第37話 体育祭前日(改改)

文字数 10,448文字

美登里side
カタカタッカタカタッ
チュンチュン
屋根の上で何かが歩く音、雀の鳴く声。
雀が歩いてるんだろうか?
冷たい風と暖かい日差しがカーテンの隙間から窓を通して顔に降り注ぐ。
その眩しさに漸く目が覚める。
え?なんかいつもの朝と違うことに気づく。
もしかして?あたし昨日と同じ服装?
昨日帰って直ぐに部屋に戻り着替えないでそのままベッドの上に倒れて寝ちゃったんだ。
そういやお腹空いたな
机の上に置いてある卓上デジタル時計を見るとまだ5時で流石にママたち寝てるよね。
何か食べようと階段をそっと下りようと近づく。
隣の部屋、つまりママの仕事場のドアの下の隙間からは電気が漏れていた。まだみんな仕事してるんだね。おつかれさん。
「久々によく眠れた!」
あとでユッコにお礼言わないとね。
今日のホームルームは体育祭の種目分けするんだったな。確か一時限目よね。
毎年10月の第二土曜日に開催するのが東郷中の恒例行事で早いもので今週の12日の土曜日。
毎年忙しない、さっさと早目に決めれば良いのに毎年第二月曜日に決める。
そしてリハーサルは翌日にやる、しかもその日1日かけて。
啓ちゃんって今までこの期間はどうしてたんだろ?
第二月曜日は体育着に着替える必要ないから来ても差し障りないけど明日はそうは行かないよね。
さてと昨日の夕飯残ってるとありがたい。
あたしはそんな事を考えながら階段の踊り場で軽く体操をやっていた。
両腕を伸ばす運動、足の間隔を少し開き足を横に曲げながら両腕を同時に横に広げて戻す時に胸の位置で交差する動作を二回繰り返す運動、足を閉じ両腕を同時に横に広げて手の平と甲一回ずつひっくり返し手の平の部分を下へ静かに下ろしながら深呼吸し呼吸を整えるとダイニングへ向かうため足を右足から一歩踏み出し歩きはじめた。
ダイニングに着くと冷蔵庫の中を確認、一段目には、コンビニで買った残りもののお惣菜が紙皿に盛ってラップされ、右隣に紙パックのニンジン野菜ジュースが6本セット封されたままで、二段目には500mLペットボトルの緑茶、ほうじ茶、ポカリスエットのドリンク三本が蓋が手前の状態に寝かせてあり、右横には無造作にビニールで梱包されていた縦に重なった紙コップがビニールを適当に破いて開いたままなので飛び出て来そうになって置いてある。
そもそも紙コップまで冷蔵庫に入れる意味がわからない。
たぶん、アシさんたち横着したかったんだろう。
お惣菜は(ろく)なのしか残ってなくてがっかり、えだまめ、フライドポテト、焼き鳥ってお酒のおつまみじゃんか、まあないよりかましか。
さりげなく三段目見るとビールやカクテルなのかな?お酒が入ってた。しかもいい加減に乱雑に、
この状態をみると呆れて笑うしかないね。
その紙コップたち?の奥には隠れるように海苔が微かに見えて、もしかして?おにぎり?
邪魔くさい紙コップたちを手前にずらし奥からそれを手探りで右手で掴み取ると大当たりだったので思わずガッツポーズ!ビニール梱包され剥き出しの割り箸まで発見!冷蔵庫から出した物をダイニングテーブルにそれぞれお惣菜盛った皿、ポカリ、オニギリ、紙コップ(落とさないようにそっと抜く)、割り箸(そっと一然抜く)と順々に置いていく。
立ったまま食べはじめてから30分もしないうちに食べ終えると歯を磨くため、洗面所へ、そして自分の部屋に戻り学校に行く準備を終え、仕事の邪魔にならないよう忍足で玄関から外に出ると同時に男子の制服姿の啓ちゃんと鉢合わせ。
「おはよう!啓ちゃん、今日もいい天気だね。どうしたの?なんかボーとしちゃって、で、デートどうだった?」
啓祐「おはよう!美登里!別に、、ただ昨日半日ずっと慣れないことしてたから疲れてただけだよ。あとこの姿の時はその呼び方やめてくれないか」
周囲を見廻しながら焦った口振りで言う啓ちゃん。
「あ!ごめん、啓ちゃんじゃなくて啓くんだね。切り替え難しいよ」
ついつい女だって知ってるから女友達感覚が抜けなくて思わず右腕を組んでしまう。
更に焦る啓ちゃん、違った今は啓くんだねぇ
「なんだか可愛い。そう言えば声が啓ちゃんになってるよ。いつもしないミスなんかしちゃって、大丈夫なの?あと内股になってる。」
そんな啓くんをみていつもより声のトーンが高い事に気づき、しかもいつもよりもお淑やか?
そのままじゃ不味いと思いあたしは教えてあげた。
啓祐「え!?マジ?やべぇ」
やっぱり本人気づいてなかったらしく、あたしがそう言ったもんだから慌てて家に駆け込み、暫く出て来そうもないかな。
と思ったあたしはと言うと時間にまだ余裕があったので待っているあいだ久々にスマホゲームをする事に、、
ようやくコンボ続いて高得点出そうってとこで啓くんに声をかけられて
その声はいつもの変声器で変えた啓くんの声なんだけどなんか明らかに今までの啓くんと不思議と違って見えた。
そう、話し方が若干だけど綺麗になってるんだよ。
啓くん、その事に気づいてないみたいだけどね。
啓祐「さあ、行くかって、、て、え?何さりげなく腕組んでんだよ!やめろって」
「ウフフ、今頃気づくなんて遅すぎ、そうだよねー今はどう見ても異性同士に見えるから噂されたくないよね。」
そう言いながらもあたしは腕を組むのをやめなかった。
「で、啓くんは今年も体育祭休むの?噂では3年生は強制参加させられるみたいだよ?」
啓くん、焦ってる、焦ってる。
あくまでも噂なのは間違い無いけどね。
「あ?飛騨先輩だ!」
今度は顔が赤くなって内股に戻ってる。
「て、嘘だよ!リアクション見たかっただけ、でも体育祭の話は噂だからね。それにそんな、わかりやすい反応したら不味いんじゃないの?あ!無理か、心はすっかり恋する乙女だもんね」ってからかい半分、冷やかし半分してたら益々顔が赤くなる啓くんはいつもなら怒るのにまたボーとしてる。大丈夫かな?こんな調子でいて、もうすぐ学校着くんだけど

啓祐side
昨日のデートの余韻が今でも残ってる。誠とデートした時、アイツに、はじめて女の子扱いされた、、それが凄く嬉しくて心地よかった。
このまま時間が止まれば良いのにと何度も思った。
今朝から起きてずっとボーとしていた。
いつ制服に着替えたのか?
ちゃんと朝ご飯食べたのか?
記憶が曖昧で気づいた時には家の玄関の前で美登里に声をかけられても暫く放心状態、オレ、大丈夫かな?
誠の顔まともに見れるかな?
意識しないかな?
美登里に声かけられてもうわの空だった。
え?あ!変声器忘れてたんだ!
美登里に言われるまで気づかないなんて、声が地声なのに、ホント今日のオレ変だ!
まだ一歩も動かない時点で指摘されたので直ぐに三階の自分の部屋に戻る事が出来た。
あとサラシしてたっけ?
結局男装用下着、親父に貰ったんだっけ?
あれ?記憶が飛んでる。
左腕の腕時計を見たらまだ時間にゆとりがあったのでサラシをしてるかついでに自分の部屋で確認してみる事に、その前にふと母さんに親父から男装用下着貰ったか聞いてみようと階段へ向かい踊り場まで戻ると二階下のリビングの方へ目を落として呼んでみたが返事が返ってこないので
ベランダかな?
そこでベランダのある自分の部屋へ戻る事にした。
再び自分の部屋に入るとサラシの状態を今度こそ確認する為、上着とワイシャツだけ一度脱いでみることにした。
やっぱり(ほど)けかかってる?
最近、また大きくなったのかな?
サラシを強く巻く度に胸が締め付けられて痛いから少し緩めに巻いている。
多少は大丈夫かと思ったからで、でも実際は大丈夫ではなく解けかかっているわけでもし完全に解けたら、、
そう想像したら怖くなった。
やっぱり巻き直そう。
痛いけど我慢して強めに巻き直し制服を着直すと、母さんがいるかもしれないベランダへと向かう。
開いたままの天井まで届きそうな大きな窓に向かってまた呼んでみた。
なんで窓が開いてるのさっき気づかなかったんだろ?「母さん?」
また再び母さんを呼んだ。
今度はその開いてる窓からベランダに出ると洗濯カゴから洗濯物を取り出し衣類を両手で(しわ)にならないようピーンと横に引っ張り物干し竿にかかっているハンガーにかけて洗濯バサミで止めてる作業をしている母さんの後ろ姿が目に入ったので声をかけてみた。
香苗「啓祐、あら!?出たんじゃなかったの?」
タイミングいいとこで次の洗濯物を手に取ったとこでオレの声に気づき、手を止めこちらに振り返って母さんは言った。
「あのさ、男装下着、親父じゃなくて父さんから貰ったっけ?」
ついつい父さんって普段言わないから癖で親父って言ってしまい言い直すけど
香苗「まだだと思うわよ!それにもう必要ないでしょ?」
母さんは、意外にもそこには触れなかった。
「なんで?まだ数日必要だよ!それに今のままだとサラシが直ぐに解けやすいんだ。父さんは今晩いるかな?早急に必要なんだけど、おそらく明日体育祭の予行練習だと思うから、明日必要なんだ!」
オレは違うとこに触れてきたのでちょっとがっかりしつつ母さんに訊ねてみた。
香苗「父さんは確か泊まり込みよ。それは急すぎるわね。わかったわ。今日忘れずに必ず連絡して明日間に合わせるよう伝えとくから、今日は仕方ないからサラシでなんとか乗り切りなさい。1日くらい痛いの我慢できるでしょ?それにそろそろ学校行かないと流石に遅れるわよ。気をつけて行ってらっしゃいね」
やっぱりまだだったのか、、オレ今までなにしてたんだろう。そう思っていたら母さんは再び作業の続きをすべく手を動かし黙々と残りの洗濯物をカゴから出して洗濯竿に干していった。
「わかった!ありがとう。うん。気をつけて行ってきます。」
母さんの作業している後ろ姿にそう言い残すと、階段を下り玄関から漸く外に出た。
親父に明日間に合わせるよう伝えるからの母さんの言葉に今は頼るしかないな。
玄関前で待っている美登里に声をかけるがスマホをいじくり回していた。
「ごめん。結構待ったよな?ん?美登里なにやってんの?」
反応がないのでもう一度声をかけてみると
美登里「じゃーん!テトリス」
と言ってスマホ画面をオレに見せ、慌てて引っ込めた。
またドラえもんのノリかよ!
「テトリス?美登里ってゲームするんだ。」
美登里「うん、極たまにね。」
スマホの画面を直視し指を動かしながら答えた。
「おもしろい?オレでもじゃなかったワタシでもできるかな?」
と話しかけると
美登里「啓ちゃん?その服装の時は無理しなくて良いのに、クスッ」
ゲームしながらでもちゃんと話の内容聞いていて受け答えてるのですげぇなーと思い、またついつい話かけてしまった。
「あ!そうだよな。あの美登里、、」
美登里「なに?ちょっと待って今、いいとこだから、、あー!ダメだったか。くやしい」
やっぱり若干不機嫌になってる美登里、もしかして?話しかけるの不味かった?
スマホの画面を見るとブロックが積み重なり過ぎてgame overの文字が浮いていた。
美登里はスマホの手帳型ケースを閉じ漸く歩きだし、オレはそのあとに続いた。
美登里「で、どうしたの?」
「あのさ、今更だけど誠に会っても大丈夫だよな?それと、、」
美登里「それと?」
美登里は首を傾げて返しした。
「中学最後だから体育祭参加したいけど大丈夫かな?親父に男装用下着貰う約束してて身につければきっとバレないと思うんだ。」
美登里「え?いくらなんでも無茶でしょ?着替えどうするの?あたしは反対だよ。バレるバレないの問題以前に啓くん?女の子なんだよ」
やっぱりそうくるよね。
思っていた通りの言葉が返ってきた。
「わかってるけど、無茶だって事は、だけど見たいんだ!アイツが活躍してる姿、いつも写真しか見てなかったけど実際この目で見たいんだ。見ないと一生後悔する気がする。ダメかな?やっぱり」
それでも今の素直な気持ちを誰かに聞いて欲しかったんだと思う。
美登里「気持ちはわかるけど、ダメに決まってるでしょ?もう少し辛抱すれば女の子に戻れるんだから文化祭の時でいいんじゃない?」
わかるけどそれじゃ、ダメなんだよ!
どうしたら理解してもらえるんだろ。
「だけど誠の闘ってる姿、文化祭じゃ見れない。体育祭だから意味があるんだ。」
美登里「あたしがいくら反対してもダメなんだね。先輩たちにも相談した方が良いよ。」
「うん、わかった。」
なんとか気持ちは言ったけど公美子たちと相談しても自分の気持ちはきっと変わらないと思う。
???「よ!おふたりさん!おはよう」
ドキッとした。
声のする方を振り返ったらやっぱり誠だったから。
美登里「あ、今日、日直当番だったんだ!飛騨先輩、啓くん!お先に」
そう言うと学校の正面門を先に越えて小走りで行ってしまう。
ちょっと!思わず引き止めたくて右手を伸ばす。
でも自分の思いと裏腹に美登里の姿は校舎に吸い込まれるかのごとく消え去った。
美登里は気を遣って二人きりにしてくれたんだろうけど、なんか気まずいよ。
昨日、デートしたばかりだしトップスだと思って着てた服が母さんにワンピースだと指摘され思い切って慣れない膝丈より短めのワンピを着てたのを半日コイツに見られてた訳で、思い出すと恥ずかしいやらまともに誠の顔見られない。
啓子はオレであってオレじゃないのに、まずい。
こんなんじゃきっと変に思われるよな。
なにか話さなきゃ
「お、///はよう!あのさ、、デートどうだった?」
思い切って話かけてみたものの心臓がバクバクいって今にも飛び出て来そうで、それになんか顔が熱い!
なにこれ?
誠「最高だよ!途中邪魔が入る迄はな。啓子ちゃんの兄貴だかしんねぇけど、こっちはデート中なんだから気まわせっつうの。」
誠はいつもと変わらない感じで話してんのに、上手く言葉が見つからない。
最高ってそんな事言われたら余計に動悸がドンドン早まってく。
「へー。そうなんだ///」
静まれ心臓、と自分に言い聞かせてようやく出た言葉だった。
誠「お前、さっきからどうした?具合でも悪いのか!?」
やっぱり、そうなるよな!
でも動悸が止まりそうもないし、それでもなんか言わないと、、
「え!?///なんでもないよ」
あー。誠、あんまり顔じっと見んなって、心臓に悪いから、未だに心臓がバックンバックンいっている。さっきよりも早まって
誠「なんでもないって顔じゃねえだろ?」
なんで誠はこう言う時だけ鋭いんだ?
これ以上、オレ平常心保つの無理!
「誠、///ごめん。オレ、///先に行ってるからあとでな」
なんとかその場から逃げたくてそう言うと
誠「変な奴だな。やっぱり啓祐?熱でもあんのか」
そう言われるとは思ってはいたし、優しい誠の事だからオデコに触れ熱があるかどうか確かめるに違いない。
だからこれ以上、誠の側にいたら意識し過ぎて男のフリでいられなくなりそうでそう思ったら足は勝手に動き出して逃げるように校門を(くぐ)った。
そして三年A組の教室前までくると一旦足を止めて深呼吸を一回し気持ちをリセットしてから教室のドアノブに右手をかけて教室に入ろうとした瞬間、後ろから声がしたのでドキッとして振り返ると
???「啓祐!おはよー?どうしたの?浮かない赤い顔して」
相変わらずツインテールをしている公美子が悩み事無さそうな清々しい感じでニコニコして話しかけてきた。
公美子だとわかるとホッとした。
「あ?公美子!おはよー!あの、その、誠を()いてきた。なんか緊張しちゃって、どんな顔したらいいか分からなくって、心臓に良くないから」
公美子だと何故か今の心情をスラスラ言える、美登里には上手く話せないのに
公美子「クスッそんなのいつも通りにしてればいいんだよ。なんか反応が可愛いな。飛騨くんにかなり意識してるねー。やっぱり女の子なんだねー」
公美子もまたオレの秘密を知ってからなんでも話すようになりいつの間にかそれが自然になっていて、オレからしたらはじめての同性の親友で姉ちゃん的存在だから話しやすいのかな。
「公美子!笑うなよ!それにここ学校!まだ公に出来ないんだから、誰が聞いてるかわからないだろ?」
だからすんなりと言い返せるわけだけど、再びドキドキが誠の時と違う動悸、緊張から来るものかもしれない。
誰かに聞かれてるんじゃないかと言う不安や焦りからくる緊張感。
後ろから更に声がするのでその方に振り返ってみると、、
???「いったい、なんの話?ふあー(両腕を上に伸びして大きく口を開き欠伸)流石に眠いわ。ついつい占いの本に夢中になって読んでたから寝るの遅かったんだよね。ふたりともおはよー。」
相変わらず懲りない楓だな。
楓でよかったと再び安堵(あんど)した。
無我夢中になると楓は夜更かしするのはいつもの事なので別に驚きはしなかった。
公美子とオレはどちらかと言えば消極的なので楓とは対照的、楓は積極的で男女問わず誰とでも仲良く出来る性格。
社交的なとこがある。
占いの話で人を惹きつけるのが上手いからかな。
自然とみんなが寄ってきやすい。
それでいて口は堅いから助かってはいるし、なにかと相談相手になってくれるが美登里と同等にしつこいとこもあるので油断すると(ろく)な目に合わない。
例えば鷲掴みとか。
なんの鷲掴みかって?聞かないで///
いつの間にか楓とは公美子を通して話の流れではじめは異性の親友って感じで絡んできていたけどカミングアウトしてからは今は同性として接してくれている。
「楓!おはよー。夜更かしってお肌に良くないらしいぞー。」
女らしさとは?の本で覚えたての美容についての注意点を教えると
楓「あー啓祐には言われたくなかった。だってしょうがないじゃん。例のアイテムのクッキーの謎やそれを体験した人たちのコメントが載ってたんだからついつい気になって読んじゃったんだから、それに、、ニヤ、、知りたくない?」
オレから指摘されるのがかなり気に障ったらしく口を膨らませたあとニヤけて言うもんだから思わず席に着く前に問い詰めようとした矢先。
バターンとドアを開ける音がして誠が教室に顔だけひょっこりして「おはよう」と一言、オレたち三人に向けて纏めて発したあと、行き当たりばったりに一人一人に適当に朝の挨拶の巡回をしていた。
そのあと、楓、公美子に改めて挨拶して最後にオレのとこに来た。
やばい心臓がまたバクバクいってる。
誠「さっきはなんで逃げた?俺たち親友だよな?」
そんな誠、怒るなよ。
やっぱり苦しい、泣きたくなる。
心臓が苦しいよ。お願いだから、そばに来んなよ。
男のフリなんて今まで平気だったのに、なんで?
「それは、その///」 
声が顔が手が震えてきた。
これ以上なんて言って誤魔化せば、いや実際はずっと(あざむ)いていて女の子に戻ったとしても許してくれる? 
言葉を詰まらせて、今にも涙腺が(ゆる)みかけた時だった。
公美子「逃げてたんじゃないんじゃないの?親友って聞いて呆れるわ!親友なら察しなさいよね。」
公美子が間に入ってフォローしてくれている。
それはありがたいけどこれ以上余計な事言わないで
誠「田辺、じゃあお前なら分かるのかよ?」
オレは公美子に向けて目だけで訴えたけど果たして通じただろうか?
お願い察して、まだ誠には言わないでと
公美子「ええ、分かるわよ。この鈍感男!」
公美子は、危うく言いたい気持ちを抑えてなんとか誤魔化してくれたけど、、
鈍感男って
誠「おまえ?今、なんて言った?」
誠は逆ギレ?
???「みなさん!静粛に、立ってる方々、着席お願いします。先日、生徒会で議会が催されました。決定された内容を報告します。」
口喧嘩になりそうなタイミングの時に教壇の後ろにいつのまにか立っている黒髪の腰の長さまであるおさげ、黒縁メガネ、身長150くらいの生徒会の役員書記の黒川(くろかわ)(あおい)が声を張り上げクラス皆んなの注目をこちらに向けようとしていた。
偶然とは言え、そのお陰で口喧嘩にならずに済んでるけど、オレが原因でこんな事になってしまったかと思うと正直、辛い。
涙腺は今にも開きそうで、そんな中、挙手する男子生徒が一人いた。
黒川葵「どうぞ、古谷(こたに)くん」
古谷「あの、黒川さん?矢吹先生はどうした?」
黒川葵「先生は弓道部へ行ってるわ。今年から体育祭の日は部活動禁止!全員参加になった事を部員に説明しに行ってます。決定事項です。毎年、参加者が少ないため、開催費用が赤字続きでこのままだと廃校の危機とあって多数決の結果決まりました。神条くん?そう言う事なので協力宜しくね。」
「え?強制?マジで?」
参加したいとは思ってたけどいきなりそう来るとは、、マジで泣きたい!
黒川葵「そうよ!なんか問題でも?」
狼狽(うろた)えてるオレを見て黒川さんは(たず)ねた。
正直に答えられる訳もなくて、、
次に公美子が挙手してきた。
黒川葵「田辺さん?なにかしら?」
公美子「家のどうしても外せない用事とかでも参加しなきゃだめなんですか?」
黒川葵「そうなるわね。欠席したら内申に響くそうだから」
男子生徒A「マジかよ」
女子生徒A「今更、酷くない?」
男子生徒B「そうだ!そうだ!横暴だよな?」
心配そうに公美子がオレを見ているのを感じたけどいずれにしても中学最後だから参加したいと思ってたし相談する手間が省けたから良しとして、だけどやっぱり初めての体育祭だから正直不安ではあった。
先ず着替える場所を予め考えないといけないわけで、そんな時スマホの着信がなった。
やばい、マナーモードし忘れてた。
黒川葵「え?なんの音?」
「あ?黒川さん、ごめん、オレだよ。うっかりしててマナーモードに切り替えてくるから廊下に出るね。オレの事は待たなくていいから引き続き続けてて」
黒川葵「わかったわ。前もって今後は気をつけてね」
オレは廊下に出るため教壇側のドアに近づくとドアノブに右手をかけ手前へ引き、教室から出た。
さりげなく誠を見るとスマホをいじってるようで、まさかさっきの着信音て誠からなんじゃ
不味いタイミングに着信が鳴ったから絶対、誠、おかしいと思ってる筈だ!
思ったとおりLINEに誠からのメッセージが入っていた。もちろん、啓子宛に、なんでこんな時に誠のバカ!


とりあえず文章を打ち込むと返信!
直ぐに既読になって


駄目じゃないけど無理だよな。
全員、体育祭強制参加じゃ
あとで返事の内容考えよう。
廊下でスマホをいじくっていたら予鈴が鳴った。
ホームルーム終わりか、明日、予行練習どうしよう。
結局、オレ体育祭種目何に決まったんだろ?
ドアがバタンと勢いよく開くと生徒が数人、次から次へと廊下に出て来た、きっとお手洗いだろう。
オレは教室に戻ろうとしたと同時に右肩に絡む鍛えられた腕があった。
動悸が止まらないオレはゆっくりとその腕が誰なのか振り返り確かめる。
確かめなくてもいつもの事だから分かり切ってはいるけど
???「よ!啓祐!観念(かんねん)しろよー議会で決まったんだからさ!ん?なに真っ赤な顔してんだよ?」
やっぱり誠だ!
静まれ、オレの心臓!
「な///なんでもないよ。はやく教室入ろう。腕絡むのやめてくれない?」
誠「おぅーなんか調子狂うな。そうだ!体育祭、彼女来て欲しいって誘ったんだけど、既読されてるからそのうち返事くると思うんだ。めちゃ楽しみだな。体育祭!彼女来てくれるかな?」
そんな嬉しそうな顔で言うなよ。
断りにくいだろ
「///きっきてくれるんじゃね、、ないの?オデコ触んなよ///きっと軽い風邪だから大丈夫だ///」
オレの顔が赤いから熱があるか心配でオデコに触れて確かめようとしてくれてるけど、そんな事されたらオレ、平常心でいる自信ない。
オレがその手を払ったので誠は眉間に皺を寄せ不快そうに首を傾げていた。

背景side
一方その頃、東郷中学空手部道場の裏庭では不良ふたりがタバコを吸い(たむろ)していた。
???「おい!聴いたか?顧問先公の話、今年から体育祭、強制全員参加って、とおとお予定通り復讐が出来るって事だろ?」
???「だよな!遼!でもよー、あの相棒をなんとかしねえとまた俺ら勝ち目ねえだろ?」
浅羽遼「そう思って予めコイツの弱みあるか調べたんじゃねえかよ。おい見ろよ、この飛騨の横に居る女、神条にそっくりじゃあねぇか」
浅羽遼はタバコを(くわ)えながらスマホ画面を親友の楠木廉に見せた。
楠木廉「ホント、マジでそっくり!この画像どうしたんだ?」
浅羽遼「後輩がたまたまショッピングプラザでふたりを見かけて尾行して写真撮ってLINEで送ってくれたんだ。どうやら神条の従妹らしいぞ。これをネタに土手に(おび)き寄せようぜ。神条は先輩一人に任せてよ」
楠木廉「でも遼、結局は俺たちボコボコにされるってことだろ?相手は先輩に並ぶ紅白帯だろ?」
浅羽遼「多少の痛みの代償は仕方ねぇだろ?2年前のあのチビ、神条にやられるよりかマシだ!要はあの神条のチビを痛みつければ復讐は完了だよ。そこまでやらねえと気が済まねえんだよ。出来れば俺が倒してえけどアイツちいせえ癖に強いだろ、先輩に任せた以上、この作戦で行くぜ。いいな!他の奴らにはLINEで一斉に連絡すりゃーいいだろ」
予鈴がなる。
???「君たち、そこで何している?もう授業始まってる時間だぞ!この匂いは?タバコ?未成年がタバコなんていけないってわかってるはずだろ?こら!待ちなさい」
浅羽遼「やべ!先公だ!面倒いから廉!逃げるぞ〜!」
楠木廉「ちょっ、ちょっと待てよーあぁ、タバコもったいねぇ」
浅羽遼は吸い始めて間もないまだ長めの咥えていたタバコを右の人差し指と中指に挟み直し、そして投げ落とすと右足で踏み火を消してその場から離れるように去っていく。
それをみていた廉はぶつぶつ文句を言いながらそのあとを追いかける。
その様子を窺う空手部顧問の稲部国篤先生は待ちなさいと言ったものの呆れたため息を吐き追いかけはせずタバコの吸い殻を拾いティシュに包むとポケットへ入れて、次の教室へと向かうのだった。

第38話 体育祭当日(改)に続く
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