4-13. 古のバトルウォーシップ

文字数 2,014文字

「おかしいな……。奴はどこにもおらんぞ……」
 レヴィアは画面をにらみながら眉をひそめる。
「えっ!? ルコアがいないんですか?」
「地球を抜け出すなんてこと無いはずなんじゃが……。海王星も探してみるか……」
 レヴィアは怪訝(けげん)そうな顔をしながら隣に新たな画面をポコッと開くと、パシパシとタップしていった。
「ん? なんじゃこれ……?」
 つぶやきながらさらに情報を表示させ、流れる文字を読んでいくレヴィア。
「おった! え? こいつどこに向かっとるんじゃ!?」
 レヴィアは急いで画面をさらに一つ増やし、パシパシとタップして行く。
「どこ……ですか?」
「あそこじゃ!」
 レヴィアが指さしたのは何と窓の外、海王星だった。
「あ奴め、衛星軌道上のスカイポートからシャトルを奪取して海王星へと降りて行っとる。どうするつもりじゃ?」
「ど、どうなるんですか?」
「海王星にはコンピューターしかない。コンピューターに行く理由は……改造するか壊すか……」
「改造なんてできるんですか?」
「あ奴にそんな能力などない。となると……」
「破壊……ですか? 壊されたらどうなるんですか?」
「そりゃぁ……、地球は壊れるしかない……な」
 レヴィアは苦虫を噛み潰したような顔で答える。
「ダ、ダメですよ! そんなの! 止めなきゃ!」
 レヴィアは画面をパシパシと叩き、シャトルの通信回線へとつなげた。
 しばらくして映像が浮かび上がる。
 そこには赤い目をしたルコアがにやけて座っていた。
「あーら、ロリババア、何か用かしら?」
 勝ち誇った顔のヒルド。
「お主……、何するつもりじゃ?」
「何って決まってるじゃない。私がきれいさっぱりあなたの星を消してあげるわ」
 ヒルドはいやらしい笑みを浮かべる。
「ま、待て。話し合おう。星が消えたらお主も消えるんじゃぞ」
「ふふっ、別に私は消えないわ。消えるのはあなた達だけ……。チャオ!」
 そう言ってヒルドは回線を切った。
 レヴィアは唖然(あぜん)としたまま動かなくなった。
「自分は消えないって……、そんなことできるんですか?」
「分からん……。あ奴め何を企んどる……」
 レヴィアは頭を抱えてしまった。
「何にしても止めないと! みんなが死んじゃう」
「止めるって……どうやって?」
 レヴィアは頭を抱えたままボソっとつぶやく。
「えーと……、他の船に制止してもらうとか……?」
 ヴィクトルは思い付きを言ってみる。
 レヴィアは渋い顔をしながら画面をバシバシ叩き、船のリストと、船の所在地図をずらりと出した。
「やっぱりダメじゃ……。近くには一(そう)もおらん……」
「何か攻撃手段はないんですか? 遠距離をバーンってできる魔法みたいな奴?」
「バカ言うな。海王星では戦争なんかもう何十万年もないんじゃ。武器なんか無いわ!」
 レヴィアは両手で顔を覆った。
 しかし、諦める訳にもいかない。
 ヴィクトルは横から必死に画面を見入って、何か手立てがないか一生懸命考える。
 リストには貨物船や作業船らしき船の情報が並んでいる。
 ヴィクトルは画面をフリップしてずーっとリストを眺めていった。すると、変な船を見つけた。
「Battle war ship Yamato ってありますけど、これ、何ですか?」
「へ? バトルウォーシップ? 戦艦って意味じゃが、戦艦大和……お主何を馬鹿な事言っ……へっ!?」
 レヴィアは画面を食い入るように見つめ、動かなくなった。
「戦艦……大和……だと……?」
 レヴィアは急いで画面をパシパシ叩き始める。
 そして画面に浮かび上がったのは真っ青な海王星をバックに疾走するいぶし銀の巨大な戦艦。それは三連装砲塔が並び、荘厳な艦橋が屹立(きつりつ)する見まごうなき戦艦大和だった。
「なんじゃこりゃぁ!」
 レヴィアは叫び、さらに画面をパシパシと叩いて情報を次々と表示させる。
 そして、唖然としながらつぶやいた。
「本物じゃ……」
 はるか昔、鹿児島沖で撃沈された世界最大の戦艦、大和。それが建造時そのままの姿でなぜか海王星のそばを航行している。そのあまりにも現実離れした事態に混乱を隠せない。

「何々……。全長263m、排水量64,000トン、主砲9門の口径は46センチ、射程距離50キロ……は換装されてエクサワットレーザー!? どこかの星でも滅ぼすつもりか!?」
「なんで軍艦が宇宙を飛んでるんですか?」
 ヴィクトルがもっともな質問をする。
「そんなの我が知りたいわ! 戦艦大和は昔、iPhoneの星で大戦があった時に開発された超弩級戦艦じゃ。いまだに我が星系でも最大にして最強……。なぜそんな物を宇宙に持ってきたんじゃ?」
「この武器ならヒルドを止められますか?」
「主砲を当てさえすれば瞬殺じゃ……。撃って当てられればじゃが……」
「でも、他に手はないですよね?」
「……。そうじゃな。オーナーは……シアン様……か……何を考えられとるのか……」
 そう言うと、レヴィアはiPhoneを取り出しておもむろに電話をかけた。

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