を担えるかにも、注目。
3月29日金曜日
開幕戦~福岡ヤフオクドーム~埼玉西武1敗
埼玉西武 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 4
ソフトバンク 0 1 0 1 2 0 0 0 0 0 1× 5
勝 甲斐野 1勝 敗 ヒース 1敗
本 松田宣1号 山川1号満塁
プロ入り初の開幕投手を務めた多和田投手は、2回裏に松田宣選手に先制ホームランを打たれると、 5回を投げて10安打4失点とリードを許し、ソフトバンク千賀-モイネロの投手リレーの前に、中盤まで完全にソフトバンクペース。
しかし8回表加治屋投手から無死満塁のチャンスを作ると、4番山川選手が一振りで仕留め、起死回生の今シーズン第1号の同点満塁ホームランを放った。
打った瞬間完璧な山川選手の一撃に、鳥肌が立った。
ただ延長11回裏、6番手で登板したヒース投手が一死も取れずに、デスパイネ選手にサヨナラ打を打たれてしまい、4-5のサヨナラ負けで、惜しくも黒星スタートとなってしまった。
ちなみに、ライオンズの選手で開幕戦で満塁ホームランを放ったのは、1994年の伊東勤さん以来で、山川選手の満塁ホームランは実に25年振りだった。
開幕戦での満塁ホームランはプロ野球全体でも、20人目21度目だったが、そのうちチームが敗れたのは、今シーズンの山川選手が史上初という、珍記録となってしまった。
3月30日土曜日
2回戦~福岡ヤフオクドーム~埼玉西武2敗
埼玉西武 0 2 0 2 0 0 0 1 0 5
ソフトバンク 1 0 0 5 0 0 0 0 × 6
勝 ミランダ1勝 セーブ 森1セーブ 敗 今井1敗
本 栗山1号2ラン 柳田1号満塁 山川2号
立ち上がりに1点先制されるも、すぐさま2回表に栗山選手の第1号2ランホームランで逆転。
4回表にも2点を追加して試合を優位に進めるかと思ったのもつかの間、4回裏に柳田選手に満塁ホームランを今井投手が浴びてしまうなど、この回5失点で試合をひっくり返されてしまった。
8回表に山川選手の2試合連続第2号ホームランで1点差まで詰め寄ったものの、そこまでで連敗を喫してしまった。
なお4番で開幕戦から2試合連続でホームランを放った山川選手、これはライオンズでは2004年の和田選手以来の記録となった。
3月31日日曜日
3回戦~福岡ヤフオクドーム~埼玉西武3敗
埼玉西武 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1
ソフトバンク 0 0 0 0 0 2 1 0 × 3
勝 高橋礼1勝 セーブ 森2セーブ 敗 髙橋光1敗
本 中村1号 柳田2号2ラン 上林1号
0-0で迎えた5回表、中村選手がライトテラス席に今シーズン第1号ホームランを放ち先制するも、6回裏に柳田選手に、7回裏には上林選手に一発を浴びてしまった先発髙橋光投手は、7回を投げて3失点と試合は作ったものの、打線が追加得点を奪えずにまさかの3連敗。
昨シーズンも3勝8敗と苦手にしていたヤフオクドームで、開幕カード3連敗スタートと、今シーズンも手こずりそうな印象を非常に受けた3日間だった。
往年のライオンズの大エース西口投手の背番号13を今シーズンから受け継いだ髙橋光成投手、希望と課題の両方が垣間見えた、そんな今シーズン初登板だったように映った。
4月2日火曜日
1回戦~メットライフドーム~埼玉西武1勝
ロッテ 0 0 0 0 0 2 1 1 0 4
埼玉西武 0 0 1 2 2 2 0 0 × 7
勝 ニール1勝 セーブ マーティン1セーブ 敗 涌井1敗
本 山川3号 レアード4号
敵地福岡で3連敗して、本拠地メットライフドームに帰ってきたライオンズ。
チャンピオンシリーズと銘打たれた、本拠地開幕3連戦、仕切り直して再スタート。
3回裏、源田選手のタイムリー2ベースで先制に成功したライオンズは、4回裏には山川選手の第3号ホームランなどで2点追加。
5回裏、6回裏には、2打席連続で満塁のチャンスで森選手が2点タイムリーを打ち、2安打4打点の活躍を見せてくれた。
来日初先発登板となったニール投手は、5回1/3イニングを2失点と試合を作り、初登板初勝利を飾った。
それにしても、やはり本拠地での試合はいいものだ。
平日にもかかわらず、2万7000人の大観衆の応援が選手たちを見事に後押しし、2019年の初勝利をあげた、素敵な夜となった。
4月3日水曜日
2回戦~メットライフドーム~埼玉西武2勝
ロッテ 0 0 3 0 0 0 0 0 0 3
埼玉西武 2 3 0 0 3 0 1 0 × 9
勝 武隈1勝 敗 ブランドン1敗
本 中村奨2号3ラン
1回裏併殺打の間に先制したライオンズは、足も絡めた攻撃でロッテ先発ブランドン投手を攻略し、2イニングで5点を奪い、主導権を握った。
2012年7月以来実に7年振りの先発登板となった武隈投手は、3回表に中村奨選手に3ランホームランを打たれて3点こそ返されたが、5回3失点とゲームメイクし、7年振りの先発白星を手にした。
この武隈投手は、中継ぎのスペシャリストとして長年ライオンズのブルペンを支えた投手で、先発投手としての調整を始めたのは開幕間近の3月と、文字通りの急ピッチでこの試合の登板につなげた。
タイプも方法も全く異なる先発とリリーフの調整、先発からリリーフへの調整の変更はまだ比較的苦にはならないと聞くが、逆のリリーフから先発への転向、しかも実質1ヶ月もない期間での調整は本当に大変だったと思う。
5回裏には中村選手の満塁走者一掃の3点タイムリー2ベースで、追いすがるロッテを引き離したのも非常に大きかった。
また9回表に4番手で登板したのは、巨人から今シーズン加入したリャオ・レンレイ投手。
プロ初登板となったこの試合で、ランナーを2人背負ったものの、無失点で試合を締めた。
201センチの巨体から繰り出すピッチングは、今後ライオンズで大化けするのか、注目したいと思った。
そして今シーズン最多12安打9得点をあげた打線もさることながら、僕の印象に残ったのは、この試合4盗塁を決めた走塁面だ。
ソフトバンクとの開幕3連戦では鳴りを潜めていたが、この試合では1番を打つ金子侑選手が今シーズン初盗塁を含む2盗塁、源田選手、木村選手も1つずつ盗塁を決めた。
優勝した昨シーズン同様、ライオンズの攻撃面では、ホームランなどの豪快な打撃に目が行きがちだが、相手のスキを見逃さず、常に先の塁を狙った盗塁を含めた積極果敢な走塁、その走塁こそが、常勝ライオンズ時代から脈々と受け継がれてきた伝統であり、辻監督が掲げる野球を体現している一つの醍醐味なのだ。
そんな走塁が今シーズン5試合目で、改めて武器だなと感じられた試合だった。
4月4日木曜日
3回戦~メットライフドーム~埼玉西武3勝
ロッテ 0 0 0 0 2 0 2 0 2 6
埼玉西武 4 4 0 0 0 0 0 0 × 8
勝 本田1勝 敗 小島1敗
本 バルガス1号2ラン レアード5号2ラン 角中1号2ラン
ロッテ先発ルーキーの小島投手から、ライオンズ打線は森選手のタイムリー3ベースや外崎選手、栗山選手のタイムリーなどで、1回裏・2回裏にそれぞれ4点ずつ奪って優位な展開に。
ライオンズの先発は2年振りの先発登板となった本田投手。
その本田投手は丁寧なピッチングで、自己最長イニングとなる鬼門の3イニング目を突破すると、4回までロッテ打線をノーヒットに抑える好投を見せた。
5回表に初ヒットを打たれた後、バルガス選手に2ランホームランを打たれて2失点、7回表にもレアード選手に2ランホームランを打たれ、2ランホームラン2本で、7回途中5安打4失点で交代となったが、見事プロ初勝利をあげたのだった。
入団当初から、その潜在能力の高さには定評があった本田投手も、なかなか殻を破れずにいた。
性格が真面目過ぎるのが災いしたのか、開幕ローテーションに滑り込んだ今シーズン、ひげを蓄えイメージチェンジしたのも奏功し、感動的なプロ初勝利の記念すべき1日となった。
長年ライオンズの試合を見続けていても、やはりこうした新星が登場する瞬間を目撃できた時、この上ない喜びを感じられる、ファンの性を痛感した。
ともあれ、この3連戦に3連勝することができたライオンズは、早くも借金を完済した。
戦いはこれからである。
4月5日金曜日
1回戦~東京ドーム~埼玉西武1敗
埼玉西武 0 0 0 0 0 0 1 0 1 2
日本ハム 1 0 1 0 1 0 1 1 × 5
勝 上沢1勝 敗 多和田1敗
本 山川4号 渡邉1号
ビジターでの3連戦となった日本ハム戦、札幌ドームではなく、東京ドームでの3連戦となった。
開幕投手を務めた多和田投手が2試合目の登板、1回裏に中田選手にタイムリー2ベースを打たれていきなり先制点を奪われると、3回5回にも失点し、6回を投げて6安打3失点で降板となり、今シーズン初勝利はお預けに。
ライオンズ打線は、7回表に山川選手のバックスクリーンへの4号ソロホームランで反撃。
だが、チャンスは作るものの後1本が出ずに、初戦を落とした。
4月6日土曜日
2回戦~東京ドーム~埼玉西武1勝1敗
埼玉西武 0 0 5 0 7 1 0 3 0 16
日本ハム 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3
勝 今井1勝1敗 敗 金子1敗
本 森1号3ラン 西川1号 外崎1号 メヒア1号3ラン
3回表秋山選手の2点タイムリー2ベースで2点先制後、森選手が今シーズン第1号3ランホームランをレフトスタンドへ叩き込み、一挙5得点。
5回表にも森選手のタイムリーなど、打者一巡の猛攻で7得点で試合を決めた。
6回表に外崎選手の第1号ホームラン、8回表には途中出場のメヒア選手にも今シーズン第1号3ランホームランが飛び出し、今シーズン初の2ケタ16得点の猛攻で圧勝した。
先発今井投手が7回3失点で試合を作り、今シーズン初勝利を記録した。
全体的に打線がつながった一戦だったが、中でも森選手が大爆発。
2回表の2ベースに3回表の3ランホームラン、5回表のライト前タイムリーに、三振を挟んでサイクルヒットの期待がかかった8回表は惜しくも左中間への2ベースとなったが、4安打4打点の活躍で得点圏打率は,750と、強力打線のクリーンアップとして申し分のない滑り出しとなった。
またこの試合で、途中出場したルーキーの佐藤選手が、7回表の打席でサードへの内野安打を打ち、記念すべきプロ初ヒットを記録した。
山川選手・多和田投手・外崎選手と同じ富士大出身の期待のルーキーである佐藤選手が、将来のライオンズの中心選手になってくれることを、切に願う。
4月7日日曜日
3回戦~東京ドーム~埼玉西武2勝1敗
埼玉西武 0 0 0 0 0 0 0 0 4 4
日本ハム 0 0 2 0 0 0 0 0 0 2
勝 髙橋光1勝1敗 セーブ 増田1セーブ 敗 ハンコック1敗1セーブ
本 外崎2号3ラン
ライオンズ髙橋光投手はまずまずの立ち上がりを見せたが、3回裏に中島選手のタイムリー3ベースと西川選手のタイムリーで2点の先行を許す。
その後は立ち直り、スコアボードに0を並べていく粘りの投球を見せていった。
その髙橋光投手を上回るピッチングを相手の有原投手が披露していった。
8回を投げて、ライオンズ打線を散発の3安打に抑え、11奪三振の好投で得点を許さなかった。
髙橋光投手を何とか勝たせてあげたい、けれどなかなか反撃の糸口が見えない敗色濃厚な空気が漂い始めた最終回の攻撃に、ドラマが起こった。
9回表、この回から登板したハンコック投手から、森選手のタイムリーで1点を返した。
なお一死一・三塁のチャンスで外崎選手が一振りした打球は、ぐんぐん伸びてレフトスタンド3階席まで飛んでいく完璧な一撃となる、起死回生の第2号3ランホームランで4-2と劇的に試合をひっくり返したのだった。
9回裏を増田投手がきっちりと締めて今シーズン初セーブ、逆転勝利でカード勝ち越しを決めた。
この試合でクローザーを務めた増田投手。
開幕当初の構想では、クローザーはヒース投手が務める予定だったが、開幕戦でサヨナラ打を打たれた1試合で、首脳陣は本来の状態ではないと判断したのか、翌日に登録抹消。
続けてマーティン投手が代役に立つもこちらもピリッとせず、この試合から増田投手にその座が巡ってきた。
昨シーズンはチームが優勝した中で、自身は長年の勤続疲労なのか、本来のボールが走らず不本意な一年を味わってしまった増田投手。
今シーズンにかける思いは相当なものと推察される中、キャンプ・オープン戦と順調に調整を重ね、いい状態でシーズンに入れたようだ。
定位置のクローザーに返り咲いた増田投手の今シーズンにも、目が離せないだろう。
開幕3カードを終え、5勝4敗と1つの勝ち越し。
ソフトバンクとの開幕カードで3タテを食らってどうなることかと思ったが、その後の2カードで連続して勝ち越しに成功し、2連覇へ向けて走り出した埼玉西武ライオンズ。
毎年のことながら、球春の到来あってこそ、春が来たのだと感じるワクワク感とドキドキ感が同居したこの感覚、今年もまた熱く感動を求めて応援していく僕であった。