第30話(4) カオスなライブ配信

文字数 4,215文字

「は~い♪ 皆さん、どうも~♪ 豊園寺シスターズの賢い方、愁で~す」

 画面には笑顔で喋る愁が映る。

「賢い方ってなんだ、賢い方って!」

 画面外から哀の声が聞こえてくる。

「はい、ちょっと黙っていてね~。今日はなんと特別企画! 先日動画に出演してもらって好評だった二組を同時にお呼びして、色々と遊ぼうという企画で~す♪」

「好評だった二組? っていうか、これライブ配信かよ……」

 画面を見ながら勇次が呟く。

「それでは、どうぞ~♪」

「!」

 哀、千景、万夜、億葉、三尋の5人が登場し、動画を見ていた勇次たちが驚く。

「この間も動画に出て下さった新潟のお姉さん方ですね~今日は哀ちゃんとチームを組んでもらいます。よろしくお願いします~。あら……お兄さんはどちらさまですか?」

 愁は三尋に尋ねる。

「呼んでおいて酷いな! 上杉山隊……じゃなくて、お、同じチームの黒駆ですよ!」

「ごめんなさい……影が薄いからどうしても印象に残らなくて……」

「もうちょっとオブラートに包んで!」

「コメント欄も『男は要らん』という趣旨のコメントが目立ちますね……」

「そういうコメントも拾わなくても良いですから!」

「まあ、草食系の方ですから、皆さんどうぞご安心して下さい~」

 愁がカメラに向かって呼びかける。

「草食系って……」

「……あ、『そう言われると本当に草食ってそうな顔で草』とスパチャ頂きました~」

「どんなスパチャだよ⁉」

 三尋が声を上げる。

「さて、続いてはこちらの方々です。どうぞ~」

 長身で黒髪のベリーショートの女性を先頭に、茶髪のストレートヘアの女性、細身でスラっとした体格で左目の眼帯とオフホワイト色のセミロング髪が特徴的な女性、長めの黒い前髪を顔の両側に垂らし、後ろ髪は短めのポニーテール風にまとめ、口元を赤布で覆っている中性的な雰囲気の男性、短い茶髪の男性が登場する。画面を見た勇次が再び驚く。

「武枝隊まで⁉ なにやってんだよ⁉」

「此方が許可した」

「ええっ⁉」

「宣伝になればと思ってな」

「妖絶講を宣伝したらマズいでしょ……」

 御盾の言葉に勇次が戸惑いながら、画面に視線を戻す。

「こちらも先日出演して頂いた、山梨のお姉さん方で~す♪ よろしくお願いします♪ん? ああ、赤髪のパンキッシュなお姉さんですが、今日はお休みということなので……代わりに茶髪?のお兄さんを呼びました~」

「茶髪?って言い方はおかしいって! 一目瞭然だろ!」

 愁に対し、茶髪の男性が声を上げる。

「なんかこう……ぼんやりとしているんですよね……」

「目をはっきりと見て言うな!」

 首を傾げる愁に男性が抗議する。

「まあ、こちらのお兄さんもおまけ……もとい、人畜無害ですから、視聴者の皆様もどうぞお気になさらず~」

「その言い方、全然もとってないぞ!」

 茶髪の男性を無視して、愁が話を進める。

「さて、本日は……新潟チームと山梨チームに分かれて五番勝負をやってもらいま~す♪」

「よっしゃ!」

 哀が拍手をしながら盛り上げる。他の皆もそれに合わせて拍手をする。

「それでは早速勝負を始めます……新潟チームは誰が出ますか?」

「アタシだ!」

 哀が前に元気良く進み出る。

「哀ちゃんですね。山梨チームは?」

「私……朔月望(さくげつのぞみ)だ……」

 中性的な人物が前に出る。

「はい、朔月さん……ん? コメント欄が……『前に出ていた方と違うような……?』」

「ああ、忘れていた……」

 朔月がポンと両手を叩くと、どちらかと言えば、男性的な体格が女性的な体つきになる。

「⁉ あ、ああ、朔月さんお得意のマジックで~す♪ ……忍術を使わないで下さいよ!」

 愁が小声で朔月を注意する。

「すまん……」

「……そ、それでは最初の対決はこの二名です! 対決種目は『クイズ』で~す♪」

「クイズか……」

「体を使う系が良かったけど、まあいいか……」

 朔月と哀がそれぞれ頷く。

「それではこちらのモニターに注目して下さい」

 憂がモニターを指し示す。

「ふむ……これに問題が表示されるんだな?」

「そうです。準備はよろしいですか?」

「構わない……」

 朔月が頷く。

「早押し問題か?」

 哀が首を傾げながら呟く。

「それでは参ります……3、2、1、スタート!」

「えっ⁉」

 哀が驚く。モニターに3ケタの数字がフラッシュ式に表示されたからである。

「さあ、このフラッシュ暗算、答えが分かりましたか?」

「わ、分かるか! ただでさえ、暗算苦手なのに!」

「鍛え上げた動体視力を以てすれば簡単だな……」

「おおっ、では朔月さん、答えをどうぞ!」

「334789だ!」

「違います!」

「なっ⁉」

「それでは哀ちゃん!」

「いや、回答権を渡されても……494974!」

「正解!」

「ええっ⁉ 適当に言ったのに……」

 哀が驚愕する。

「まずは新潟チームが1ポイント獲得です! それでは次の対決は……」

「わたくしです……」

「新潟チームからは苦竹万夜さん! それでは山梨チームからは……」

「わたくし、風坂明秋(ふうさかめいしゅう)です」

 茶髪の女性が進み出る。

「はい、対決種目は『ゲーム』です!」

「ゲームですか、苦手ですわね……」

「同じく……」

 万夜と風坂が呟く。

「ならば条件は平等ですわね」

「負ける気はまったくしませんが」

「! 言ってくれますわね……」

 万夜が風坂を睨む。

「それでは……こちらのモニターでゲームをして、スコアを競っていただきます……」

「スコアアタック系のゲーム……?」

 万夜が首を傾げる。

「順番はどうされますか?」

 愁が問う。

「お先にどうぞ……」

 風坂が万夜を促す。

「そ、それでは……」

 万夜がコントローラーを手に取る。

「では、よろしいですね……」

「はい……」

「では、スタート!」

「有無を言わさずに始まるのですね……うおおっ⁉ な、なんですの、この螺旋階段は⁉」

 万夜が戸惑いながらゲームをプレイする。

「コメント欄も結構盛り上がっていますね~。『意外と上手いw』とか……」

「意外とってなんですの⁉ あっ……」

「苦竹さん、終了で~す。スコアはなんと! 一万点越えです!」

「なんと!と言われても全然達成感がありませんわ……」

「それでは風坂さん……」

「ふふっ、この勝負もらいました……」

「な、何を⁉」

「貴女のプレイを見て、操作のコツなどを掴むことが出来ましたからね……」

「し、しまった⁉ な、なんという策士……!」

「せっかくですから、わたくしはこのオレンジの部屋を選びます! あっ……」

「風坂さん、終了で~す。スコアは……百点以下……新潟チーム、1ポイント獲得!」

「策士、策に溺れる……」

「策以前の問題だったような気がしますが……」

 肩を落とす風坂を万夜が目を細めて見つめる。

「それでは次の対決は……新潟チームはどなたが……」

「アタシだ!」

 千景が進み出る。

「新潟チームは樫崎千景さん。山梨チームは……」

「自分、火場桜春(ひばおうしゅん)だ……」

 黒髪の女性がゆっくりと進み出る。

「両チームきっての脳筋、もとい、力自慢の対決です!」

「聞こえたぞ、おい!」

 千景の言葉を無視して、愁が進行する。

「対決種目は『お料理』です!」

「お、お料理だと⁉」

「時間がかかると思うのだが……?」

 戸惑う千景の横で火場が首を傾げる。

「ご心配なく! お二人にはお料理を食べていただきます!」

「なにっ⁉ 大食いか?」

「いいえ」

「早食いか?」

「違います」

「話が見えないのだが……?」

 火場が首を捻る。

「占い食いです!」

「ますます分からん……」

「とりあえずこの三皿の内、一皿を選んで食べきっていただきます!」

 愁がテーブルに乗ったカレーライスを指し示す。

「大した量ではないようだが……?」

「お二人、せーのでどうぞお選びください! せーの!」

「左だ」

「真ん中にするぜ!」

 火場と千景がそれぞれカレーライスを指差す。

「では、早速どうぞ」

「よっしゃ! うん、ちょっとだけ辛いな……」

「おおっと、樫崎さん小辛だ~!」

「しょ、小辛?」

「火場さん、どうですか?」

「……まあまあ辛いかな?」

「これは、中辛だ~! よって火場さんの勝利! 山梨チーム、1ポイント獲得!」

「な、なんじゃそらっ⁉」

「なるほど、占い食いとはそういうわけか……」

 困惑する千景の横で火場が頷く。

「どうせなら大辛を食べて欲しかったところなのですが……まあ、お二人とも持っていないということで……」

「何故だか勝った気がしない……」

 愁の言葉に対し、火場が目を細める。

「それでは次の対決は……新潟チームはどなたが……」

「拙者でござる!」

 億葉が進み出る。

「新潟チームは赤目億葉さん。山梨チームは……」

「私、林根笑冬(はやしねとう)です……」

 オフホワイトの髪色の女性が静かに進み出る。

「両チームきっての頭脳派の対決! 対決種目は……『お絵描き』です!」

「お、お絵描き⁉ あまり頭脳関係ない!」

 億葉が戸惑う。

「スケッチブックは持ちましたね? 制限時間1分! モデルは私! さあ、スタート!」

「ええっ⁉ 短すぎる……!」

「『描画モード』に移行します……」

「……はい、終了! それではお二人の作品を見てみましょう……赤目さんの作品は……これはふざけているのですか?」

「ご、ご存知ありませんか? これはキュビズムというやつでござる!」

「ピカソに今すぐ謝ってきてください……林根さんの作品は……な、なんと見事な出来栄え! まるでAIが描いたかのような……」

「それほどでも……」

 林根が後頭部をポリポリと掻く。

「びょ、描画モードに移行とか言ってたでござるよ! ズルではござらんか⁉」

「赤目さん、見苦しいですよ……山梨チーム、1ポイント獲得!」

「そ、そんな……」

「さて、次の対決ですが……借りているスタジオの時間が迫っています。視聴者層的にも、男性同士の戦いには需要が無いので、カットさせていただきます」

「ええっ⁉」

「よって今日の勝負は2対2の引き分け、皆さんありがとうございました! 高評価、チャンネル登録をお願いします! それではごきげんよう!」

 唖然とする三尋の横で愁が満面の笑みで手を振る。

「な、なんで呼んだのですか……ねえ、仁藤殿? あれ?」

「はあ、はあ……真打は遅れてやってくるもの! 仁藤正人(にとうまさと)、只今参上!」

「え? 先ほどまでおられませんでしたか?」

「へ? いや、迷子になっていて、今着いたんだが……」

「?」

「? ?」

 部屋に入ってきた茶髪の男性、仁藤と三尋が見つめ合いながらライブ配信は終了する。

「お、終わった……」

 勇次が呆然と呟く。
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