恋バナ

文字数 1,152文字

おじいはお父さんだけど、お母さんのようであり、友達のようでもある。
おじいは下の階のドイツ人の女性のことが好きらしい。以前紅茶を飲んでいる時に聞いた。
「わたしが彼女を好きなのは、彼女も気づいている。
だが、彼女が私の好意をよく思っているかはわからん。」
とのこと。
おじいは、彼女とデートにも何度も行っているし、彼女の息子さん(旦那さんはいない)の家庭教師をやってポイントを稼いだりしていたみたいだが、どうやら手応えはないようだ。

私事だが、好きな人がいる。
今日彼からワインとフォアグラ、いちじくのジャムが送られてきた。
「いちじくのジャムが好きなんだが、イギリスではなかなか見つけられない。このジャムも5年前に買ったものを最近発掘したんだ!」
と、5年前のいちじくジャムをどうぞどうぞと食べさせられ、会話したのはつい数日前のこと。
「おじい、見てー!いちじくのジャムだよ!フランスから友人が送ってくれたの!」
そう言って見せると、おじい大興奮!!
「おお!読めるか?これはこう言う意味で…こうでこうで… なんて良いプレゼントなんだ!」
2人でスプーンで味見をすると、甘くてとても美味しい。
「ふふ、あとね、もう一個あるの!」
そう言って3缶送ってくれたうちのフォアグラ1缶をおじいにあげる。
「フォアグラ…!い、いいのか?!いいのか??」
おじい、今まで見たことない目の輝きようである。
「うん、多分おじいとお姉さんの話をよくするから3缶セットのを送ってくれたんだと思う。」
「ありがとう!!最高のプレゼントだ!!でももったいないから誰か開けたら3人でシェアしよう!」
うん、良いアイディアだ。私も嬉しいけど、多分私より喜んでいるな…これは。

ほとぼりが冷めて、料理を作っていると、ぽそりと一言。
「彼はきみのことが好きなのか?」
ははは
「そうであってほしいな。」
わたしでも聞けないことをさらっと聞くなぁおじい。

その後は彼は何歳なんだ??どこで知り合ったんだ??どんな仕事をしているんだ??どこの国の人なんだ??
の質問攻め。
こんなにも娘の恋バナに興味を持ってくれる父親はいないのではないだろうか。
そんな彼にお礼の電話を入れたら、おじいと話してくれるとのことで、電話を渡すとなんだか楽しそうに会話をしている。
フランス語がさっぱりな私だが、最後にフランス語でばいばいと言っているおじいに少し嫉妬する。
2人が話しているのを聞いて、あぁ親に好きな人を紹介するのはこんな感じか。と嬉しさもある。

「あなたが英語を話しているのを初めて聞いた。」
「どうだった?」
「かっこよかった、さすが。」
「そうか、それはよかった。」
そういって笑う彼の声を聞いて、あぁ好きだなと思った。
そして、きっとおじいも、彼のことを "nice guy" と力強く言ってくれることだろう。
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