文化の日 

文字数 947文字

「こんなところにテントはって、笑い話だよね」
柊は そう言いながら庭にテントを設営している。
「遊びだよね。こんな生活」

柊はそういいながらポールを組み立てている。みかんとゆずは邪魔にならないように見ていたが、
「早く、二人ともテントを張るの 手伝って。
あと、今日はバーべキューだから、脇に置いておいたバーべ級ーの道具を持ってきて」
ゆずとみかんは顔を見合わせおずおずとテントの端を引っ張り始めた。それが終わると
「みかん、一緒に持ってこよう」
ゆずはみかんの手を引いて脇に向かった。
ゆずはみかんと一緒にいるときには 妹と手をつないでいる。年が七つも違うのだから可愛いのだろう。
「コンロはお兄ちゃんが持つから、その炭をみかんもって」
「はーい」
二人は要領よく荷物を運んでくれていた。

「ゆず、塾は?」
のんきそうな声で、柊が聞いた。柊とゆずは朝と夕方 一緒のせいか、結構二人の世界が出来上がっているような気がする。
「今日はお休みです」
「そうなんだ。
勉強大変だったら、気にしないで、勉強初めていいから さ」
「ありがとうございます」
ゆずも少しずつだが 心を開いてくれているような気がする。

バーベキューの用意は柊がしてくれた。
肉は石川精肉店で頼んでおいてくれて 野菜も近くの直売場で、結構な数を仕入れてきてくれた。
柊は趣味が料理という男だ。独身生活が長いせいか、はっきり言って柊の料理は私よりうまい。
「今日は、いい肉を用意したんだ。ゆずはたんが好きなんだよな。みかんは?」
「牛肉」
「そうか、」

「最後にみかんが作ってくれた チーズケーキを食べましょう
抹茶いりだよ」
「抹茶入りだよ」
みかんが嬉しそうにゆずを見上げながら言っている。
「そうか、すごいな」
ゆずは目を細めて返事をした。

「おいしいね。お肉」
隣に座っているみかんに目配せをすると、
「うん、すごくおいしい」
と、みかんは皿の上のカルビと格闘していた。
「みかん ちゃんと野菜も食べるんだぞ」
ゆずは、相変わらず遠慮がちだ。

中学三年の男の子 なんだか、ひどく微妙な年ごろだ。
優等生らしく 学校の成績はかなりいいようだ。
妹思いで 礼儀正しく優しい子 それが、私が知る柚月だ。

なんとなく 話しにくいが いい子だということはわかっている。
焦らず、少しずつだ。

そう自分に言い聞かせる。 





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