第34話 神社と猫

文字数 5,467文字

啓祐(啓子)side
ペットパラダイスで学にいに青龍神社の猫カフェを教えてもらい店を出たのが30分くらい経過したときじゃないかと思う。
どうしてそんなにかかったかと言うと誠が学にいが店を出て居なくなった途端に店内のゲージに居る犬達に近づき、可愛いでちゅねーと赤ちゃん言葉で話かけて無邪気に笑いかけ、その次はペット専用の服を見てとてもうれしそうな笑顔を浮かべていて学校では見せない意外な一面にこっちは見惚れてしまっていたのでついつい時間がどのくらい経ってるのか気にも止めてなかった。
ただただ誠ってこんなに犬好きだったんだなぁと自分の事のように嬉しくなっていた。
そう言えばついさっきまで機嫌悪かったのに犬たちのお陰ですっかり上機嫌になってる?
その(あかし)として誠が柴犬のキーホルダー同じもの2個をレジに持ってきて
誠「デート記念に、啓子ちゃんにも同じの持ってて欲しいから」
と言ってお会計してくれたのだ。
お会計後、誠から受け取ったキーホルダーを早速ピンクのバックにつけた。
誠は自分のスマホに付けたみたい。
誠「啓子ちゃん!ごめん、つい時間を忘れてさあ今度こそ移動しようか」
「いいえ、大丈夫ですよ。あの、、キーホルダーありがとです。」
って感じで店を出てきて駅を目指して歩き出して更に10分経過したころ、いつの間にか銀杏の木のある白いフェンスのところまで戻っていた。
プランターには色とりどりの花が植えており風でゆらゆら揺れている。
ここまで来たらそろそろ駅に辿り着くだろう。
実は店からずっと誠は手を繋いだままずっと放す気はないようで流石にキーホルダー受け取った時だけは放してくれたけど、バックにつけ終えると即またしっかり握られていた。
まだ慣れないワンピースは風で裾が揺れていた。
誠「えっと、青龍神社って確か旧軽井沢だったよな?啓子ちゃん?」
「え?」あ!そっか今、オレ、啓子だっけ
その名前で呼ばれ慣れてないのとずっと手を握られたまま緊張のあまり意識が何処かへ行っていたみたい、また動悸が再びバクバクと高鳴りボーっとしていたので反応が2、3分ほど遅れたのだ。
「だと思います。行くのは久しぶりなので曖昧な記憶ですが」
誠「これみるとバスかタクシー乗ってった方が早くね?」
誠はチラシに載っているアクセス情報を見てから話出すと再び、繋いだままのワタシの右手を引っ張りバスターミナルへと誘導するのだった。
バス停は長蛇の列になっていて見るからに座りそうもないな。
と諦めた時だった、また誠がワタシの手を軽く引いて進み出したのだ。
え?誠?どこ行く気だよ?
そう思っていたらいつの間にかタクシー乗り場に連れて来られた。
誠「なんか啓子ちゃん!辛そうだから、タクシーにしようぜ!」
「え?誠くん!タクシー代勿体無いので自分なら大丈夫ですよ」
誠「いいから、気にしないで」
タクシーの後部座席ドアが開き、それと同時に背中を軽く押されたので乗らざるおえなくなり右側奥の席に座りきると続いて誠が乗ってきた。
タクシー運転手「お客さん?どちらまで?」
後ろを振り返る運転手は50代後半くらいにみえる。
その顔は丸顔で爽やかなスマイルと同時に口角が上がりエクボが一際目立つ。
誠「青龍神社までお願いします」
タクシー運転手「はい!わかりました。」
顔の向きを戻す際に気になる笑みを浮かべたのは気のせいかな?
タクシーは発車しだす。
ワタシは緊張のあまり固まってしまって
誠は左手を握りしめたまま、沈黙が到着するまで数分間続いた。
そして数分後、、
タクシー運転手「(苦笑)お客さん?着きましたよ」
運転手に苦笑いされたみたい?あれ?もしかして?始めからされてたとか?
誠「、、、あ?、すみません。おいくらですか」
そんなタクシーの運転手の声でワタシ達は放心状態から解放され、誠は何故かぎこちない手つきで支払いを済ませると先にタクシーから降りて右手を差し伸べる。
その手を右手で掴みながらタクシーから降りるとドアは自動で閉まりエンジン音が鳴り出すとタクシーは向きを変え再び動き出し何処かへ行ってしまった。
誠「なんかマジで猫カフェあるのかな?啓子ちゃんのお兄さんを疑うわけじゃねえけどあったらマスコミとか来そうじゃね?珍百景って番組に取り上げられそうじゃね?」
誠は太い赤い天柱を見てそのように言ったので
「確かにここにあれば物珍しいので混みそうですが人一人いませんね。でも出来て間もないからじゃないですか?それに学にいがそんな嘘ついてもなんの得もないですよ」
誠「ま、そうだね。ごめん、疑ってじゃあ行こうか。行けばわかる事だよね」
「ワ、ワタシもつい熱くなってごめんなさい」
誠「しかしこの柱なんだ?」
「誠くん?それは柱じゃないですよ?よくみてください」
誠「え?」
誠はしばらくその赤い天柱全体を目でゆっくり追うようにして見廻すと
誠「もしかして?鳥居?」
「はい!そうです。確かにデカす、大き過ぎて目に入りづらいから分かりにくいですね」
誠「すげぇ」
ワタシがデカ過ぎるって言いそうになったの気づかない程、誠はその柱に興味を持ってくれたみたいで真上を眺めている。
誠「青龍って文字が上の丁度真ん中辺りに刻まれてるな。すげぇ」
「誠くん?」
誠「ごめん、ごめん。流石に首がいてぇーや。早速行こうぜ」
「あの?」
誠「なに?」
「手を変えても良いですか?左手にそれと神様が歩く道、真ん中来てますよ。このまま潜ったら不味いんじゃ」
誠「そうなの?俺、そう言うの(うと)くてごめん、端っこだね」
左手に握りなおすと右端へ軽く引っ張られそのまま進む。
目の前に石の階段が見えて来た。
一段ずつ上りはじめる。
さりげなく景色を見て懐かしむ自分がそこにいた。
7年前いやその前かな?
はじめて来た時と変わらない石の階段。
当時は凄く長く感じた階段も身長のせいか今は短く感じる。
そう言えばこの神社反対側にも鳥居があるんだったな。
反対側には確か駐車場、道場もあるんだよな。
かえって反対側でよかったかもしれない。
ここで師匠に会ったら誠に親子じゃないってバレるような気がするし、それに師匠、オレが女だって知らないと思うし、恐らく学にいは言ってないだろうから。
なんかそう思ったら安心してため息をついてしまった。
階段を上りきると矢印の看板をみつけた。
猫カフェはこちら→と黒い油性マジックで書かれている、その看板はベニヤ板のようで文字は滲んでいる。
誠「どうやら矢印に向かって行けばいいみたいだね。って事は右か」
「そうみたいですね。あの、誠くん?やっぱり帰りましょう。ここまで連れてきてくれたのにごめんなさい。」
誠「急にどうしたの?顔色悪いね?大丈夫?」
そっち向かったら道場じゃんか、不味いよ。
師匠に見つかったら、しかも誠、師匠とは初対面じゃないっぽいし昔、練習試合したことがあるって言ってたから、絶対、親子じゃないってバレる!
???「あれ?」
「学にい?」
誠「お兄さん?早いお戻りですね」
学「来たんだぁ。」
「今、帰ろうかと」
学「折角きたのに、なに行ってんだ?啓?」
大丈夫、親父はいないからっと耳元で囁かれた。
「少しくらいなら大丈夫だと思います。誠くん、振り回してごめんなさい」
誠は首を傾げてキョトンとしている。
誠「?俺は嬉しいけど、マジで大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ」
学「そうと決まったら行こうぜ!俺が案内するから、啓はなにも気にすることねえからな」
「気にするって?どう言う意味?」
誠「なんかお兄さんが羨ましいっす。俺も啓子ちゃんとそんな風に会話してえっす。啓子ちゃん、まだ話し方が堅いから俺はタメ、ウエルカムなんすよ?」
学「え?恋人同士なのに?啓?マジ?」
「だって、、」
タメで喋ったらボロが出るじゃん。っと学にいに小声で囁く。
学「なるほどな、誠くん?コイツはただ照れてるだけだから、そのうち大丈夫だと思うぞ。まだ慣れてないだけだよ。しばらく待ってれば大丈夫だ!」
誠「その言葉、信じるっすよ。啓子ちゃん、照れてるんすね?」
「あっは、そうかも、です。ごめんなさい。しばらく待っていてください」
わざとらしかったかな?今の笑い方
誠「俺こそ、焦らせて悪かったよ。逆にそれだけ俺の事、好感持ってるって事だから嬉しいな」
学「わかればいい。お惚気(のろけ)はそのくらいでいいかな?そろそろ着くぞ」
歩きながらそんな会話をしていたら目的のカフェの前に到着!?
あれ?いつの間にか下ってたんだ!あの石段、苦労して上り切ったのにー。ばかみてぇじゃないか。
と思いつつ建物を見ると、
え?ここ?道場じゃねえの?
心の中で呟いていたら
学「啓が言いたいのはわかるぞ。昔、ここは道場だったしな。今は空き家で使わなくなったからカフェに改装したんだよ。」
「そうなんだ!」
なんで学にい、オレが言いたいことわかったんだ?
ってエスパーなわけねぇし、っていけね、ワタシだった。
誠「!なんかその口ぶりだと啓子ちゃんも空手やってたの?」
やばっ!
「えっと、見学してただけですよ。」
誠「そうなんだ!びっくりした!啓子ちゃん、お(しと)やかだから空手ってイメージから程遠いしな」
学「コイツがお淑やか?(苦笑)」
誠「?お淑やかっすよ」
「あはは(汗)」
ここ数週間特訓したからな。
見えなかったら今までの苦労がなんだってことになるし、学にいの前で言われると笑って誤魔化すしかねえよな。
兎に角学にい又、余計なこと言うなよ!っと祈って学にいを見ていたらそれを悟ったようでそれ以上はなにも言わなかったので助かった。
懐かしい元道場の引き戸の右側には縦にベニヤ板がぶら下がりそこにはマジックで猫カフェと書いてある。
なんか安っぽい!なんとかなんなかったのか?
ツッコミたいところがあるけど誠がいるので大人しくしていると
学「啓?なんか言いたそうだけど?」
「べつに、、」
またか、、マジにエスパー?んなわけないか。
引き戸を開け中に入ると靴を脱ぎ、靴箱に入れる。
その靴箱は間に合わせで作ったような木箱に見える。
そして土間に足を乗せると懐かしい道場を見ようと足を一歩前へと進む。
正面を見渡すと畳がフローリングに変わっていたのと上にかかっていた、空手道場教訓三箇条が外され、色んな種類の猫の写真が何枚も部屋内を囲むように順々に横に並んで飾られていた。
天井の電気まで変えたようで丸い見た目風船のような形の電飾が七色、赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫、ピンクとあちこちにぶら下がっていた。
壁には猫達の歩くスペースがあちこち棚のようについていてあらゆるところにキャットタワーがあり、
数えきれない猫達がワタシ達を出迎えているかの如くニャーニャー騒がしかったが全然嫌じゃない。
むしろずっとここにいたいくらいで
しかも店内は猫とワタシ達以外誰もいなくて貸切状態!
「学にい?他のお客さんは?それにこんなに猫どうしたの?」
学「ああ、最近、境内や鳥居の前に段ボールに猫を入れて捨ててく人が絶えないから思い切ってカフェ兼猫保護施設作れないか親父に相談したらオッケー貰えて、バイト募集したら沢山集まってきたから経営する事になったんだけど、流石に俺も学校あるから親父が経営者って事になってるが、あと、ついさっきオープンしたばかりだから客足ないのは当たり前だよ」
「ふーん。学にい、友達に教えてもいいかな?」
学「いいけど?」
「ありがとう」
ずっと立ってるのもきついので出入口付近の脚が低いテーブル近くでワタシ達は座り込むとトラ猫がタワーからテーブルの上に下りてきて丸くなり前足を伸ばし欠伸をし出した。
猫「ふにゃー」
「学にい?この子?なんて名前?」
学「あ?そいつはミースケだよ」
「ミースケ?じゃあ男の子なんだね」
ミースケの顎に触れるとめちゃ気持ち良さそうにしているので柄にもなくかわゆいって言ってしまった。
誠「うん!たしかに可愛いけど俺は啓子ちゃんの方が可愛いと思うな!ミースケが羨ましい。俺も猫になりてぇ」
???「いらっしゃいませ」
振り向くと白猫のコスプレの同世代の女の子がお盆におしぼりとメニューを乗せて来てくれて
テーブルにそれを置くと行ってしまった。
「あの、学にい?コスプレする必要ってあるの?」
学にい「別に細かいことはいいから、気にすんな」
誠「まるでメイドカフェの乗りっすか?」
「誠くん?顔が赤いですよ?もしかして?こういうカフェはじめてですか?」
誠「うん、メイドカフェみてぇなの行ったことねぇし、まあコスプレ店員可愛いけど、啓子ちゃんの方が断然可愛いよ!赤い?突然だったから目のやり場に困ってただけで、俺は啓子ちゃん一筋だからね?」
誠は慌てふためいて言い訳し出した。
この辺で突っ込むのやめとくか、
学「啓!ちょっといいか?そろそろ親父が帰って来そうだからそろそろ帰った方が」
学にいが小声でワタシに話しかけたので
「!そろそろ誠くん?帰りましょうか?」
慌て誠に言うと
誠「なんか、またこそこそされて気分わりいな」
「ごめんなさい。」
誠「あ?ごめん、ジョーダンだよ!さてと家まで送るけど」
誠は立ち上がる。
「!駅までで大丈夫ですよ」
続いてワタシ、学にいと立ち上がった。
すると、、
女性店員「お客様?お帰りですか?ありがとうございました。又のご来店お待ちしてますにゃ」
先程の白猫コスプレ店員が猫になりきって慌てて土間のところまで見送ってくれた。
結局、学にいが車で送ってくれる事になって先に誠をアパート前で下ろすと続いて学にいはオレの家まで送ってくれた。
あとで知ったのだが誠は学にいが車で家までオレ、啓子を家に送るのが気に入らなかったそうだ。

第35話 朝倉家の日常①に続く




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