第16話

文字数 5,876文字

 2年連続パ・リーグ優勝を果たした埼玉西武ライオンズの次なる戦いの場、そうそれは、昨シーズンソフトバンクに敗れて苦汁をなめた、クライマックスシリーズでの戦いである。
最終決戦となる、2008年以来の日本シリーズ進出に向けて、最後の正念場だ。

リーグ優勝したライオンズは、最終ステージにコマを進めており、ファーストステージで楽天を破ったソフトバンクを迎え撃つこととなった。
くしくも昨年のクライマックスシリーズと同じ対戦チーム、場所も本拠地メットライフドームということで、まったく同じリベンジの場が用意される形となった。

レギュラーシーズン終了から、最終ステージまで間隔が空くこととなるライオンズ。
昨シーズンは、その期間中にフェニックスリーグに選手たちが参加して、実戦感覚を養って調整したが、今シーズンはフェニックスリーグの日程が合わなかったため、各自メットライフドームでの紅白戦や練習で調整することとなった。
シーズン最終盤、満身創痍で戦っていた中村選手らベテランの選手たちには程よい休養と調整となり、若手や中堅クラスの選手たちにとっては、各々が納得のいく調整を行い戦いに備えた。







 10月9日水曜日
第1戦~メットライフドーム~埼玉西武1勝1敗(アドバンテージの1勝を含む)
ソフトバンク 2 0 0 0 0 0 1 2 3 8
埼玉西武   0 0 3 0 0 1 0 0 0 4
勝 甲斐野1勝  敗 平井1敗
本 グラシアル1号

ライオンズの先発は、チームの勝ち頭となったニール投手が初戦のマウンドを託され、必勝を期した。
1回表、二死一・三塁とピンチを背負ったニール投手は、松田宣選手にライトへ2点タイムリー2ベースを打たれ、立ち上がりに2点を失った。
それでも2回表からは立て直し、2回表~5回表までの4イニングをパーフェクトに抑えるなど、3回表一死で今宮選手をサードゴロに打ち取ったのを皮切りに、6回表福田選手をファーストゴロに打ち取るまで、9者連続内野ゴロに打ち取る好投。
初戦のプレッシャーがかかるマウンドで、シーズンと同様にボールを動かしゴロを打たせて取るピッチングは健在で、試合を作っていった。

ライオンズは3回裏、ホークス先発和田投手から一死後、秋山選手が四球、源田選手がセンターへヒットを放つなど、二死一・三塁のチャンスを作った。
ここで中村選手がレフトへタイムリーヒットを弾き返し1点を返すと、外崎選手はセンターの頭上を越える2点タイムリー3ベースを放ち、3-2と逆転に成功した。

6回裏には髙橋純投手から、山川選手が左中間にタイムリー2ベースを放ち、4-2とリードを広げて主導権を握った。

試合は終盤に入り7回表、背中と腰に張りが出ていたというニール投手は続投したが、先頭打者のグラシアル選手にホームランを打たれてしまい、ここで交代となった。
とはいえ、6回0/3イニングを3失点と、しっかり試合を作ってくれたのはさすがだった。

8回表、ライオンズは勝ちパターンのセットアッパー平井投手が、シーズン同様1点リードの場面で登板した。
ところが一死を取ってから、柳田選手、デスパイネ選手に連続ヒットを打たれ、一死一・三塁とピンチを招いたところで、ライオンズベンチが動いた。
シーズン中であれば、この状況での交代はまずないであろう投手交代、それだけ何としても初戦を取りたいという、ベンチの思惑もあったと思う。
だがここで登板した平良投手は、松田宣選手をストレートで空振り三振に斬り二死までこぎつけるも、代打長谷川勇選手に詰まった当たりのレフトへのタイムリーを打たれ、4-4と同点にされると、なお一・三塁のピンチで、平良投手が投じたスライダーが痛恨のパスボールとなってしまい、三塁走者が生還し4-5と逆転されてしまい、メットライフドームの空気にも、不穏な何かが漂い始めた。

ライオンズは9回表にリリーフ待機していた榎田投手を投入するも、流れを止められず重過ぎる3点を追加され、4-8で初戦に敗れてしまった。

短期決戦と言えど、最大6試合を戦うクライマックスシリーズ最終ステージ。
その初戦ということが仇となったか。
例えば8回表、1点リードの場面で平井投手がピンチを招いて降板となった。
これが仮にあと1勝で日本シリーズ出場決定というような戦況なら、イニングまたぎでクローザーの増田投手を投入し、逃げ切りを図ったかもしれない。
それで結果が悪い方向に転んでも、最善手を尽くしての敗戦ならば、納得もいっただろうが。
短いようで長い、6連戦のクライマックスシリーズという戦い方の難しさが問われた、イニングだったように感じた。

決勝点となる森選手のパスボール、クライマックスシリーズ史上初めてパスボールが決勝点となった悔しい記録を作ってしまった。
森選手が、きっと誰よりも悔しかったことは、想像に難くない。

ライオンズには1勝のアドバンテージが与えられているため、星の上では1勝1敗のタイとなったわけだが、昨シーズンも第1戦に敗れて結果敗退しているため、是が非でも勝ちたかったこの試合が残したダメージ。
悪い方向に引きずらないことを願って、明日に進みたい。







 10月10日木曜日
第2戦~メットライフドーム~埼玉西武1勝2敗(アドバンテージの1勝を含む)
ソフトバンク 1 1 4 1 0 1 0 0 0 8
埼玉西武   0 0 0 1 3 0 1 1 0 6
勝 石川1勝  セーブ 森1セーブ  敗 今井1敗
本 中村晃1号2ラン 外崎1号 グラシアル2号

ライオンズ先発今井投手は、立ち上がりから力が入ったのか、1回表に中村晃選手のライトへのタイムリーで1点を失うと、2回表には犠牲フライで1点を追加され、
3回表、デスパイネ選手のライトへのタイムリー2ベースの後、中村晃選手にはライトスタンドへ2ランホームラン、二死を取ってから髙谷選手にタイムリー2ベースを打たれ、3回途中6失点で降板となってしまった。

4回表には2番手佐野投手も1点を失い、レギュラーシーズンでもなかった、1回からの4イング連続失点で、0-7とソフトバンクの勢いが加速していく序盤の展開。

それでもライオンズ打線も4回裏、ホークス先発武田投手から、外崎選手がレフトスタンドへ第1号ホームランを運び1点を返すと、
続く5回裏、木村選手、金子侑選手の連続ヒットで武田投手をノックアウト。
2番手嘉弥真投手から、源田選手がレフトへタイムリー2ベース、森選手がライトへ犠牲フライ、中村選手も3番手石川投手から、センターへタイムリー2ベースヒットを放ち、3点を返し4-7と反撃を見せた。

6回表にグラシアル選手のホームランで、1点を追加されたライオンズ。
それでも7回裏、中村選手のショートゴロの間に1点を返し5-8、
8回裏には二死から、金子侑選手がレフトへ2ベースを打ち作ったチャンスで、秋山選手がモイネロ投手からライト前へタイムリーヒットを弾き返し6-8として、ホークスのクローザー森投手を引っ張り出すまで、必死に食らいついた。

だが反撃もそこまで、4回までの7失点が大きくのしかかり、6-8でライオンズは連敗を喫し、1勝2敗と苦しくなった。

この試合、金子侑選手が3打数3安打に四球1つと、全4打席で出塁するなど、打線は最後までファイティングポーズを崩さなかった。
それだけに、先発投手が6回3失点くらいで試合を作ってくれさえすれば、まだまだ十分に盛り返していけるはずだ。
とにかく明日、勝てるように!








 10月11日金曜日
第3戦~メットライフドーム~埼玉西武1勝3敗(アドバンテージの1勝を含む)
ソフトバンク 1 2 0 2 0 0 0 0 2 7
埼玉西武   0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
勝 千賀1勝  敗 十亀1敗
本 牧原1号2ラン

もう負けられないライオンズは、シーズン終盤に安定感を見せた十亀投手を先発に立てた。
しかし1回表、二死一・二塁とピンチを背負った十亀投手は、中村晃選手にセンターへタイムリーを打たれ、またしても初回に失点を許してしまうと、2回表には牧原選手にライトへ2点タイムリー2ベースを打たれ、早々と3点を失った。

対するホークスの先発投手がエースの千賀投手だけに、これ以上離されるわけにはいかない。
だがその思いとは裏腹に4回表、牧原選手に2ランホームランを右中間スタンドに運ばれてしまった十亀投手は、4回5失点と試合を作ることができずに、無念の降板となってしまった。

反撃したい、王手をかけられるわけにはいかないライオンズ打線だったが、ホークス千賀投手の前に、1回裏に秋山選手が先頭でライトへヒットを打って以降、7回まで四球2つとエラーでの出塁はあったものの、ノーヒットに抑えられてしまい、なかなか状況を打破する糸口が見付からない。

8回裏に二死から、源田選手が執念の内野安打を打ち久し振りのヒットを放ったが、結局千賀投手に8回まで無得点に抑えられたライオンズ打線。
9回表にも2点を失ったライオンズは、0-7と今シリーズ初めて見せ場を作ることもできずに敗戦を喫し、1勝3敗といよいよ追い込まれた。
悲願の日本シリーズ進出には、もう1つも負けられなくなった。







 10月13日日曜日
第4戦~メットライフドーム~埼玉西武1勝4敗(アドバンテージの1勝を含む)
ソフトバンク 0 0 1 2 0 2 2 0 2 9
埼玉西武   0 0 0 1 1 1 0 0 0 3
勝 髙橋純1勝  敗 本田1敗
本 今宮1号 2号2ラン 3号2ラン  グラシアル3号 メヒア1号 山川1号

台風19号の接近に伴い、1日順延されたこの試合、ライオンズにとってはもう後がない正念場。

ライオンズ先発本田投手は1回表、一死から今宮選手にヒットを打たれたが後続を断ち、ここまで3試合連続失点していた初回を無失点で乗り切ることができた。
打順が2周り目に入った3回表、一死から本田投手は、今宮選手にレフトスタンドへホームランを運ばれてしまい、先制を許した。
4回表には、いきなりグラシアル選手にホームランを打たれ1点を追加されると、松田宣選手にヒットを打たれたところで、ライオンズベンチは早めの継投に入り、平良投手が登板した。
だが一死から、甲斐選手にレフトへタイムリー2ベースを打たれて、0-3とこの試合も追いかける展開を強いられることに。

ライオンズも4回裏、ホークス先発バンデンハーク投手から、山川選手がレフトへタイムリーを放ち、1点を返し反撃に出た。
5回裏には、メヒア選手がレフトスタンドに第1号ホームランをライオンズファンの元へ運び、勇気付けた。

6回表に今宮選手に2ランホームランを打たれても、6回裏石川投手から、山川選手がセンターバックスクリーンへ第1号ホームランを放り込み、諦めない姿勢を見せるライオンズ。

だが7回表に2点を失ったライオンズは、9回表にも今宮選手にこの試合何と3本目となる2ランホームランを打たれてしまい、手が付けられなくなったソフトバンクの前に、反撃も及ばず3-9で敗戦。
この瞬間、ライオンズは1勝4敗でクライマックスシリーズ敗退が決まり、悲願の日本シリーズに2年続けて届かなかった。

実質4戦4連敗で終戦となってしまったライオンズ。
2019年シーズンの戦いが、信じられないショッキングな展開で、あっという間に終わってしまったような数日間の結果は、正直残酷だ。

半年間に及ぶ143試合の長丁場のペナントレースを勝ち抜いての、リーグ優勝。
なのにたった数日間の試合の結果で、日本シリーズに進出できない。
日本のクライマックスシリーズの現行制度の是非については、十人十色だと思う。
かくいう僕も、今シーズンの結末を見て、いろいろと思うところはある。
だが、CSの在り方、改善点における持論をここで語るのも、何だか違う気がする。
今何を言っても、負けたからという結果論がついて回る気がするので。

CSで敗れてしまったライオンズだが、パ・リーグを優勝した価値は決して色褪せたりはしない。
辻監督もおっしゃっていた通り、選手の皆さんも、僕たちファンも誇りに思っていい偉業だ。
FA制度などの影響で、毎年のように主力選手が流出する中で、連覇することがどれだけ難しいか。
来シーズンも優勝を目指して、そして来シーズンこそは、日本シリーズに進出して日本一になってほしいと、願うばかりだ。




最後に、今シーズンのプロ野球の最優秀バッテリー賞が発表され、パ・リーグでは、ライオンズの増田投手・森選手のバッテリーが受賞となった。
森選手は昨シーズンに続き2年連続2度目、増田投手は初受賞。
だいたいこの賞は、エース級の先発投手が選出されることが多く、そんな中でクローザーでフル回転した増田投手が選ばれたことは、大変価値のあることだと思うし、日本中が増田投手のピッチングを評価したのだから誇らしい。
森選手も、CSでは悔しい思いをしたと思うが、これから長きに渡りライオンズの扇の要、ひいては日本球界No.1捕手へと上り詰めていくという夢を、僕は見ている。
大変なことも多いと思うが、来シーズン以降もどんどん技術を磨いて、スケールアップしていってほしいと思う。


9月度の大樹生命月間MVPが発表され、パ・リーグの投手部門で、ニール投手が初受賞した。
ニール投手は9月4試合に登板して4勝、防御率は0.66で27回1/3イニングを投げて四球は1つも与えていないという、コントロールに課題のあるライオンズ投手陣の中で、大黒柱としての活躍で優勝に貢献してくれた。


また9月度のスカパー!サヨナラ賞のパ・リーグ部門では、メヒア選手が選出され受賞した。
記憶にまだ新しい、9月20日本拠地最終戦の楽天戦の9回裏に放った、サヨナラ2ランホームランが評価されての受賞。
文字通り、優勝を大きく手繰り寄せた劇的なホームランだっただけに、異論はないだろう。


増田投手、ニール投手、森選手、メヒア選手、本当におめでとうございます!!

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み