10夜

文字数 660文字

 夢を伝えられるのは人間だけなのです。


 向けられるカメラに向かって、私は静かに口火を切りました。
「私のお祖母様は魔 女(ナイト・ハグ)の家系なんだって。時代と共に力を失ってしまったけれど、夢の魔法だけは使えたって。信じられなかった。予知夢っていうのかな。自分が死ぬ出来事を何ヶ月も前に夢で見るんだって。それが事故や災害だったなら、急死に一生を得るかもしれないけど、お祖母様が見たのは闘病中に病死する夢だったから。どれだけリアルでも、魔法とは言えないでしょう? 自分の死しか予知できないし。……でもね、私最近、死ぬ夢を見るの」
「一体どんな?」
「地球から振り落とされそうになって死ぬ夢。夢だなって思うよね。でも、何度も見るの。それにね、お母様も同じ夢を見ているんだ」
 彼はスマホを構えしました。
「おんなじ日に死ぬってこと?」
「そう。お母様が親戚に連絡したら、みんなもおんなじ夢を見ていたの。魔女仲間の人たちもみんな」
「とてつもなく大きな災害ってこと?」
「わからない。突然、地球の重力が弱くなっていくの。自転が速くなったから」
「振り落とされるって、遠心力でってこと? いや、えっ……どうやって。隕石で回転速度が上がった……?」
「とにかく普通じゃないの。原因もわからないし、どんどん加速して、街が空に向かって壊れていくから」
「それって人類みんなが危機に陥るってことだよね」
 カメラを忘れて私の目を覗き込む彼に、私ははっきりとうなずきました。
「うん。映画を観て一番近いなって思ったのは、プレイアース。宇宙人の仕業なら、一番納得できるかもしれない」
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