4-3. 異次元の応酬
文字数 2,205文字
右半身は血しぶきをまき散らしながら、起用にケンケンと一本足で飛びはねる。そして、驚異的な跳躍でレヴィアへと迫った。
レヴィアは両手をガッと持ち上げ、黒いラインを呼び戻すと、背後からヒルドの右半身にとりつかせた。
同時にヒルドは右手をレヴィアに向け、グガァ! と、叫ぶと、右手から青いビームをレヴィアに向けて発射する。
激しい爆発音が次々と起こり、同時に二人の身体が青白く光り始めた。
レヴィアはクッと歯を食いしばると、目の前を右手でブンと振る。すると、真っ黒い画面を四つ浮かび上がった。そして、目にも止まらぬ速さで両手で画面をタップし始めた。
ヌォォォォォ――――!
レヴィアが気合を入れ、タップ速度が上がり、金髪が猫のように逆立っていく。
ぐるぎゅぁぁ!
ヒルドの右半身は奇怪な音を発し、血をビチャビチャと滴 らせると青いビームをさらにまばゆく輝かせた。
やがて二人の周りにはバチバチと音を放ちながら、四角いブロックノイズが浮かび上がってくる。
ヴィクトルは世界の管理者 同士の常識の通じない戦闘に、なすすべなく呆然 と見つめるばかりだった。
「よぉ――――し!」
レヴィアは叫ぶと勝利を確信した笑みを浮かべ、画面を右手でなぎはらった。
ぐぎゃぁぁぁ――――!
ヒルドは断末魔の叫びを上げながらブロックノイズの海へと沈んでいく。
レヴィアは腕を組んで、大きく息をつくと、
「静かに……眠れ」
と、少し寂しそうに声をかけた。
ブロックノイズが収まっていくと、最後に黒い丸い石がコロンと落ち、転がっていく……。
怪訝 そうにそれを見つめるレヴィア……。
直後、黒い石はどろんと溶けると、白い床をあっという間に漆黒に変え、広がっていく。
「ヤバいヤバい!」
レヴィアはそう叫ぶと、ヴィクトルとルコアを抱えてピョンと飛んだ。
◇
ヴィクトルが気がつくと、三人は焼け焦げた麦畑に立っていた。
「主さまぁ――――! うわぁぁん!」
ルコアがヴィクトルに飛びついてきて涙をこぼす。
ヴィクトルはポンポンとルコアの背中を叩きながらルコアの体温を感じる。
ひどい目に遭わされそうになったルコアは、身体を震わせながらオイオイと泣いた。
ヴィクトルは甘く優しいルコアの香りに癒されながら、ゆっくりとルコアの背中をさすり、心から安堵をする。
管理者 の圧倒的な力、それはまさに神であり、とても人間の及ぶものではなかった。ヴィクトルはその絶望的なまでの格の違いを思い出し、思わずブルっと身震いをする。そして、二度と戦うようなことがあってはならないと肝に銘じた。
ふと見ると、レヴィアは小さな水槽みたいな直方体のガラスケースを手に持っている。
「これ、何ですか?」
ルコアをハグしながらヴィクトルがのぞき込むと、中では黒いスライムのようなドロドロとしたものがウネウネと動いていた。
「これはさっきいた空間じゃな。奴を閉じ込め、コンパクトにしたんじゃ」
レヴィアはニヤリと笑う。
「え? ではこのドロドロはヒルド?」
「そうじゃ、暴力で訴えてくる者には残念ながら消えてもらうしかない。さらばじゃ!」
そう言うと、レヴィアは水槽に力を込めた。
水槽の中に青白いスパークがバリバリっと走り、水槽はブロックノイズの中に消えていく。怪しげな宗教で社会の混乱を狙ったヒルドは、こうやって最期の時を迎えたのだった。
ヒルドはヒルドなりに社会の活性化を目指したのかもしれないが、暴力を辞さない進め方が本当に人類のためになるのかヴィクトルには疑問だった。
「ヴィクトル――――!」
ルイーズが駆けてやってきて、ヴィクトルに抱き着く。
ルコアとルイーズに抱き着かれ、足が浮いて思わず苦笑いのヴィクトル。六歳児は小さく軽いのだ。
「見てたよ! す、凄かった! ありがとう!!」
ルイーズは声を詰まらせながら言った。
「麦畑全滅させちゃった。ごめんね」
ヴィクトルはルイーズの背中もポンポンと叩く。
レヴィアが横から言う。
「魔石が散らばっとるから、あれ使って復興に当てるとええじゃろ」
「あ、ありがとうございます……。あなたは?」
ルイーズは金髪おかっぱの美少女を見ると、ポッとほほを赤くして言った。
「我か? 我は美少女戦士じゃ!」
そう言って、得意げに謎のピースサインのポーズを決める。
ポカンとするルイーズとヴィクトル……。
「レヴィア様、そのネタ、この星の人には通じませんよ?」
ルコアが突っ込む。
「あー、しまった。滑ってしもうた……」
恥ずかしそうにしおれるレヴィア。
ヴィクトルはコホン! と咳ばらいをすると、
「兄さん、彼女はこの星で一番偉いお方で、今回も彼女に危機を救ってもらったんだ」
と、説明した。
「一番偉い? 王族の方?」
キョトンとするルイーズ。
「王族よりも偉い……、この星を作られた方だよ」
ヴィクトルがそう言うと、レヴィアは腕を組んで得意げにふんぞり返った。
「へっ!? か、神様……ですか?」
「神様……とまでは言えんのう。神の使い、天使だと思うとええじゃろ」
レヴィアはニヤッと笑った。
「て、天使様。私はこの街の新領主、ルイーズです。なにとぞ我が街にご加護を……」
ルイーズはレヴィアにひざまずいた。
「我はどこかの街に肩入れする事はできん。じゃが、相談には乗ってやるぞ」
ニコッと笑うレヴィア。
「あ、ありがとうございます」
ルイーズは深々と頭を下げた。
レヴィアは両手をガッと持ち上げ、黒いラインを呼び戻すと、背後からヒルドの右半身にとりつかせた。
同時にヒルドは右手をレヴィアに向け、グガァ! と、叫ぶと、右手から青いビームをレヴィアに向けて発射する。
激しい爆発音が次々と起こり、同時に二人の身体が青白く光り始めた。
レヴィアはクッと歯を食いしばると、目の前を右手でブンと振る。すると、真っ黒い画面を四つ浮かび上がった。そして、目にも止まらぬ速さで両手で画面をタップし始めた。
ヌォォォォォ――――!
レヴィアが気合を入れ、タップ速度が上がり、金髪が猫のように逆立っていく。
ぐるぎゅぁぁ!
ヒルドの右半身は奇怪な音を発し、血をビチャビチャと
やがて二人の周りにはバチバチと音を放ちながら、四角いブロックノイズが浮かび上がってくる。
ヴィクトルは世界の
「よぉ――――し!」
レヴィアは叫ぶと勝利を確信した笑みを浮かべ、画面を右手でなぎはらった。
ぐぎゃぁぁぁ――――!
ヒルドは断末魔の叫びを上げながらブロックノイズの海へと沈んでいく。
レヴィアは腕を組んで、大きく息をつくと、
「静かに……眠れ」
と、少し寂しそうに声をかけた。
ブロックノイズが収まっていくと、最後に黒い丸い石がコロンと落ち、転がっていく……。
直後、黒い石はどろんと溶けると、白い床をあっという間に漆黒に変え、広がっていく。
「ヤバいヤバい!」
レヴィアはそう叫ぶと、ヴィクトルとルコアを抱えてピョンと飛んだ。
◇
ヴィクトルが気がつくと、三人は焼け焦げた麦畑に立っていた。
「主さまぁ――――! うわぁぁん!」
ルコアがヴィクトルに飛びついてきて涙をこぼす。
ヴィクトルはポンポンとルコアの背中を叩きながらルコアの体温を感じる。
ひどい目に遭わされそうになったルコアは、身体を震わせながらオイオイと泣いた。
ヴィクトルは甘く優しいルコアの香りに癒されながら、ゆっくりとルコアの背中をさすり、心から安堵をする。
ふと見ると、レヴィアは小さな水槽みたいな直方体のガラスケースを手に持っている。
「これ、何ですか?」
ルコアをハグしながらヴィクトルがのぞき込むと、中では黒いスライムのようなドロドロとしたものがウネウネと動いていた。
「これはさっきいた空間じゃな。奴を閉じ込め、コンパクトにしたんじゃ」
レヴィアはニヤリと笑う。
「え? ではこのドロドロはヒルド?」
「そうじゃ、暴力で訴えてくる者には残念ながら消えてもらうしかない。さらばじゃ!」
そう言うと、レヴィアは水槽に力を込めた。
水槽の中に青白いスパークがバリバリっと走り、水槽はブロックノイズの中に消えていく。怪しげな宗教で社会の混乱を狙ったヒルドは、こうやって最期の時を迎えたのだった。
ヒルドはヒルドなりに社会の活性化を目指したのかもしれないが、暴力を辞さない進め方が本当に人類のためになるのかヴィクトルには疑問だった。
「ヴィクトル――――!」
ルイーズが駆けてやってきて、ヴィクトルに抱き着く。
ルコアとルイーズに抱き着かれ、足が浮いて思わず苦笑いのヴィクトル。六歳児は小さく軽いのだ。
「見てたよ! す、凄かった! ありがとう!!」
ルイーズは声を詰まらせながら言った。
「麦畑全滅させちゃった。ごめんね」
ヴィクトルはルイーズの背中もポンポンと叩く。
レヴィアが横から言う。
「魔石が散らばっとるから、あれ使って復興に当てるとええじゃろ」
「あ、ありがとうございます……。あなたは?」
ルイーズは金髪おかっぱの美少女を見ると、ポッとほほを赤くして言った。
「我か? 我は美少女戦士じゃ!」
そう言って、得意げに謎のピースサインのポーズを決める。
ポカンとするルイーズとヴィクトル……。
「レヴィア様、そのネタ、この星の人には通じませんよ?」
ルコアが突っ込む。
「あー、しまった。滑ってしもうた……」
恥ずかしそうにしおれるレヴィア。
ヴィクトルはコホン! と咳ばらいをすると、
「兄さん、彼女はこの星で一番偉いお方で、今回も彼女に危機を救ってもらったんだ」
と、説明した。
「一番偉い? 王族の方?」
キョトンとするルイーズ。
「王族よりも偉い……、この星を作られた方だよ」
ヴィクトルがそう言うと、レヴィアは腕を組んで得意げにふんぞり返った。
「へっ!? か、神様……ですか?」
「神様……とまでは言えんのう。神の使い、天使だと思うとええじゃろ」
レヴィアはニヤッと笑った。
「て、天使様。私はこの街の新領主、ルイーズです。なにとぞ我が街にご加護を……」
ルイーズはレヴィアにひざまずいた。
「我はどこかの街に肩入れする事はできん。じゃが、相談には乗ってやるぞ」
ニコッと笑うレヴィア。
「あ、ありがとうございます」
ルイーズは深々と頭を下げた。